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4話 ゲーム通りの筋書き

「よくぞ参った勇者ライアよ。久しく会ったが、逞しく成長したものだな」


「ありがとうございます」


 王都に着いて早々、俺達は国王へ謁見することとなり現在に至る。勇者として成長したライアを見てここまで来るのにかなり声を掛けられたな。

 それもそうか。この世界じゃあ勇者ってのは絶対的な存在だもんな。それこそ国王よりも。

 ていうか勇者ばっかりじゃなくて自分の事に集中するか。そろそろあの()()()()が発生する頃合いだからな。


「して勇者ライアに問おう。そこの連れている者は一体誰であるか?」


「彼は私の幼馴染のマゼルスです。勇者として魔王討伐へ赴く旅路を共にしてくれる仲間でございます」


「ほう、幼馴染か」


 そう言うと国王は怪訝そうに俺の方を見る。それもそうだろう。勇者の付き人として俺みたいな一般村人が現れたら誰だってそんな顔をする。

 それよりも自身の自慢の騎士を勇者の仲間として付き従わせたいところだろう。だからこそ、あのイベントが発生するわけだ。


「ふむ、勇者ライアよ。その者は本当に魔王討伐への旅路に付き従うに値する者なのか?」


「もちろんですとも」


 自信満々にそう言い放つライアを見て国王は不遜な笑みを浮かべる。やっぱあるよな~。あの国王の意地の悪い笑顔を見れば一目瞭然だ。


「では一度我が騎士団の団長とそちらのマゼルスとやらを勝負してみせてくれないだろうか? 余としても力量が分からぬ者を魔王討伐の旅へ送り出すのは不安なのだ」


 そう、ここで発生するイベントは王国の騎士団団長と幼馴染であるマゼルスとの1対1での試合である。

 プレイヤーがマゼルスを動かして見事団長に勝利を収めるっていうのが正規ルートだ。別にわざわざこの正規ルートから逸れる必要はないため、勝つつもりだ。


「マゼルス、いけますか?」


「大丈夫です」


「よし、では早速修錬場の方へ向かう。余に付いてくるように」



 ――――――

 ――――

 ――



 騎士団長との手合わせをするために修錬場へと移動してきた俺は試合前の準備体操をしていた。

 何気にこれが力を付けてから初めての実戦となる。どれだけ動けるかが試せる良い機会だな。


 準備体操を終えると修錬場の真ん中の方へ行き、対面にいるゴツゴツとした頑強そうな見た目をした騎士団長を見やる。


「双方準備は良いか。では始め!」


 国王の始まりの合図とともに俺は握りしめた模造剣を構えて騎士団長へと駆け寄る。

 先手必勝だ。


 まず最初に俺が狙うのは騎士団長の腹辺り。軽く力を抜いた状態で振るい、騎士団長の腹に剣を叩き込もうとする。

 対する騎士団長は俺の攻撃を止めようとすぐさま剣を滑り込ませてきてそれを防ぐ。


 それから何合か俺と騎士団長との剣の打ち合いが繰り広げられる。互いに一歩も引かぬ戦い、傍から見ればどちらが勝つか分からないように見えるだろう。

 だが俺はその打ち合いの中で既に勝ちを確信していた。なぜなら騎士団長の動きはほとんどゲームの時と同じ動きだったからである。


 『ロード・オブ・ルシフェル』は洗練されたアクションを売りにしていた。滑らかに、現実の人の様に動くキャラから繰り出される攻撃パターンは果てしなく多い。

 それこそ剣を振るうかと見せかけて蹴りをするなど、騙し討ちのような行動パターンすら存在する。

 俺はその攻撃パターンをほとんど熟知していた。なぜなら騎士団長はゲーム内において暇つぶしの時に勇者の稽古をしてくれる都合の良いキャラだったから。

 この世界に来てから十五年が経過するも、俺の中で『ロード・オブ・ルシフェル』の記憶だけは薄れることは無かった。

 それはあのゲームを常に意識して生活していたから。


 これが廃ゲーマーの力だ、なんて言いたくなるけど別に誇れる事でもなければ伝わるわけはないため心の中で止めておく。


 内なる邪念を取り払い話を戻すが、剣の打ち合いの中で騎士団長の行動に隙が出来るのは上から斬り下ろすモーションの直後。体勢を戻すのに普通の技よりも0.5秒遅い。

 そして遂にその時が訪れる。


 俺が横薙ぎに剣を振るう、騎士団長はそれを下から掬い上げるような形で俺の剣を上に弾く。

 騎士団長が次にとる行動は溜めからの上から斬り下ろす攻撃だ。この攻撃範囲がどれくらいなのかはよく知っている。

 攻撃が来る前に俺はかろうじて攻撃が当たらないギリギリのところまで体を捻り、半身を少し右へと動かす。

 すると騎士団長の握る剣は見事に俺の真左ギリギリのところを通過していく。

 攻撃を避けられ、重心を崩した騎士団長に成す術は最早無い。俺は素早く隙だらけとなった騎士団長の横腹に剣を叩き込む。


「ぐぬうっ」


 俺の攻撃をまともに受けた騎士団長は苦悶の声を上げるも、すぐに態勢を立て直し、こちらを睨みつけてくる。


「……まるでこちらの行動が全て理解されているような動きだ。まったく隙が見えん」


 まあほぼ全て理解しているから合ってはいるな。序盤の騎士団長は魔法も使ってこないはずだし後はこれを繰り返せばいいだけ……。


「其方を強者とみなし、全力で行かせてもらおう!」


 そんな言葉と共に騎士団長の体がみるみる内に赤く染めあがっていく。あれ? おかしいな。ゲーム中盤からしか使わない筈の身体強化魔法を使っているように見えるんだけど。


「これが私の全力だ!」


 そうして騎士団長から放たれたのは無数の斬撃である。

 嘘だろ、おい。まだゲーム序盤だぞ! 何で風魔法と身体強化魔法を同時に使ってやがる!


 そうか。ここはゲームの世界が元となっているとはいえ、どういう理屈かは分からないが住人にとっては現実そのものなんだ。

 ゲーム内では「本気で行かせてもらう!」とか言いながら結局その時の主人公の成長速度に合わせた調整が為されており、ゲーム終盤で戦う強さとは明らかな差異が生まれている。

 しかし現実であるこの世界での「本気で行かせてもらう!」は何の調整もなされていない、本当の意味での「本気」なのだ。


「なるほどねぇ、面白いじゃないの。廃ゲーマーってのは難易度が高いゲームほど燃えるってもんだ」

ご覧いただきありがとうございます!


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