可愛いけど大変です。
いつもありがとうございます♪
姉から預かったカゴの中には確かに猫がいた。真っ黒で小さい猫だった。
小さいだけで可愛い。
猫というだけで可愛いのだけど。
その小さな猫はか細くて弱っていた。
子ども部屋でカゴにかけられたタオルをめくって、その弱っている姿にユーリは驚いた。貴族の友達の家で生まれたとはとても思えなかったからだ。困惑してマーサを見上げると苦笑された。
「この子は道で拾ったそうなんですよ。お友達の家にもらいに行った子猫は2匹いたそうなのですが。2匹はとても仲が良くて引き離すのが可哀想になってしまったそうで。一緒に行ったお友達に譲ってしまわれたのだとか」
帰りに山の中の道を通っている時にたまたま窓から外を見ていた姉が見つけて拾って来たのだという。拾った時はもっと弱っていて、手持ちのポーションを飲ませたり、身体を拭いたり、カゴを準備したりして。少し元気になってきたら「みゃあみゃあ」と鳴くので眠る事も出来なかったそう。
馬車の中にはメイドも一緒にいたけど、姉は積極的に世話を焼いていて。慣れない世話で疲れた上に馬車酔いでヨロヨロになってしまったようだ。
どちらかといえば姉は常に冷静で他人に興味はなさそうだなとユーリは思っていたけど、意外と生き物好きなのかもしれない。
猫をもらって来るという事で家には猫用のミルクや猫用のベッドなどが用意してあった。その為、準備そのものは大変ではなかった。
ただ、外にいたという事で身体を綺麗に洗う必要があったり。ミルクも中々飲んでくれなかったりと苦戦した。ユーリは、マーサが頑張ってくれた横で手助けしようとして見守るだけになってしまったけど気疲れはした。
そして、お腹いっぱいになったはずの猫は猫用ベッドに寝かせると「みゃあみゃあ」と親を呼ぶように鳴いていて落ち着かず。弱々しい動きで這って移動しようとするのだ。何度寝かそうとしてもダメで、マーサが抱き上げてもか細く鳴き続けた。
何とか寝かせてあげたいのに、切なくなるような必死の鳴き声にユーリは思わず手を伸ばした。マーサは腕の中にいた子猫をユーリに抱かせてくれた。子どもの高い体温なら猫に近いのではないかとユーリは期待したけど、子猫は鳴き止む事はなかった。
それでも何とか寝かせてあげたくて、抱っこした腕を揺すりながらユーリは子守唄を歌っていた。
「ねんねんころりよ おころりよ……」
小さく、囁くような声で子猫の耳元で歌う。安心して眠っていいんだよ、と心を込めていると言葉がユーリの胸にも沁みた。
坊やは良い子だねんねしな、と歌っておいてから。女の子だったなと思い出して、くすりと笑う。
前世でも妹の寝かしつけに歌い出してから、何で他にも子守唄はあるのにと思った事があった。何故かそういう事は繰り返すのかもしれない。7歳下の妹、弥生はこの歌が一番寝付きがよかった。子守唄は色々な歌があるので、当時はCDを図書館で借りて来て流したりもしたものだった。けど、家族の声の方が安心するのかよく眠ってくれたように感じた。CDのおかげでユーリの子守唄のレパートリーは何曲もある。
アヒルのガァちゃんに歌ったのは別の子守唄だったなと何となく思い出して、それも歌う。曲名は忘れても歌詞は意外と覚えている。そうして何曲か歌う内に、子猫は鳴き止んで静かになった。
「あら、寝てくれましたね。こちらで寝かせましょうか?」
ずっと横についてくれたマーサは優しい声でそう言った。子猫を起こさないような囁き声にユーリはくすぐったいような笑みを浮かべて頷いた。
マーサの手に子猫を渡そうとして、服の袖に小さな手の爪が引っかかっている事に気付いた。無理に外すと爪を傷付けたり、せっかく寝たのに起こしたりしそうだ。
でも、ユーリも疲れていたのでどうしようかなと思っていると欠伸が出た。
「一緒にお休みになりますか? 洗って綺麗にしましたし、今日だけならよろしいですよ」
眠くなって来た所だったので、ユーリは素直に頷いた。
移動させる手間を省いたのか、いつも昼寝に使っているからなのか、子ども部屋のソファでそのまま寝かされた。
ソファに横になって、胸元で静かな寝息を立てる子猫を見ているとユーリのまぶたも重くなった。目を閉じるとすぐに深い眠りに落ちたのだった。
今日だけ、とユーリも思っていたのだけど。子猫はユーリにすっかりと懐き、離れると鳴くようになる。大変なのは世話なのか、拗ねてしまう姉なのか。
そんな事は考えもせず、子猫と眠るユーリは幸せそうな顔をしていた。
子猫の世話は大変そうですが、可愛いでしょうね♪
元気に育ってくれると思います!




