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1話 転生した廃ゲーマー

 俺は海堂天(かいどうそら)、ごく普通の男子高校生だ。日々、寝るためだけに高校へ行き、家に帰るとすぐにパソコンの電源を付け、四六時中ゲームをする、いわゆる廃ゲーマーって奴だ。

 中学まではゲームはしていたもののもう少し真面目に勉強に励んでいたが、今じゃ見る影もない。

 高校の受験勉強が終わった反動でゲームをしては学校で寝て、家に帰ってはまたゲームをするというだらしのない日々を過ごしていた。


 そんな廃ゲーマーである俺が今最も熱中しているのが『ロード・オブ・ルシフェル』というゲーム。

 伏線が多く、発売されてから二年が経過しているにも関わらず未だに謎が多く残されたこのゲームはストーリーの質もさることながらアクションの質そして考察のしがいもあるという事でゲーマーに超人気のアクションRPGだ。

 伏線の中にはストーリー進行上、没となった設定、通称『没設定』なるものがあるだろうという考察が都市伝説的に繰り広げられるほどに世界観が秀逸に作り上げられているのもこのゲームの大きな魅力の一つだ。


 基本的にはボスとして本作品のパッケージにもなっている最上級悪魔のルシフェルを倒せば表面(おもてめん)はクリアとなるのだが、アップデートが頻繁にあり、その度に新しいボスと新しいマップが出るのも人気の秘訣だ。


 そして俺もまんまとゲーム製作陣の術中にはまり、日々せっせとゲームを起動しているのである。


「今日更新されるボスで最後の裏ボスなのか~。楽しみだぜ」


 携帯画面を見ながら俺はそんなことを呟く。そう、実は毎度毎度アップデートされていた裏ボスの実装が今日で最後だというのである。

 高校に入学してからほぼ二年間、ずっと打ち込んできたゲームのアップデートが今後一切無くなるっていうのは寂しさもあるが、今からまた新しいストーリーが展開されるのだというワクワク感の方が大きい。


 早く家に帰ってゲームがしたい、そう思っていた矢先であった。


「危ない!」


 どこからともなく聞こえてくる焦った声。その声に思わず携帯の画面から視線を外すと、そこには歩道に突っ込んでくる一台の大きなトラックがあった。

 携帯の画面に夢中になっていた俺がこちらに向かってくるトラックに気が付いた時にはもう既に手遅れなのであった。


 

 ♢



 うん? なんだここは?


 トラックに轢かれた俺が次に目を覚ましたのは見覚えのない天井であった。目を覚ますとそこには真っ白な天井がって言いたいところだけど、今回は普通に茶色の天井だな。


 しかし全く見覚えが無い天井ではある。病院じゃなくて俺の家だとしても白色だし。もしかしてトラックに轢かれたと思いきや超高速で睡眠薬を飲まされてそのまま拉致されたのか!?


 こうしちゃいられない、そう思った俺は体を動かそうとするも思うように動かせないことに気が付く。いや、やっぱり少しは当てられたのか?

 にしてはあんまり痛みは感じないけど。てかあのスピードで当てられたら痛いというか死んでるか。


 そうして思考を巡らせていると俺しか居なかった部屋の中に誰かが入ってくる音が聞こえる。


「あらあら、マゼルスちゃん。起きていたの?」


 聞いたことの無い女性の声だ。それに視界もぼやけていて女性の顔が良く見えない。てかマゼルスって誰の事を言ってるんだ?

 この部屋には俺しかいない筈だが……もしかして幽霊? べ、べべつに怖くなんてねえし。

 なんてくだらない事を言ってないでせっかくの情報源だ。これをみすみす逃してなるまい。そう思い、俺はその女性に声を掛けようと口を開く。

 しかし、俺の口から発せられたのは意味のある言葉ではなく「あ~」だったり「あう~」だったりとどこかおかしい。

 どうしちまったんだ? 俺の口は。


「ミルクの時間でちゅよ~。マゼルスちゃん」


 そんな女性の赤ちゃん言葉と共に俺の体が軽々と持ち上げられる。なんて馬鹿力だ。てか俺はマゼルスじゃねえ!

 そう突っ込みを入れようと女性の顔を見た次の瞬間、俺の中で衝撃が走る。


 何故ならその女性の顔が『ロード・オブ・ルシフェル』に出てくる主人公の幼馴染の母親であるエミリーとそっくりそのまま同じだったからだ。


 そうか、思い出したぞ! 序盤で死ぬからすっかり忘れていたけど、マゼルスって確か主人公の幼馴染の名前じゃないか。

 そんでこうしてエミリーに軽々と抱えられており、かつマゼルスちゃんと呼ばれている。

 てことは俺はトラックに轢かれて……。


「『ロード・オブ・ルシフェル』のマゼルスに転生したって事なのか!?」


「キャー! マゼルスちゃんが喋った! パパ~! マゼルスちゃんが喋ったわよ!」


「なに~それは本当か!? エミリー!」


 おい何で今の今まで喋れなかったのにこういう時だけ急に喋れるようになるんだよっ!!!! 

 ってまた喋れなくなったし!!!!


 兎にも角にもこうして俺、海堂天(かいどうそら)はトラックに轢かれて死んだ後、ゲームの序盤に死んでしまう主人公の幼馴染であるマゼルスとしての人生がスタートするのであった。

ご覧いただきありがとうございます!


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