異常
「えっ? ……ヤヌィ」
やめろと心が叫ぶこの光景は嘘であり、幻だとそう思いたかった。
「ふふ。 何が起きたか分からないようだね? 彼女の心臓を抉ってやったのさ僕を裏切った罰だハハっ!」
目の前の男は何がおかしいのか額に手を当てて笑う。
「あ、あのぅジェクー様。 私は何がっ!?」
すると隣に騎士が現れて声を掛けると一瞬の間に肉塊と化した。
「うるさいなぁ声を掛けるなよ? 僕は今気が立っているんだからさぁ?」
「……仲間じゃないの?」
オルレイは掠れた声で男に声を掛ける。
「はっ! 仲間? 仲間と来たか! 傭兵って生ぬるいんだねぇ?」
するとジェクーと言われた男は陰惨な笑みを浮かべてオルレイを睨む。
「仲間なんていないよ? この世界には生贄になる人間と支配者となるべき人間の二種類がいるんだからさぁとっと死んでくれよ」
するとジェクーはレイミーに向かって手を伸ばした。
「え?」
何をされているのか分からずにレイミーは呆けている。
「よっと!」
するとジェクーとレイミーの間に雨が割って入りいきなり抜刀した。
すると背後にあった建物が粉微塵になった。
「やれやれ見えない風かぁ面白い魔法だけど相手の耳が良かったら意味ないよね?」
そう言いながら雨が挑発的な笑みをジェクーに向けた。
「おい? 何やってんだクソ侍テメェぶち殺すぞ? あっ?」
「ひっ!?」
そんなジェクーを見てレイミーは全身を震わせた。
するとジェクーが不機嫌な顔をして額に青筋を立てている。
「……あっ、そうだヤヌィ。 ヤヌィを治療しないと」
オルレイは真っ白な頭でヤヌィの元に駆け寄り治癒魔法であるディカルを掛けるが効果がなかった。
「ど、うして?」
涙が出て来た。
なんで自分が理不尽に奪われなければならないのだろうか。
奪って来た奴らが得して奪われた人間はどうしてこうも心を冷たくして絶望の中を生きなければならないのだろうか。
「……ヤヌィごめんなさい。 ごめ、んなさい」
ヤヌィの死体をオルレイは抱きしめる事しかできなかった。
約束を守れず死に別れるなんて酷すぎる。
すると肩に手が当たって背後を振り返った。
「ノヴァ?」
いつも飄々としたノヴァはいなかった。
とても真面目で真剣な顔をしている。
「はぁ。 やってみるか」
するとノヴァは黒い手袋を外してナイフで手のひらを斬った。
「ちょ!? ノヴァ!?」
オルレイはいきなりの行動に驚いて声を上げた。
「黙って見てろ」
そう言ってノヴァが血濡れた手の平からポタポタと青い色の血をヤヌィの風穴が開いた心臓に垂らしていく。
「えっ?」
するとヤヌィの姿が変わり始めた。
ボロボロだった髪は灰色で美しく、目は赤く染まっていく。
「えっ? な、に? これ」
分からない。
オルレイは目の前で起きている現象が分からず混乱した。
「俺は異常魔力持ちでな」
「異常魔力持ち?」
「世界には異常魔力持ちと言われる青色の魔力の持ち主がいんだよ。 そいつら魔力が特殊過ぎてなんらかの異常が起きる」
「異常?」
「例えば不老不死、俺みたいに血の色があお青くなる。 背が伸びねぇ、魔法が使えないが身体能力がバカみたいに強い。 人間なのにいきなりエルフや獣人に変化するそんな現象を起こる奴らを異常魔力持ちって言うんだが過去は女の異常魔力持ちは魔女、男は魔人って言われてんだがそこは置いといて。 俺は吸血鬼と人間のハーフだ。 母は吸血鬼、父は医者だ。 そして俺の異常は血が青い事と吸血行為無しで俺の血を一定量流し込めばそいつを吸血鬼に出来る。 だがこれは賭けに近いが……どうやら勝ったようだ」
そう言ってノヴァが笑ってヤヌィを指差す。
「あれ? 私?」
「ヤヌィ!」
オルレイはヤヌィに飛びついて抱きしめた。
「ちょ、痛いよオルレイ! でもあれ? 私死んだはずじゃ」
「ノヴァがヤヌィを生き返らせてくれたんだよ!」
「まぁ俺が異常魔力持ちだから出来た事なんだけどな」
そう言ってノヴァが腰に手を当てて笑う。
「あ、ありえない! な、なんだって? きゅ、吸血鬼!? そ、そいつらはアザイアが全滅させたはずだぞ!?」
するとジェクーが突然取り乱した。
「うん? アザイア? お前何をしっている!」
すると雷月が両手にクナイを持って構える。
「ぐぅぅぅここで吸血鬼に出会えるなんてなんてこうあれ?」
全て言い終わる前にノヴァが放った青い雷がジェクーの心臓を撃ち抜いていた。
「ビキバガ」
「あ?」
そう言ってジェクーは倒れた。
「えっ? ノヴァ?」
思わずオルレイはノヴァの顔を見た。
「おっと説明ついでに敵を倒しちまった。 それと異常魔力のもう一つの特徴として一つの魔法しか使えない。 さぁこれで戦闘終了! とっとと親玉を倒しにいこうぜ!」
そう言って呆気なく外道な闇の使い手を殺し終えたのだった。




