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オルレイ戦記  作者: 宅間晋作
国巡り編
21/34

北の戦い

 吹雪が世界を包む。


「……いよいよ決戦か」


「いやいや浸りすぎだろロテナ」


 そう言ってブリットはタバコを吹かしながらロテナを見る。


「いやすまないな。 もうオルレイ達に会えない気がしてな」


「……そんな事言うなよ。 お前だけでもしっかりと生きて貰うからよ」


「……それは出来んさブリット。 私は傭兵の狼だ。 この三百名の同胞を見捨てて生きるぐらいなら銃で自決するぐらいこの仲間と死を共にする覚悟はあるさ」


「……そんな事を言わないでロテナ。 みんな悲しくて泣いちゃうよ」


 灰の放狼団は、オルレイ達と別れた後、北のヴァレスト帝国の反乱軍に雇われていた。

 灰の放狼以外にも数百の傭兵達が反乱軍に加わっていた。


「まぁもう年だからなぁ三十五だぞ」


「俺は四十五歳」


「私は二十九歳」


「さぁそんな事は置いといて戦の話だ行こう」


 そう言ってロテナは一つのテントに入っていく。


「よく来たな」


 そう言って赤茶髪の男がテーブルに肘をついて待っていた。


「こんにちはゼギ・ショナル。 私はロテナ・プリジス今回対ヴァレスト反乱軍に味方する傭兵団放狼隊の団長を勤めさせて貰っている」


「こちらこそよろしく頼む」


「ぶわっはっは。 まさか獣人が傭兵の団長をする時代が来るとは面白いな! 宴でもするか!」


 すると白髪の男が酒を片手にテントの中に入って来た。


「……ヴァサラ傭兵団」


「おう。 ワシも有名になったもんだな!」


 ロテナはいきなりの大物の登場に驚いた。


「すまないな。 彼らはヴァサラ・ヴァレスト。 この国を作った英雄だ」


「ぶわっは! よろしく頼む狼のお嬢さん」


「伝説と一緒に戦える日が来るとは光栄です」


 そう言ってロテナはヴァサラと握手を交わした。


「さて今回の作戦だが三班に別れて貰う。 中央をヴァサラ隊に」


「おう」


「左は俺達反乱軍が」


「そして我々灰の放狼が右か」


「……そうです。 では用意を」


「「了解」」


 こうしてロテナ達はそれぞれ陣地に向かい、準備を進めた。


「……久しぶりだなこんな大きな戦いは」


「怖いか?」


「いいや高鳴っている。 進め!」


「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 こうして灰の放狼は敵陣へと突っ込んだ。

 だがおかしい。

 敵が一人も見当たらない。

 ただ寒い極寒の中を突き抜けて城に着いてしまった。


「……どうなっている?」


 ロテナは馬から降りて城の中を三百名の同胞達と一緒に歩く。


「ようこそ野蛮な傭兵達」


 すると目の前には灰色の髪に黄金の瞳をした女性が立っていた。


「……オルレイ?」


「違います」


 そう言うとオルレイそっくりの女性は炎を出して十数名を燃やした。


「っ!?」


「うぉぉぉぉ!」


「待てよせ! 退却するぞ!」


「いや、敵はそう甘くないぜ!」


 すると周りには大勢の兵隊がおり、囲まれていた。

 魔力銃という魔力を弾丸とする銃や剣に斧、様々な武装をした集団が傭兵をリンチにするべく囲む。


「へっ、殿がいるな。 おいオメェらロテナを頼む!」


「ブリットの旦那!」


「大将!」


「私も残る」


「……リーゼお前」


「ここで騎士道果たせなかったら辛いから」


「……お前ら何を言っている! 早く逃げるぞ!」


「悪いなロテナ俺達はここで死ぬつもりだ」


「よせ! やめろ!」


 ロテナ死に征く二百名の同胞達の集団自殺を止めるべく声を掛けるが団員に引きずられてその場を離脱した。



「やれやれ。 狼なのに甘い団長だ。 こんな事になるなら酒でも飲めば良かったぜ」


「まぁまぁ若い女性と一緒に死ねるからいいでしょ?」


「まぁ役得だわな。 やるぞお前ら!」


「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」


 そんな会話しながらリーゼとブリットは敵を倒すべく戦闘を開始した。


「敵は蛮族だ殺っ!」


 そう言い終える前に敵の司令官は殺された。


「指示が遅せぇ」


 そう言ってブリットは敵を斬って、斬りまくった。


「はぁ! やぁ! せい! ゴジュ!」


 リーゼも敵の剣戟や槍、そして飛んでくる魔法に魔力の弾丸を避けながら敵を斬り殺していく、スタミナはない方だがここが死地なのだ思う存分暴れて倒してやるそう思った時だ。


