夏が来ました!
いつもありがとうございます♪
異世界でも夏は暑いもののようだ。
カイルが帰ってから、気温はグングン上がり本格的な夏が来た。
前世の日本では関東と関西の間、やや関西よりに住んでいたものの。夏は湿気が凄くて、日陰でも熱気が追いかけて来るので耐えられない位にキツかった。
この世界、というよりは住んでいるこの国は湿気はなく気温も前世よりは上がらないらしい。
どこの国もこんなものなのかと先生に聞いたら、もっと暑い国や湿度が高い国もあるとか。
この国でも都市部よりも田舎の方が涼しい所もあるみたいだけど。前世と同じく山に囲まれた盆地は湿気もこもりやすく暑いらしい。
ユーリが住んでいる街は、湿度は高くないので家の中まで暑さは追いかけて来ない。窓を開けておけは風が入って来るので耐えられないほどではない。
けれど、幼児は体温が高いからかユーリは少しバテていた。風が入れば涼しい位なので、わざわざ前世のクーラーみたいなものはなく。扇風機のようなものはあるけど、日常使いはしないらしい。パーティーなど、人が集まる時に使うものなのだとか。
氷菓子も、お腹が冷えるからと1日に一度だし。冷たい飲み物もあるけど、結局は一時凌ぎになるだけだ。
暑さに慣れたら違うのだろうか。早く慣れたいなと考えながら、裏庭に向かう。
最近の午後の日課は、暑い中だけど裏庭に行く事だ。
アヒル達の為に庭師のシンが作ってくれたプールがあるのだ。
大きな陶器のタライを地面にレンガを敷いた上に設置されているる。土に直接置いてないので出入りに泥だらけになる事もない。
底に栓があって、水の入れ替えも割と楽に出来るらしい。そこまで大きくはないものの、大人が五人位は余裕で座って入れると思う。
ちなみに前世のような水着ではないものの、湯着のように濡れてもいいような服を着て来ているので準備はバッチリだ。
暑い中をマーサが持つ日傘に入りながら向かうと、アヒル達の鳴き声が出迎えた。
「ガァちゃん!」
プールで泳ぐアヒル達に手を振りながら声をかけると、ガァガァ、ピィピィいう元気な声が返って来た。親アヒルは飛んでプールから出るとユーリの方に寄って来た。
親アヒルはユーリの背中側に回るとグイグイと押した。雛達は首を伸ばしてピィピィと鳴きながら呼んでいる。
後ろから来たマーサに抱き上げられてプールに入ると雛達に囲まれた。毎日のように会っているのに、毎回会う度にもみくちゃにされるのであった。好かれていると思えばそれも嬉しくてユーリは微笑んだ。
木陰の下にあるプールに入ると、暑いのも悪くないなと思える程に心地良い。
そういえば、夏の露天風呂も悪くなかったなと前世を思い出す。たまたま家族で行ったスーパー銭湯はそこまでゆっくり出来なかったけど。
お風呂のようにプールで寛いだ事で余分な事を思い出したユーリは、それでも今を楽しむ事にした。目の前にプカプカ浮いてる雛達を突くと突き返して来る。
ユーリがプールの中にお尻をつけて座ると丁度肩まで浸かる形になる。水風呂感覚で浸かって暑さから逃れた事に「ふう」と息をつくと上から声がかけられた。
「今日はラルフ様は一緒じゃないんですね?」
笑い含みの声をかけて来たのは庭師のシンだ。
「にいちゃ、カイルさまとおでかけ」
カイルは家に帰ってから、毎週のように家に来るようになった。兄が男爵家に遊びに行くわけにはいかないので、カイルが遊びに来ているようだ。カイルが帰ってから一ヶ月程経つが、二人は飽きずにほぼ毎週遊んでいる。そしてユーリもその遊びに誘われる事は多い。今日は街にお出かけするというので断れたのだ。
遊びに誘われる内にカイルから聞いた話では、最近はカイルの弟が大分元気になって来たらしい。寝込む事も少なくなって、一緒に遊べる事も増えて来たのだとか。それも匂い袋の効果なのかと聞かれたけど、さすがにそれは無いと思う。たまたま、丈夫になってきた所にカイルと仲良く出来た事で精神的にも安定して来たのかもしれない。何にしてもよかった、とは思うものの。元気になったら一緒に来ていいか、と聞かれたのには作り笑いを浮かべたユーリだった。体力のある男児の遊び相手は大人しい遊びの好きなユーリには荷が重い。いざ来たら、適当な所で逃げようと思っている。
「シンはなにしてるの?」
「ガァちゃん達の小屋を少し掃除しようと思って来たんですよ」
話しながら手にしたバケツとデッキブラシを見せてくれる。バケツには雑巾と何か茶色くて丸い物が入っていた。
「それ、なぁに?」
「ああ、これですか? これは掃除道具で束子という物です。大まかな部分はデッキブラシで擦りますが、届かない部分などはこれで擦ると綺麗になるんですよ」
気になって、身を乗り出してガン見しながら聞くと丁寧に教えてくれた。興味津々というユーリの視線に苦笑しながら、束子を手に取って見せてくれた。
「このチクチクが汚れを掻き出してくれて、綺麗に掃除出来るんですよ」
茶色くて丸い物は前世でも馴染みのある束子だった。この世界には前世と同じような物がある事は知っていたけど、完全に予想外の物だった。
「ユーリ、たわしほしいっ!」
何か物足りないと思ってはいたのだ。暑くなって来てからは特に。
忘れていたわけじゃなく、特に無くても困らないので気にならなかっただけなのだと思う。その証拠に見つけたら我慢など出来ない。
目を輝かせて、束子が欲しいという幼児を大人達は理解出来ないという驚きの目で見た。
「な、何でこんなものを?」
「ゆ、ゆーり様?」
シンとマーサの困惑にも気付かず、ユーリはシンの手にある束子を撫でていた。
程良いチクチク感は前世と変わりなく、ユーリは満面の笑みを浮かべていた。
結果、本気で欲しいのだろうと理解はしてもらえたものの。掃除用の束子を触った事でマーサには軽く叱られてしまった。
その後に、新しい物を買ってもらえると聞いてご機嫌になった。
「……でも、何に使うのですか?」
「えへへ、いいこと!」
使い道を説明したら止められる可能性もあるので秘密にする事にした。説明するよりも、使って見せた方が早いだろうとも思う。
楽しみ過ぎて、その後のユーリはずっとご機嫌で元気になったように見えた。
最近、暑さでバテ気味のユーリを知っている家人や家族はその様子を不思議がる事になるのだった。
束子を何に使うかというと、分かる人には分かるかなというもの。
私も使っているのでかなり趣味に走っていますが、オススメでもあります♪




