転換期
「……やっぱこうなるって分かってたけど辛いな」
城の廊下を歩きながらカルマコロネはポツリと呟いた。
「……妹のアデュースも死んでしまったわ。 まだ一言、二言しか会話してないのに」
「妹様は頑張りましたよ。 ラティリオネ様。 ……さぁ来ましたよ」
すると目の前が光り始めて一人の姿が現れた。
「……待ち伏せですか」
「そうだ……よっと!」
無表情でそう言いながらアドネシアは紫色の炎を放って来たがカルマコロネはそのまま鎌で炎を切断した。
「……アデュース様の精霊石を返して貰うよ!」
そう言いながらカルマコロネは踏み込んで首を刈ろうとした時だった。
「はっ?」
なんとアドネシアの体が粒子のようにポロポロと崩れそうになっていた。
「……あの魔法使いの攻撃が致命的でしたか」
そういうとアドネシアは完全に姿が溶けてその場にはさっきまで肩に担いでいた少年のみが残っていた。
「……おかしい。 ……ないわ」
「……どうされたのですか? ラティリオネ様」
「アデュースの魔力を感じない。 アデュースの精霊石がないわ」
「……まさか」
そのまさかである。
既にアドネシアの分身はアデュースと閻仙の精霊石を本物のアドネシアの元に転送し、さらに雨の肉体から氷竜の成分を抜いたせいで雨の髪は水色ではなく黒髪に変色していた。
「……手遅れだったか」
「この恨みは必ず晴らしてやるから帝国!」
「で、この男はどうします?」
「……別に背負っていけばいいんじゃない?」
ラティリオネは少年を見ながらそう呟いた。
カルマコロネとラティリオネはその場にいる少年を担ぎ上げて一緒に城を脱出した。
「……分身がやられましたか」
「どうした? どうして泣いている? アドネシア」
「何を言っているのですかお父様。 あれ?」
アドネシアが気づくと右目から一筋の涙が何故か流れていた。
「いえ、なんでもありません。 ですがこれで計画が前に進みますねお父様」
「ああ。 妖霊計画とオリジナルキメラ計画がな」
そう言ってアザイアは笑みを浮かべた。
「……どうしよう。 ヴァレスト帝国になんてどうやって行ったらいいんだろう?」
一方オルレイは、途方に暮れていた。
「まぁ一週間から一ヶ月かけて歩くしかないだろう」
「険しい道のりになるけど、それでも一緒に助けに行くよね? 雷月」
「ああ、勿論だ。 オルレイ」
そう言って二人は二人三脚で歩く。
「おいお前ら! 大丈夫か?」
「ノヴァ!」
するとノヴァが二人を見つけて駆け足で近づいて来た。
「おい! 雨と閻仙はどうした?」
「……実は」
オルレイは二人の事を話を終えるとノヴァの顔が歪んだ。
「……おいマジかよ」
「……ごめんなさい。 すぐに私が行動すればよかった」
「しょうがねぇだろ。 とりあえずヴァレスト帝国に向かおう」
「うん」
「今すぐにでも迎えに行こう」
「でも雷月その出血じゃあ無理だよ」
「……今の私はテコでも動かん。 もしも、今連れて行かなかったら自決するかお前らを殺す」
雷月は殺気を出しながらノヴァとオルレイを見る。
「……まぁ今すぐにでも出発しようオルレイ。 この頑固忍び娘は怒ったらめんどい」
「……他に言う事なかったの? ノヴァ」
「……傷が治ったら覚えとけよ」
「おいおい軽い冗談だろーがよ。 怒んな」
こうしてそれぞれの想いが交差しながらヴァレスト帝国と刀国は大きな転換期を迎えていた。




