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束子仲間が増えそうです。

いつもありがとうございます♪


予想外に束子話が続いています。

その内に書こうと思っていたような覚えはあるのですが、丁度いいタイミングだったようです。


 好きなものや事を勧める時は決して無理強いしてはいけない。

 強制すれば逆にそれが嫌なイメージになる事もあるからだ。

 熱意さえあればいいというものではないのだ、とユーリは思う。


 好きなものを一方的に押し付けるのはただの自己満足になってしまう。

 好きなものを語るのは勧め好きの趣味と自覚して、相手に押し付けない範囲の距離感を保つ必要があるのだ。

 相手の興味を引ける要素を探りながら話をする。

自分の好きを、その美点や利点、それにまつわるネタ話などを交えながら雑談として語る。

 興味を持ってもらえたら、営業の仕事ではないので出会う手立てを案内するだけでいい。

 相手が一歩を踏み出した方が自分で選択した感覚が得られるし、出会いを体験出来るのだから。

 好きなものの布教の仕方は人それぞれだろうけど。自分で足を踏み出す最初の一歩、出会いは時に大事な記憶になる事もあるのでそこも大事にしてあげたい。


 ただ、束子に関しては放っておいては中々ファーストコンタクトに辿り着けない。だからとつい積極的になるのだ。

 胡散臭い宗教のようだなと自覚はしているからこそ、合う合わないはあるので強制はしないようにしている。

 前世で宗教の勧誘を受けた事があるから余計に気を遣うのかもしれない。


 宗教に関しては、何を信仰していようが自由だと前世でもユーリは思っていた。価値観の違いには線を引くだけで否定はしない主義だった。

 そのせいか、距離を詰めて来る者も何人かいたのだ。

 家のお店の常連客に宗教の冊子を渡されたり。同級生の中にも遊びに誘われて行ったら宗教の集まりの場だった事もある。

 好きを語るまでは良くても、押し付けとか騙し討ちは嫌な印象しか残さないと自分がされた事で悟った。


 宗教に対しては、勧誘するよりも自分が教えを実践して人を救けたらいいのにとも思っていた。そうすれば、自然と宗教の教えを説く機会も出来るだろうにと。

 実践して人を救う事こそが真の布教だと思う。

 信仰を集める、信者を増やすよりも、教えを広める事の方が大切ではないのだろうか。

 所属させよう、仲間を増やそうとする行為は成果を求めているようにしか見えなかった。

 宗教の勧誘を知ってからは余計に、好きなものの良さを伝えるには無理強いでは意味がないと実感したのだった。


 だからといって、知る機会がなければ良さは伝わらない。それは勿体ないから、ユーリは人に語るのが好きだった。伝わらない、合わなければ仕方がないけど。それでも相手の好みや価値観を知る事は出来る。コミュニケーションの一環でもあった。

 利害が絡むとしたら、そこは示す必要があるとは思うけど。束子については何の利益もない。好きなものを語る事が出来るのが利点で、もし相手の好みに合えば好きが伝播すれば嬉しいという利他に近い感覚でもあった。

 自分が好きなものを理解してもらえたら、広げられたら嬉しい、という思いでユーリは束子について語っていた。

 そこに結果は期待してはいなかった。だから、意外と積極的な反応が返って来た事に一瞬理解が追いつかなかった。


「これはどこでかえるの? どれくらいつかいつづけられる? かえもあったほうがいいかな?」

 カイルの言葉にユーリは固まった。

「なんでっ!? つかうのか?」

 兄はカイルの正気を疑うかのように驚いたように声を上げた。

「だって、ほんとうにかゆくなくなったし」

「たまたまかもしんねーじゃん!」

 カイルは蚊に刺された跡が消えたと見せたものの、兄は友を正気に戻そうとするかのように肩を掴んで揺さぶった。

 友を心配する行動には問題はないのかもしれないが、言葉がちょっと悪くないかなとユーリは思った。案の定、母が兄の頭をミシッと音がしそうな感じに掴んだ。

「……ラルフ、言葉使いが悪くてよ? カイル様、束子を本当にご所望ですか? 元々は掃除用品ですけど。新しいものが家にありますから、それでよければ差し上げる事は出来ますわ」

