崩壊の足音
「しかしオルレイとノヴァがデートかいいものだな」
「なんなら僕とデートするかい? 雷月?」
「か、からかうな雨! わ、私はべ、別にお前と!」
「五歳の頃キスして結婚しようって言った仲じゃないか」
「い、一体いつの話をしている!? あ、あれは子供の約束だろ!十五にもなっていうのはやめてくれ! も、もしやお前私と結婚でもしたいのか? この変態侍!」
「そうだよ」
「んな!?」
売り言葉に買い言葉。
雨の軽口な告白に雷月は思わず赤面してしまう。
「お、侍竜に忍び娘が恋愛かぁ。 いい子供ができるな!」
「ふ、ふざけた事を抜かすな! わ、私がけ、結婚!? 六夜の血筋を後世に残したらとんでもない事になるぞ! た、例えば身体能力が高すぎて夜の戦いが激しくなったり! 体が頑丈すぎて楽に死ねなくなったり! 私は土魔法が使えるが恐らく私の子孫はいずれ魔法が使えなくなって異能使いへと変わるぞ!?」
あまりにも混乱してオルレイは自分が何を言っているか分からずに思いつく限りの言葉を雨と閻仙に話す。
「まぁそいつはぁ?」
突然閻仙の胸から杖が生えてきた後、閻仙の姿が白い球となった。
背後を雷月と雨は振り返った。
「こんにちはアドネシアといいます」
「「えっ?」」
そう言って雨の右腕を切り落とし、杖を引き抜いて雷月の頭を打った。
「「がっ!?」」
同時の出来事で雨と雷月は反応が遅れた。
「じゃあ、竜と精霊は持っていきますね? 実験で必要なので」
アドネシアがそう言うと球を拾い、雨を肩に担いだ。
「……ま、て」
雷月は掠れた声しか出なかった。
「後はよろしくお願いしますね?」
アドネシアが声を掛けると男が三人現れた。
「へへへ」
「いい女ダァ」
「いいなぁ食べちゃいたいぜ!」
「……あっ」
雷月は己の死を悟った。
「……ノヴァあの女の子と親しくしてたな」
ふとそんな事を言いながら歩くすると雷月が倒れているのを見つけた。
「雷月!? どうしたの!?」
「オルレイにげ……ろ」
頭から血を流した雷月が掠れた声でオルレイに忠告を告げる。
すると背後から集団が一斉に襲いかかってきた。
「ポロン」
「なっ!?」
襲撃者の顔を見ずに光属性の魔法を放って敵を撃退。
「このやろ!」
「遅い」
「がっ!?」
近づいてくるナイフ使いや剣士は足払いと長杖を振り回してフルスイング。
「ビキバガ」
また攻撃されても面倒なので雷魔法で感電させて動けなくする。
「やっぐっ」
「答えて。 なんでこうするの? 目的は?」
「し、しらねぇ! 俺達はただ金で雇われた傭兵なんだ!」
「……傭兵」
「お、お願いだ命だけは助けてくれ!」
「雨と閻仙がいないけど?」
「……そ、そいつらは雇い主が連れて行っちまった」
「えっ!?」
知らない事実にオルレイは思考を停止しそうになった。
「今どこにいるの!?」
オルレイは傭兵の胸ぐらを掴んで尋問した。
「た、高い山で仲間と合流すると言っていた」
「教えてくれてありがとうおやすみ」
「がぁ!?」
容赦なくオルレイは電流を流して傭兵を気絶させた。
「待て、私も連れて行け」
「でも雷月出血が!」
「こんなものオルレイがディカルで治してくれればどうと言う事はない。 六夜の一族は頑丈なのだ」
そう言って雷月は立ち上がる。
「分かった。 一緒に助けに行こう」
「ああ急いで向かおう」
そう言ってオルレイと雷月は肩で息をしながら大きな山に向かって走って行った。
「これでお父様の計画が前へと進む」
そう言いながら沈む夕日を見ていた。
「待ちなさい。 帝国の魔女。 閻仙を解放しなさい」
「これは想定外です。 精霊の生き残りの三名の内の最後の一人が来ましたかアデュース」
そう言ってアドネシアが目の前の女性を睨む。
ピンクの髪に白い仙人服に豊満な胸をしており、場違いに日傘を差している。
「残念だけどここに黒比美もくるわ。 もうあなたは終わりよ」
そう言ってアデュースは笑う。
