タツザマの困惑
話が噛み合わない人って、結構居ると思う。
そんな人と話をしなくちゃいけない場合、どうしますか?
小馬鹿にしたつもりが、むしろ褒められたと受け取る人も居る。
金色のモールマンとタケシが、そうだったようにね。
でもこれって、日常生活でも多々あるよね。
例えばファミレスなどに行った時、何にする?と聞かれたら、僕は何を食べるのかと聞かれたと判断する。
でも人によっては、それを飲み物だと思う人だって居るわけだ。
これくらいなら良いけど、本当に話が噛み合わない人と一緒に居る時、僕はストレスを感じそうで怖い。
だって、ある意味話が通じてないわけだ。
英語や外国語で話しているなら、それも分かる。
でも同じ日本語で言ってるのに、どうして意味の分からない答えが返ってくるのかと、不満が溜まりそうだからだ。
僕の場合、こんな時は何も話さないに限る。
全て相手の話を聞く事に徹する。
何かを聞かれたら答えるけど、自分から話は振らない。
そうすれば、どうしてそんな答えが出てくるんだ?という不満は無くなると思う。
これはあくまでも一例。
勘付かれる事はあまり無いとは思うけど、失礼の無いようにするなら、こういう方法もありますよってだけです。
あまり参考にしない方が良いですけどね。
モールマンから呻き声が聞こえると、タケシは周りの騎士達に向かって、煽り続けた。
「シャイ!シャイ!ウイィィィ!!」
なかなか起き上がらないモールマンだが、タケシの隙を見て背後から唐突に攻撃を入れた。
金色に光る岩をナックルガードのようにして背中を叩くと、タケシは前へ転がっていく。
「イタタ、油断した」
「私を相手に油断する事自体、ふざけ過ぎなんですよ!」
倒れたタケシに猛ダッシュのモールマン。
ジャンプをすると、そのまま踏みつけようとしている。
タケシはそれを横へ回転して避けると、今度はサッカーボールを蹴るようにタケシの腹を狙った。
「死ね!」
「うぐぅ!」
蹴り飛ばされたタケシが呻き声を上げると、モールマンは満足そうに口角を上げた。
自分のキックなら、最低でも骨折か内臓破裂はしているはず。
モールマンはタケシの蹲る姿を見てそう思い、余裕のある足取りで近付いていく。
「さっきはよくもコケにしてくれましたね!」
もう一度蹴り飛ばそうと足を振り上げると、タケシが両足で挟み込んだ。
倒れたモールマンの足を手で挟むと、モールマンは苦痛に顔が歪んだ。
「クウゥゥ!」
「油断したら駄目だぜ。これがストレートニーロックだ」
タケシの言葉など耳に入らないモールマンだったが、再びタケシが技を解いた。
モールマンは息荒く立ち上がると、タケシも距離を取った。
このままでは勝てない。
モールマンはタケシと自分の相性の悪さに、気付いていた。
いくら硬い岩に覆われていても、関節技には意味が無い。
どうしても曲がる関節部分だけは、岩で覆えないからだ。
そしてモールマンは、ある作戦に出る事にした。
「参った。私の負けだ」
「え?」
両手を挙げての突然の降参宣言に、戸惑うタケシ。
だが、そういう時こそ大きな何かを仕掛けてくるかもしれない。
油断は見せないようにと、先程とは違い本気で警戒をしていた。
「信じられないのは分かる。そして降参したからと言って、この戦いを止めるつもりは無い」
「どういう意味だ?」
「お前は私より強い。おそらく、何をしても勝てないだろう。だが私も、王から認められたモールマン。ただでは死ねない。だからこそ、お前の最高の攻撃と勝負したい」
「最高の攻撃・・・」
悩むタケシ。
周りの騎士達もその返答を待っている。
「分かった。アンタの覚悟に応えよう」
タケシの答えに、騎士達が湧き上がった。
そしてモールマンの口角も、同じく上がっていた。
「ありがとう。ならば、私の最期の一撃を食らえ!」