 母は兄を押さえつつも、カイルには優しく話かけていた。兄は「いたっ、いたい」と小声で訴えてバタついているのも黙殺していた。

「うっていただけますか?」

「いえ、うちで扱っている商品ではなく予備で家に置いてあるものですのでご遠慮なく。今後は身体を洗う用に柔らかい束子を作る話も出ていますが、これと同じもので良ければすぐにお渡し出来ますわ」

 買うと言えるカイルはしっかりしていると思う。掃除用の予備の束子を売り付けるような母ではないけど。

「かぁちゃ、つくるって?」

 柔らかい束子を作るなんて話は聞いた事がなかった。聞き違いかとユーリは気になった。

「ええ、ユーリの汗疹が綺麗に治ったとマーサから聞いたの。実際に見たら治っているし。薬と並べて売る事を考えて、最初から身体を洗う用の柔らかい束子を作ろうと思っているの。売れるかどうかは分からないから、とりあえず試作をして内々で試してからの話になりますが」

「かぁちゃ、すごいっ!」

 身体を洗う用の束子として売り出すなんて最高だとユーリは目を輝かせた。

「マーサも使っていたら肌が綺麗になったと言うの。私も柔らかい束子が出来たら使ってみるつもりです」

「それはいつごろできそうですか? ははもほしがりそうなきが……」

 母とカイルの会話を兄が信じられないような顔をしていた。目を見開いて口をぽかんと開けている。ユーリは期待のこもった目で母を見た。身体を洗う用の束子が出来れば、周知されて普通の事になるかもしれないからだ。好きなものは、好む人が多いほど存続出来るというもの。好きなものを勧めて布教する最終的な意義はそこにあるのだ。

「束子を作っている工房はパーム工房さんの一つしか今はもうないの。丈夫で扱い易い束子だけど、掃除用品として見た目がいいブラシが出て来たでしょう。売れなくなって困っていたようで、話を持っていったら喜ばれたわ。柔らかい素材にもあてがあるという事で多分もう少しで試作品が出来るはずよ。試作品でよければ、帰る時にお渡ししますね」

「ありがとうございます!」

 そこまで話が進んでいると知らなかったユーリは驚いたけど、カイルは当たり前に受け入れて喜んでいた。


「……ハリネズミににてるけど、かわいくもないし。そんなの、うれるか?」

 兄は全く理解出来ないという顔でブツブツと呟いていた。

「うれるよっ!」

「売れます。美容と健康に関して、人は常に新しい発見を求めているの。機能と結果が伴うなら確実です。後は売り方かしら」

 興奮気味に叫ぶカイルと、冷静ながらも最後は独り言ちて思考に沈む母。

「……タワシにハリーたちみたいなかおをつけたほうがまだマシなんじゃないか」

「にいちゃ! それ、かわいい!」

 束子で作ったハリネズミの置物。ぬいぐるみとは違う可愛さがあると思う。

「確かに可愛いわね。商品のロゴにしようかしら?」

「それ、いいです! ハリネズミはほんとうにかわいいので! タワシにもにているしピッタリだとおもいますっ」

「ハリネズミの置物も作れないか聞いてみますね。可愛いのが作れたら差し上げますわ」

 理解出来ない兄だけを置き去りに話は進んで決まっていった。ユーリは楽しい気分でニコニコしながら聞いていたけど、どこか他人事のように感じていた。作るのも売るのも母の仕事だからだ。そして、勧め好きは良さが伝わればそれで満足で、成果は求めないものだから。


 言い出した者としてユーリに意見が求められるようになるのは試作品が出来た後の話。何故、幼児に意見を求めるのか理解出来ずにた対応する羽目になる事をまだ知らない。

 束子が評価されそうな事に満足するユーリだった。


 














柔らかい身体洗い用の束子は現実に販売しています〜。

束子愛好家は意外と鍋洗い用の茶色い束子をそのまま使っていたりしますけど。

先日、深夜に放送していた銭湯ドキュメントで束子で身体を洗っているお爺さんが出て来まして。

お爺さんが使っていたのも茶色い束子でした。

意外だったのは、頭まで束子で洗っていた事です!

頭頂部がツルっとされていたので、確かに洗い易いのでしょうね。

私は顔は束子で洗えるのですが、頭を洗う事は考えた事もなかったので発見でした!


この話で10万字を越えてました☆

不思議なタイミングだなと思います〜。

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