カイルの事情(2)。
カイル視点の話は、この2話までです♪
1話にまとめてもよかったのですが、読みにくいかなぁと思って2話に分けてみました。
次は主人公視点に戻る予定です☆
妹に会いに行こう、というラルフに付いて行った子ども部屋には誰もいなかった。
けれど、ラルフは心当たりがあると外に出た。裏庭に行くと言う。
久しぶりに出た外は日の光が眩しかった。少し肌が汗ばむ位の日差しの中吹く風が心地良い。風は木々も揺らし、サワサワと音を立てる。空は青く広く、意固地になっていた心が解放されたような気がした。
ラルフの妹を目にするまでは。
初めて会ったラルフの妹は何故かコーラルダックを枕にして寝ていた。小さな身体の上には毛布のように、コーラルダックの雛だろう黄色いフワフワが乗っていて童画の挿し絵のような光景だった。
人に懐かないと言われているコーラルダックが何故いるのかと思う。聞くと、森に行った時にラルフ達が助けて懐かれたのだという。
ラルフの妹は白に近い銀色の髪をしていた。魔力量は少なそうだ。
そう思っていたのに、ラルフが起こした妹の目の色は黒だった。黒でなくとも、その位に色が濃い。
魔力量は普通ではなく多いだろう事が明らかだ。英雄譚に出て来た魔族を思い出した。
紙を折り、物を造るという発想も普通じゃない。
もしかしたら、魔族ではないかと思うと嫌悪感が湧き上がった。
後で考えると、弟の目と重ねて見ていたのもあるかもしれない。キースも黒と間違う程ではないが濃い緑色をしていた。魔力量が多いせいか生まれてからずっと体調を崩しがちだった。そんな弟に両親は甘く、仕方がないと理解しながらもずっと不満を抱えていた。
気持ち悪い、変、魔族、という言葉を選んだのはわざとだったと思う。
呑気なラルフも自分と同じ目にあっているのかもしれないと感じて、言わずにいられなかった。
後から考えたら完全に八つ当たりだ。いつも我慢していたのが嘘のように悪意を止められなかった。
それを見抜かれたのか、コーラルダック親子に突撃されて突かれたのは完全に自業自得だったのだろう。
そんな風に庇う存在がいる事にも腹が立って攻撃的な言葉を重ねたものの。
「何も悪い事はしてない」と曇りのない目でラルフの妹は返して来た。
メイドも何も動じていなかった。
揺るがない信頼と自信がそこにはあって、カイルは自分が惨めに感じた。
コーラルダック親子に突かれた痛みに泣き叫びながら、痛みも苦しみも嫌な思いが一気にあふれ出すようだった。
ラルフの母が来て、怒るのではなく抱きしめてくれて背中を宥めるように叩かれながら思いきり泣いた。そして、聞かれるままに自分の気持ちを話した。
ラルフの妹に言った言葉については、いけない事だと懇々と説教はされた。
でも、その前に自分の気持ちを肯定的に受け止めてくれたおかげで素直に聞けた。
部屋でラルフと食べた夕飯は、醜態を晒した後だったので気まずかったが。ラルフはケロリとしていた。
「かーちゃんにおこられなかった?」と心配してくれた位だ。
説教された時は反省した顔で大人しくした方が早く終わるとか得意気に言う姿に、日頃の生活が見える気がして笑った。
それに気を良くしたのか、横暴で偉そうな姉の話や賢くて要領のいい妹に振り回される話、コーラルダックを助けた話、妹にスゴイと言われた自慢話と続けた。怒ると説教魔になる怖い母、こっそり助けてくれる父の話も。
カイルも弟はどうなのかと聞かれて話した。大事に飾っていた剣を触られて傷付けられたと言うと、一緒に怒ってくれた。
ラルフの母もそこは分かって、否定されなかった。怒っていいし、悲しんでもいいのだと認められた事で気持ちが落ち着くのを感じた。
冷静になってみれば、自分の両親も分かってはくれてはいたのだと思う。それでも、理解よりも弟の体調の方を優先されたように感じて受け入れられなかったのだという気がする。
納得が出来れば許す事も出来る気がした。何より、ラルフが語る家族話を聞いている内に帰りたくなって来た。ラルフが妹と仲が良いように、カイルも弟に懐かれているのだ。何かと「にーちゃま!」と言って嬉しそうに駆け寄って来る。面倒臭い事も多いけど、可愛いとは思っているのだ。
もう家に帰っても大丈夫な気はしたけど、せっかくの機会だから遊んで行けばいいとラルフの母は言ってくれた。予定通り2週間滞在する事になっている。
明日はラルフの妹、ユーリにちゃんと謝ろうと決めた。
そしてラルフと一緒に構い倒そうと思う。妹がどんなものか。ラルフの話を聞いていたので興味もあった。
紙を折って造る物は他にも何かあるのだろうか。
明日が楽しみなのはいつぶりだろう。
そう思いながら横になるカイルの口元は柔らかな笑みを浮かべていた。
恋愛フラグにはならないと思います(念の為)。
対等に話が出来る相手として期待されているのが大きい気もしますが、第2のお兄ちゃんにはなるかもです☆