モールマンがタケシに対して構えると、無防備にタケシに向かって走り出した。
タケシも構えているが、動く気配は無い。
タケシの攻撃範囲に入るかと思われたその時、モールマンが右手を前へと突き出した。
するとその右手から、金色に光る岩が一斉に撃ち出された。
タケシへ金色の岩が集中砲火が浴びせられる。
「馬鹿め!誰が死ぬか!」
岩の威力を上げようとモールマンがタケシに近付いたその時、大きな声が響き渡った。
「はっ!」
その声と共に、撃ち出した岩がモールマンへと返っていく。
岩を失って無防備な姿を曝け出したモールマンに、それを防ぐ手立ては無かった。
「ば、馬鹿な!?」
その場で両膝をついて、自分の腹を見るモールマン。
そこには自分の岩によって出来た、大きな穴が開いていた。
「な、何をしたんだ?」
虚ろな目でタケシを見るモールマン。
そこには右拳を突き出した、タケシの姿があった。
険しい雰囲気で右拳を突き出していたタケシだが、モールマンが膝をついたのを確認すると、いつもの雰囲気へと戻っている。
「何をしたって言われたら、そりゃあ正拳突きだけど」
「せ、正拳突き!?投げ技と関節技ではなく!?」
「あ〜、うん。何が一番得意かと聞かれたら、毎日やってる正拳突きかなぁと思って」
まさかの答えに絶句するモールマン。
岩を撃ち出せば、不用意には近付けない。
更に岩が無くなれば身軽になり、身体が固いわけではないモールマンなら、タケシの投げ技と関節技に対応出来ると踏んでいたのだ。
それがまさかの正拳突きという答えに、モールマンの考えはことごとく潰されてしまった。
「ふ、フハハハ!」
「ど、どうした!?」
腹に穴が開いたのに大笑いを始めたモールマンに、タケシは警戒する。
まさか、回復能力まであるのか!?
そう考えたタケシは、再び身構えた。
「まだやるってのか!?」
「もう無理だ。私の負けだ」
「そ、そう。腹の穴が塞ぐのかと、ちょっとビビっちゃったぞ」
また騙されているんじゃなかろうか?
タケシはまだ構えを解かない。
「でも、最高の一撃で倒したんだ。本望だよな?」
タケシの問いにまた笑いが込み上げるモールマン。
そして最期の一言を言うと、モールマンは事切れた。
「んなワケあるか!」
タケシがモールマンと戦い始めた頃、タツザマも銀色の岩で覆われたモールマンとの戦いが始まった。
タツザマは銀色のモールマンの特性を知らない。
故に何も考えずに攻撃に出るのを、躊躇っていた。
まずは敵を知ってから。
タツザマは注意深く、銀色のモールマンを見ていた。
しかし、銀色に輝く岩を持つ以外に大きな変化は見当たらなかった。
大きさも普通のモールマンと変わらず、腕や足が他よりも太いというわけではない。
強いて言えば、銀色の岩に覆われると言っても、斑になっていて全てが銀色というわけではないくらいだった。
「来ないのか?だったら、こっちから行くぞ」
待ちかねたのか、先に銀色のモールマンが動いた。
彼は爪ではなく、手の形をしたモールマンだった。
その為、武器に槍を持っていた。
長い槍を横薙ぎに振り回すと、タツザマはそれを後ろへ飛んで避ける。
特に変わった攻撃でもなく、ただの横薙ぎだった。
こんな攻撃に当たると思われているのかと、タツザマは侮られているように感じた。
「馬鹿にしているわけではないよな?」
「何がだ?」
その返答が本音と感じたタツザマは、少し苛立ちを覚える。
「お前は、特殊個体の中でも最弱の部類だな」
決めつけと共に、タツザマは瞬時にその場から消えた。
モールマンの背後に回ると、奴が反応出来ていない事を察知する。
一撃で終わる。
タツザマはそう判断して、首を刎ね飛ばそうと太刀を横に振った。
「な、何だ!?」
「馬鹿だなぁ。弱かったら王に認められて、こんな所に来るはずが無いと思わないのかな」
