雛の名は。
いつもありがとうございます♪
名前は決めていたのでお待たせせずに更新出来ました☆
名前には夢が詰まっているとは思う。
自分を表す記号になるのだから。
「名は一番短い呪だ」というような台詞もあったなと、映画にもなった小説を思い出す。名前という自分を指す言葉を得る事で、認知される事が出来るのは確かだ。
願いを込めて、意味を考えて付ける物だともユーリも理解はしていた。
ただ、見分けが出来ない程に似ている8羽のアヒルの雛達に気持ちを込めた名前を付けるのはユーリには重かった。
雛達に囲まれるユーリを一旦救い出してくれたのはマーサだった。ひょいっと抱き上げて、そのまま腕に抱えてくれた。
「ルーナは私が預かるわ」
ユーリの腕の中で固まっていた子猫を、姉はササッと攫って抱き上げた。優しく抱き締めてから腕に抱える。いつもならユーリと離れる事で鳴く子猫は雛達に囲まれてビックリしたのか大人しかった。姉は満足そうな顔をしていた。
姉を恨めしい目で見るものの、雛達の期待から逃れる事が難しいのは分かっていた。うう、と唸るユーリにマーサは面白そうに笑った。
「これまでもこの子達は名前をつけて欲しそうにしてましたからね。堪忍してつけるしかないですね。どんな名前でも、この子達はつけてくれたら喜ぶと思いますよ」
それに返事をするようにピィ!と言う雛達。言葉がそこまで分かるとは思えないまでも、そこそこ理解はしていそうだ。
「鳥頭」という言葉が前世ではあったけど、鳥によっては頭は良いという話も聞いた事がある。カラスやオウムはもちろん。ハトも、個人の見分けも老若男女の別も理解しているのだとか。ハトの本を読んだ鳥好きの友人から聞いた話では、昔は伝書鳩
として日常で活躍していた位に賢いらしい。帰巣本能が強く。生涯一羽と番う、と言われる位に愛情も深いのらしい。
ゴッホとルノワールのような明らかにタッチが違う絵画の見分けも付く判断力もあるのだとか。タッチの違う絵を2枚並べて、片方を突くとエサが出る装置を用意すると正解を選べるようになる実験結果が出ているのだそう。
生涯一羽と番う、という割には公園で見たハトのオスはメスと見れば求婚していたので信じられない気がしたなと思い出す。
現実逃避している間にも、雛達は視線の圧を緩める事はなかった。今日は観念して名付けをするしかないのかもしれない。発音は大分マシになったものの、全く名前を考えていなかったのでストックも何も無い。
「……あのね、なまえつけてもみわけがつかないきがするの」
困り果てた顔でマーサの顔を見て訴える。
「確かにそうですね。目印を付けるのはどうでしょう?」
「それがいいわ! ルーナにも可愛いリボンを付けようと考えていたの。この子達も色違いのリボンを首に付けたら可愛いんじゃない?」
意外に可愛い物好きだったらしい姉は目を輝かせていた。
子猫だけでなく、アヒル達も可愛いと思ってくれたらしい。
こうしてユーリは逃げ場を塞がれた。
「名前は何も特別じゃなくていいんじゃないですか? 難しく考えずに、呼びやすくて似合うと思う名前で充分だと思いますわ。馴染むと愛着も湧くし、特別感も出るものです」
確かに凝った名前を付けた所で呼び易く省略して呼ぶのが定着しそうだし、雛達も覚えられないだろう。むしろ、呼ぶ側の人が忘れたり覚えられない気もする。
ガァちゃん、みたいに単純な方が確かに馴染むのだろう。結局は名付ける側の思いを押し付けるよりも、その分ちゃんと呼んであげて愛情を注ぐ方が良いのかもしれない。
前世のキラキラネームと揶揄された名前も、付けられた本人である子どもが特別感よりも苦痛を覚えて改名する事もあったようだ。
名前負けに感じる位に期待が重い、読み間違えられて訂正し続ける、難しい漢字で読み書きし辛い、そんな名前を背負わされるのは苦痛だろうとユーリも思った。
「名前は親から子へ一番最初の贈り物」とは聞くけれど。相手の事を考えない自己満足な贈り物は、どれだけ想いが込められていようと迷惑でしかないのかもしれない。
突飛な物よりも無難な贈り物の方が良い時もあるのと同じな気はする。
子ども本人が社会の中で不自由なく過ごせる名前かどうか位は考えるべきではないだろうか。
雛達は社会性を考える必要はないけど、ちゃんと覚えられて呼べる名前を付けてあげたい。そう思いつつも8羽と考えると気が重かった。
「……いち、にい、さん、し」
数を口にしながら指を折っていく。雛達は興奮したようにピィピィという声が聞こえた。
うーん、うーんと唸りながら下を向いて目を閉じて考えに没収していたユーリは突然閃いた。数、数字も言い方で名前っぽくなるかも?
そう考え付くとそれしかない気がした。
顔を上げると期待の眼差しの雛と目が合った。
「いっちゃん? なんかちがう。うーんと……ぴいちゃん!」
迷った末に笑顔で呼びかけると目の前の雛は嬉しそうに鳴いた。そして場所を入れ代わるように別の雛が眼前に来た。
「にい……うーん、ふうちゃん!」
言いかけて、何か違うと思って言い換えた。言われた子は目を輝かせて返事をした。
「さんちゃん!」
一二三なら、みいちゃんになる所だけど猫っぽいのであえて変える。
「しいちゃん」「ごうちゃん」「ろくちゃん」「ななちゃん」「はっちゃん」
数字なら忘れる事はないだろう。
何より、自分の呼び名が付いた事に飛ぶ勢いで雛達は喜んでいた。
……雛達が自分の名前を呼ばれても覚えているかどうかは分からないけど。
「喜んでもらえて良かったですね」
マーサは頑張ったと誉めてくれた。
「……もう数を数えられるのね。沢山名前を考えて偉かったわよ」
姉も誉めてくれたけど、言う時だけ顔を上げてその後は大人しく抱かれている子猫に視線は釘付けだった。起きているのに、大人しく抱っこ出来ている事を心底喜んでいるようだ。顔はデレデレに溶けている。普段との落差は初孫を目にした頑固爺みたいだなとユーリは思った。何か察知したらしい姉が顔を上げたのでサッと反らした。
とりあえず、決まったみたいで良かったと思うのだった。
名前を「贈り物」という事がありますが。
ふと、昔の知人で物をあげた時に同等の「お返し」が当然だという人がいたなと思い出しました。。
付けた名前に相応しく育つ事を期待する親は「お返し」をあてにする毒親なんだろうなと。
受け取る側が喜ぶ事を一番に考える「贈り物」であって欲しいなと感じました。
キラキラというか、DQNネームで昔聞いて強烈だったのは「大森運子」さんです。
週刊誌で見た話を教えてもらったので、本当にはいないのかもしれないですが。
字面はまともなのに読みが最悪ですよね。