「ぶわっは! 大丈夫か! 灰の狼ども!」


 すると空間が大きく揺れて一人の男とその一団が現れたその数六名。


「ここはワシらに任せて逃げろ!」


「ちっ、おいぼれたジジイだけに任せてたまるかよ!」


「ふん血気盛んでいいが良いのか? あの狼は家族じゃろ」


「家族だからこそこんな奴らぶっ倒して行くんだよ!」


「ぶわっは! 良い心掛けじゃ!」


 そんな景気のいい空気も一瞬だった。


「ぐあっ?」


「があっー?」


「うっ!?」


「……脆いな」


 男が現れた。

 黒いコートに赤い髪にくすんだ灰色の瞳をした恐ろしい男が目の前にいた。


「お主何者じゃ?」


「……私か? 私はアザイア。 お前がこの地を去った後に王として君臨した男だ」


「……なんて悍ましい男が王になったもんじゃあ。 民はどうした?」


「……民? ああ約二割は妖霊という存在の為の贄になって貰った」


「ようれいじゃと?」


「そんな話を聞くんじゃねぇよ。 ヴァサラさん」


 そう言うと一万もの数を連れたゼギ・ショナルが広間に辿り着いていた。


「……ゼギ・ショナルか。 勇士の剣が死に、ギバルト、コリン、ジャネット、スタリニナ率いる生徒会全て蹴散らした私に勝てるとでも? ああそれと女神アルミアも殺したな?」


「……黙れクソ野郎今日という今日はお前の命日だ! やるぞお前ら!」


「ええ! ゼギ! ここでみんなの無念を晴らす!」


「何かどうか分からんが進めい!」


「うぉぉぉぉ!!」


「……烏合の集団を蹴散らそう。 アドネシア」


「……はいお父様」


 アザイアがアドネシアと呼んだ灰色の髪をした女の子に声を掛けると玉座から飛び降りてアザイアの隣に立った。


「殺してやる」


 こうしてアザイア軍とゼギ率いる反乱軍否傭兵団は人知れず激突した。




「おい! 団長命令だ! 皆の元に私を返せ!」


「出来ません団長! 団長は生きて部隊を再編して下さい! でなければゼギさん達は!」


「……ぐうっ!」


 ロテナは珍しく戦場で悔し涙を浮かべていた。

 あまりにも悔しくて辛かった。

 まさか自分以外の人が大勢死ぬ戦争とは思わなかった。


「必ず落とし前はつけてやる! アザイア!」


 敵の首の名前を吠えてロテナは部隊を整えるべく、本陣へと向かった。



「弱いなこの世界は」


「はぁはぁ」


 アザイアが細身ながらもブリットの頭を掴んでいる。


「ブリットさん!」


「……すまねぇ」


 そう言った後にグシャという音が響いてブリットは死んだ。


「……ブリットさん」


「きゃぁぁぁぁぁ」


「ベリッタぁぁぁぁぁぁぁ!! よくもベリッタを!」


「死んで下さい」


「ぐぁっ」


 背後ではベリッタと言われた青髪の女性がアドネシアの放った紫色の炎に包まれて死んだ。

 それに激昂したゼギが斬りかかろうとしたがアドネシアが放った見えない風の魔法で粉微塵にされて遺体も残らず塵と化した。


「……あっ」


 リーゼの心が折れた。


「はぁはぁ。 心を折られるでないぞお嬢さん」


 もうその場にはリーゼと左腕を失ったヴァサラしかいなかった。


「ここで死ね老いぼれ」



「まだ若造には負けんぞ!」


「意地を張るなよ」


「どうじゃ?」


そう言った後にヴァサラはアザイアの右腕を切り落とした。


「うざい」


 そう言ってアザイアが手を振るうとヴァサラの首から大量の血が噴き出てヴァサラは命を落とした。


『……魂の揺籠よ。 我の魂と命滅した時厄災の終わりを告げよ。 うっ!』


 リーゼは唱独術を唱えた後に腹にナイフを突き刺して自決した。



「……バカなのか?」


「いやこれは唱独術ね」


「しょうどくじゅつ?」


「ええ、文字通りですお父様。 その人個人が作り上げた叡智の結晶であり、特殊な魔法術式を作り、組み立て独自の詠唱を唱える魔法でその人が一から百まで弟子や家族に教え、伝えなければその効果や術式は発動もせず継承することの出来ない魔法技術であり、秘術で……す?」


 そう言ってアドネシアは胸を押さえた。


「……どうしたアドネシア?」


「いいえなんでもありませんお父様」


「そうかまぁお前の分身が帰って来たらゆっくり休め」


「はい」


 こうして呆気なく反乱軍とアザイア軍との戦いは終結した。




 

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