第十話 父の眠る場所と、旅立ちの誓い
お読みいただきありがとうございます。
この作品は 毎日20時更新 です。
今日は 第10話。
父の死を受け止め、
ハエルが“本当の旅”へ踏み出す回です。
静かに、ゆっくりお読みください。
父さんが息を引き取った朝――
空は、やけに澄んでいた。
泣きすぎて、涙はもう出なかった。
でも胸の奥がずっと痛くて、
息をするだけで苦しかった。
「……父さん」
俺は父さんの体を抱え、
村の外れの丘へ向かった。
父さんがよく座っていた場所。
夕日が一番きれいに見える場所。
ここなら、父さんも喜ぶと思った。
土を掘りながら、
何度も手が震えた。
「父さん……
俺……もっと話したかったよ……
もっと……一緒にいたかった……」
土を掘る音だけが、
静かな森に響いた。
やがて穴ができ、
俺は父さんをそっと横たえた。
眠っているみたいだった。
今にも起きて、
「飯はまだか」
なんて言いそうで。
「……父さん」
俺は父さんの胸に、
母さんの形見のペンダントを置いた。
「母さんに……会えたら、渡してあげてよ」
声が震えた。
「父さん……
俺……父さんの息子でよかったよ……
父さんが……俺の父さんで……
本当に……よかった....」
土をかけるたびに、
胸が締め付けられた。
最後の一握りを落としたとき、
涙が一粒だけこぼれた。
「……ありがとう、父さん」
俺は墓の前に座り込み、
しばらく動けなかった。
風が吹いた。
優しい風だった。
まるで父さんが
「行け」
と言っているみたいだった。
俺は立ち上げり、
父さんの墓に向かって深く頭を下げた。
「行ってくるよ、父さん。
俺……強くなる。
父さんが誇れるような……
“自慢の息子”になるから」
その言葉を口にした瞬間、
胸の奥が少しだけ温かくなった。
父さんがくれた名前。
父さんがくれた愛。
父さんがくれた生き方。
全部、俺の中に残っている。
だから――
もう、前を向ける。
俺は荷物を背負い、
村の出口へ向かった。
振り返ると、
丘の上の墓が朝日に照らされていた。
「……行ってきます、父さん」
そう呟いて、
俺は歩き出した。
父さんの遺志を胸に――
新しい世界へ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
父と子の第一章が、ここで静かに幕を閉じます。
次回からは
第二章:父の遺志を継ぐ旅
が始まります。
明日の20時に更新します。