「……終わり? 何を言っているのですか? 何も対策無しに私が刀国に来るとでも?」
「え?」
すると派手な爆発音が響いた。
背後を振り返ると黒い着物に黒い羽根の生えた女性が空から地面に落ちていくのが見えた。
「……黒比美?」
アデュースの口からは友のカラス天狗の名前がポツリと出た。
時間は巻き戻る。
「はぁ全く閻仙もアデュースも呑気な者だ」
カラス天狗の黒比妖花は刀国の見回りをしていた。
黒い髪に黒瞳、黒い羽根に着物容姿は白く綺麗で人が見れば和服を着た美しい死神に見えるだろう。
そんな彼女は友である精霊二人の名前を呼び、ため息を吐いた。
「む? 異質な魔力を感じる行ってみよう」
黒比美は羽を広げて空を飛ぼうとしたその時だ。
「え?」
男がクロスボウを構えていた。
なぜか弓はなくそのままに標準を黒比美に向けている。
異質な魔力に気を取られ過ぎて全くと言っていいほど地面にいる男の魔力と気配を感じれなかった。
「えっ?」
いきなり赤黒い色をした矢の形をした魔力が黒比美の羽を撃ち抜いた。
そのまま黒比美は意識を手放しながら地面に落ちた。
「……黒比美」
アデュースは地面に落ちた友を見ながら気が遠くなるのを感じた。
「……そんなにショックだったんですか? 友達がやられて」
「っ! あなたに何が分かるの!? 私達は三人でいつも仲良く暮らしグァ!?」
「感情任せで弱いですね。 所詮は感情を会得した精霊。 仲間がやられただけでこんなにも弱くなる」
アデュースの胸を土の魔法で作った剣で心臓を穿ち、アドネシアは侮蔑の目を向けた。
「こんなのが刀国を開拓した人物で私はがっかりです」
「ねぇ……様」
膝からアデュースは崩れて落ちてその体が粒子となって散り、そのまま粒子が集まって一つの球となった。
「ふぅ。 これで最後の精霊の片割がぁっ! るっ?」
いきなりだ。
いきなり閻仙の球から手が伸びて来た。
「よくもアデュースを殺したな!」
気がつけば閻仙は球ではなく、女性の姿を取っていた。
「……まだ死んでいなかったのですね浅儀閻仙」
「当たり前だろ」
「雌雄同体の貴方には興味があります」
「……話聞いているのかテメェ」
「……まぁ死ぬ人と話す事なんてないので私はアザイア様以外どうでもいいです」
「あっそうじゃあ死ねよ!」
そう言って閻仙がアドネシアを殴ろうとした時だ。
『止まれ時の檻』
世界が止まった。
「それと召喚」
するとさっき黒比美を撃ち落とした男が現れた。
「土に戻ってください」
アドネシアが手をかざすと男は土塊となって地面に崩れ落ち、黒比美を撃ち落としたクロスボウだけが地面に落ちた。
「まぁクロスボウは重いですけど人を殺すにはいい道具ですからねこの魔力銃にも原型となったマナ・クロスボウは」
そう言いながらアドネシアはクロスボウを拾い上げてそのまま閻仙に向けて魔力の矢を射出した。
「さようなら」
そう言った後に時は動いた。
「はっ?」
いきなりの事でアドネシアは驚いた。
自身の胸にクナイが刺さっている。
左肩には光魔法のポロンが直撃して左腕が丸ごと抉れていた。
目の前の閻仙は既にマナ・クロスボウの攻撃で殺され、既に球になっている。
だがクナイと魔法の攻撃方向が分からず辺りを見回した。
「ああ、あなた達でしたか」
アドネシアが攻撃方向を見て見ると茶髪を三つ編みにした少女とその三つ編みの少女に肩を貸しつつ、こちらに長い杖を向けている短い灰色の髪をした黄金の瞳をした魔法使いの少女を見た。
「顔を覚えました」
そう言って閻仙の球を拾いつつ、アドネシアはこの場は部が悪いと考えて転移魔法を使いその場から離れた。
「はぁはぁ」
「くそ逃した」
オルレイと雷月は肩で息をしながらアドネシアの姿が消えるのを見た。
「……雨。 閻仙さん」
オルレイは見ている事しか出来なかった。
一応魔力枯渇ギリギリでポロンを撃ってやったが左腕全体が完全に弾け飛ぶだけに終わってしまった。
「……必ず三人で雨を助けるぞ」
「うん」
オルレイは雷月の言葉に頷いた。