タツザマの太刀は、モールマンの首を刎ねる事は出来なかった。
勿論、モールマンは自分の攻撃に反応していない。
むしろ太刀を止めた金属音が聞こえてから、ようやく振り返ったくらいだ。
それに驚くタツザマだったが、戸惑っていると更に驚く事になる。
「これは!?」
タツザマの攻撃を防いだモノが、今度は自分の首を狙ってきたのだ。
慌てて太刀で防ぐと、タツザマはすぐに距離を取った。
「あぁ、倒せなかったか。やっぱり強いな」
「お、お前、何なんだ?」
「何だと言われても。シルバーの名を冠するモールマンですけど」
飄々と答えるモールマンだが、タツザマが求めている答えとは違っていた。
苛立ちを露わにしながら、再びタツザマは問うた。
「その銀色のモノは何だと聞いている!」
「コレ?コレは俺の相方、シルバーちゃん。俺の考えを読み取って、勝手に攻撃や防御をしてくれる、頼もしい仲間だよ」
「か、勝手にだと!?」
オートで攻撃や防御をするという、銀色の流動的な何か。
話を聞いただけなら半信半疑だったが、実際に目の当たりにしたタツザマは、厄介極まりないと感じていた。
「ちなみに、こんな事も出来るよ」
モールマンはそう言うと、銀色が岩の上をウネウネと動き始める。
手のひらをこちらへと向けたと思うと、銀色が手のひらから鞭のように伸びてきた。
太刀でその鞭を逸らすと、タツザマはその音に驚く。
「チッ!鞭のようにしなるのに、硬度は金属並みかよ!」
「あら、残念。意外と今の攻撃でやられる人、多かったのに」
「そう簡単にやられると思うな」
「じゃあ、こういうのは?」
手のひらから伸びた銀色が、モールマンの手元に戻っていく。
モールマンは全ての銀色が戻ると、手に持った槍で再び攻撃を開始した。
「だから、お前の槍では拙者は倒せんよ」
「知ってる。所詮こんな程度の腕前だしね。でもさ、俺一人じゃなかったら?」
槍の穂先が急に分かれた。
不意を突かれたタツザマは、首を大きく捻って避けた。
間一髪間に合うと、それが何なのかようやく気付いた。
「ぎ、銀色が攻撃してきたのか!?」
「正解!俺の攻撃なら簡単に捌けるだろうさ。でもその攻撃から、更に派生した攻撃が急に生まれてきたら?」
「チィ!面倒な!」
「これまた正解」
槍を太刀で捌いていると、その柄や穂先から、急に鋭利な銀色が自分目掛けて伸びてくるのだ。
そのトリッキーな攻撃に、タツザマは徐々にタジタジになっていた。
防戦一方のタツザマだったが、ある考えが頭の中に浮かんだ。
それを実行に移すべく、モールマンから大きく距離を取る。
「どうして逃げるの?俺を倒さなきゃ駄目なんだよね?」
「お前の攻撃は、拙者でも違う者でも、とても厄介だと思うだろう」
「褒められてるのかな?ありがとう」
その余裕から、タツザマに対してお礼まで言うモールマン。
タツザマは再び苛立ちを覚えたが、冷静になろうと深呼吸をした。
「ハァ、とりあえず銀色のそれが厄介なのは認めよう。だが、これならどうかな?」
突然、空を飛ぶタツザマ。
モールマンはそれを見て、空に手を伸ばした。
鞭のように伸びた銀色がタツザマを追ったが、途中で止まってしまう。
「やはりな。お前の銀色は、量が限られている。だから距離さえ取ってしまえば、届く事は無いと思っていた」
タツザマは自分の考えが正しかったと言うが、それを見ていたモールマンは鼻で笑う。
「ハッ!それで勝ったつもり?」
モールマンは伸ばした手のひらを、ギュッと握った。
すると銀色の鞭が、先端から爆散する。
「グアッ!」
散弾銃のように散らばった銀色は、タツザマを襲った。
ギリギリで防いでみせたものの、ダメージは大きい。
「俺のシルバーちゃんは、優秀だよ。さっきも言ったけど、勝手に攻撃をしてくれるんだ。そんなんで勝った気になったら駄目だよ」




