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2話 出会い

 憧れのゲームの中、それも長い間プレイし続けていた『ロード・オブ・ルシフェル』の中の世界に転生したと気付いた最初の方、それはもう歓喜繚乱であった。

 まあ転生した当初は体も碌に動かせず、言葉も碌に喋れなかったため、心の中での話になるが。

 この世界に慣れてきてからは以前の世界に居た両親や友達の事を思い出し、悲しくはなったものの俺は順調にゲームの中でマゼルスとして成長していった。


 ゲームをプレイしているだけでは感じることが出来なかったエインとエミリーの親としての愛情、それを一身に受けて成長してきた俺の心からはそんな悲しい感情も徐々に薄れていった。


 ただその順風満帆な日々も、マゼルスというキャラの末路を考えると気が滅入ってしまう。だって序盤ですぐ死んじまうんだぜ?

 一回死んで生まれ変わったのにまたすぐ死ぬなんて嫌だ! もう死ぬのはコリゴリだ!


 そう思った俺は歩けるようになったくらいからコツコツと両親には内緒で簡易的な筋トレをしたりや本を読み漁って知識をつけたりしていた。

 幸いにもこの世界は元々俺の元居た世界の言語で作られたため、難解な本でも俺は前世の知識をフル活用して読むことが出来たのだ。


 本を読んで何をするかって? 実は『ロード・オブ・ルシフェル』の中には魔法という物が存在する。その魔法って言うのは魔法書という物を手に入れてそれを読むことで会得することが出来るのだが、その会得に知力値なるものが必要となってくる。

 この世界にステータスを表してくれる便利なものは存在しないが、本を読むたびに理解度が明らかに上がっているのを見るに目には見えないもののステータスというものは存在しているのだと分かった。

 流石はゲームの世界である。


 どうせゲームのシステム上、死ぬんだから筋力を上げたり魔法を覚えたりするなんて無駄だって?


 確かにその通りなんだが、一つマゼルスの設定について都市伝説的に囁かれている、ストーリー上には描かれていない没設定なるものが存在するとされている。

 これはかなり有力な情報で、発売直前までストーリーに組み込まれていたとポロッと公式生放送で製造者が零していたものなのだ。


 それに没設定は没設定でもそれは()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 てことを考えればこの世界は頑張ればその元々存在しないストーリーを実現することだって可能な世界であるとも捉えることは出来ないだろうか?

 

 まああくまで楽観的観測に過ぎない訳だが、そもそもその没設定の内容を俺が体現できなければお話にすらならない。

 そしてそれを体現するためにはどうしてもとある魔法を覚えなければならないのだ。


 そうこうしている間に気が付けば五歳となっていた俺はいつもの如く筋トレもかねて庭で父であるエインと追いかけっこをしていた時、誰かが家にやってきて庭に居る俺と父にこう声を掛けてきた。


「どうも初めまして。最近この村に引っ越してきたバーンと申します。こちらが妻のエリスでこちらが娘のライアです。挨拶回りにあちこちお伺いしておりまして」


「あ~、最近引っ越してきた! 私はエインと申します。それとこの子は私の息子のマゼルスです。後は妻のエミリーなのですが……エミリー! 新しい人が挨拶回りに来てくださったぞ!」


 そう言ってエインは家の中へと入っていき、庭で俺一人だけ取り残されることとなった。しっかし美人だな~あの人。

 それに俺と同い年くらいの女の子の方も母親に似て滅茶苦茶美形だ。ん? ていうかちょっと待てよ。確かバーンとエリスって……。


「すみませ~ん、遅くなっちゃいました。私、エミリーって言いますご近所さん同士仲良くしてくださいね!」


「ははっ、愉快な方ですな。こちらこそよろしくお願いしますね」


 そう言って互いに談笑し合う双方の親。対する俺は水色の髪に金色の目をした少女と目が合うとぎこちない笑みを返す。

 すると向こうもそれに気が付いてくれたようでニコリと天使のような笑顔を向けてくれる。ああ、なんて可愛いんだ。これで後10歳も年を取っていたら俺も思わず告白していたところだ。


「……そうなんですか! ちょうどウチのマゼルスも五歳になったところだったんです~」


 いつの間にか親同士の会話が弾んでおり、何やら俺の話になっていたようだ。母が俺の肩に手を置いた時にようやく気が付く。


「いや~、よかったよかった。村にこの子と近い年頃の子が居ないか心配していたんですよ。マゼルス君。ぜひウチの娘と遊んでくれると嬉しいな」


「うん、遊ぶ遊ぶ~」


 元の世界での生活はどこへやらこの世界に来てからというもの活発になっていた俺は当然の如くそう返事をする。

 そうして再度少女に向けて笑みを送る。


 『ロード・オブ・ルシフェル』では主人公の見た目や性別を選ぶことが出来る。そのため、一目では分からなかったが少女の両親の名前を聞いて俺は確信した。

 今目の前に居るこの天使のように可愛らしい見た目をした少女こそが、『勇者』称号を与えられるこの世界の主人公であり、俺の命運を左右する人物なのだと。

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