表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
732/1299

トキド領からの報告

 自己評価というのは、本当に正しく出来るものですか?

 よく言われるのは面接試験の時だよね。

 入学試験の面接、就職活動における面接。

 人間、必ず何処かしらで自己評価をしなくちゃならない時がある。


 でもさ、それって本当に合ってる?

 難しくない?

 例えば自己評価が低過ぎると、面接官とかにそんな酷いのかという印象を与えたりする。

 その逆で自己評価が高い人間は、いざという時にボロが出る。

 面接官だって馬鹿じゃないし、内面を見るのが苦手な人ではないはず。

 だからその折り合いを、見ているんじゃないかと思うんだよね。

 自己評価が少し低い人は、謙遜や控えめな人だと思われるだろうし、少し高い人は自分を奮起させる為とかって思われたりする。

 あまりに高い低いとなると、自分が見えてないなと判断されると思う。


 しかし自分を低く見てるが故の努力というのは、ある意味残酷でもある。

 知らないうちに、周りから突き抜けた存在になるからだ。

 その努力を評価してくれる人なら良いけど、妬み嫉みの対象になりかねない。

 アイツは変わったとか、アイツは仲間じゃないとかね。


 何が言いたいかと言うと、イケメンが努力して強くなり過ぎると、魔王である僕が目立たなくなります。

 もう少し控えめな努力でお願いしたい。

 モテない男の嫉妬をナメるなよ。








 又左達の活躍もあり、長浜の防衛は完璧に成功した。

 長浜の人に被害も無いだけでなく、街全体も一切破壊された場所は無い。

 これは無駄だと思われたカレリンの猪突猛進が、功を奏した結果だった。

 敵と正面衝突して押し込んだからこそ、モールマンを街へ近付けさせなかったのである。



「一通り終わったし、あとはジャイアントに一任出来るだろう」


「俺達は官兵衛の指示待ちだな」


 高台から見る限り、押されている場所は既に無い。

 あとは地上も空も、掃討戦だけとなっている。

 蘭丸と水嶋も一息吐くと、任された仕事を終えたと実感した。



「一応、マオにも連絡しておくか」


「アイツ、騎士王国へ行ってるんだったな。こっちの戦局を知りたいだろうし、良いんじゃないか?」


 蘭丸は携帯を取り出すと、魔王へと電話を掛ける。







「もしもし」


「早いな。俺だ」


 俺?

 オレオレ詐欺か!?

 って、知り合いしか携帯持ってないのにそれは無い。

 というか、声で分かるし。



「蘭丸か。長浜の件だよね?」


「モールマンは壊滅させたって報告を、しておこうと思ってね」


 おぉ!

 流石は蘭丸達だ。

 官兵衛の策が上手くいったのも大きい。

 被害も最小だし、これはモールマンの作戦を挫く大きな勝利じゃないか?



「凄いぞ!頑張ったな」


「お、おう」


 なんだ、照れてるのか?

 フフフ、こういうところはウブよのう。



「それで、騎士王国は、えっ!?あ、ちょっと!」


「どうした?」


 電話の先で何やら揉めてる?

 まさか、モールマンの伏兵か!?



「もしもし!私です、魔王様の右腕、貴方の又左です」


「へ?」


 どうやら又左が、電話の相手が僕だと分かって、蘭丸から電話を奪い取ったようだ。

 さっきの慌てぶりは、それが原因か。



「私が、わ・た・し・が!モールマンの指揮官を倒しました」


 何だろう、電話の先でドヤァってなってるのが分かる。

 まあ倒したなら、ここは褒めておくべきか。



「流石は又左だ。よくやった」


「ありがたき幸せ!」


 遠くで蘭丸が、何かを言ってる声が聞こえる。

 多分携帯を奪われた事に、文句を言ってるんだろうな。



「ったく!本当に油断も隙もありゃしない」


「取り返したのか?」


「ああ。それで、そっちはどうなんだ?」


「こっちは・・・」


 正直な話、あまり芳しくない。



 タツザマが空飛ぶモールマンを倒し、ヌオチョモ領も無事だったまでは良い。

 しかし西側最大の勢力だったトーリは、ほぼ敗北濃厚。

 御所を守る要と期待していたトキドも、自領が襲われて急遽引き返す羽目になった。

 長浜を守れたのは、僕達魔族としては大きな勝利だが、この場で手放しに喜べる状況ではない。



「あまり良い状況じゃないな。官兵衛殿に頼んで、もう少し増援を出すか?」


「それはやめておこう」


 長浜が狙われていたりトキドが急に襲われたりと、僕では追いつかない事が多過ぎる。

 下手に人を動かして安土を危険に晒すより、今は現状の戦力で頑張る方が確実だろう。



「蘭丸達は官兵衛の指示に従って、長浜に待機なり安土に戻るなりしてくれ」


「分かった。最近はモールマンの動きがよく分からないからな。お前も気を付けろよ」


 僕は電話を切ると、他の者達から視線が集まった。

 長浜の様子が気になるらしい。

 とは言っても、僕がよくやったとか頑張ったなとか言ってる時点で、結果は分かっていると思うけどね。



「というわけで、長浜は無事だから。秀吉、街にも被害は無いぞ」


「街にも!?」


 オケツが驚き、僕にどうやったのかと聞いてくる。



「カレリンの突撃が前線を押し返して、空飛ぶモールマンはウチのフライトライク隊が制圧したから。ちなみに指揮官らしき喋る空飛ぶモールマンも、又左が倒したらしい」


「カレリン!?あの脳筋ジャイアントか。クソー、羨ましいな。こっちは微妙だというのに」


 騎士王国のジャイアントは、かなり優秀だと思うけど。

 マルエスタは官兵衛タイプのジャイアントだし、大局を見るならオケツより任せられる。



「そういえば、マルエスタは?」


「彼は途中から、戦線を抜けたでおじゃる」


「何処行ったんだ?」


「知らない。私と意見がぶつかって、一部のジャイアントを率いて何処かへ行っちゃったし」


 オケツの馬鹿!

 しかも話を聞くと、意見がぶつかったっていうのも、ジャイアントの配置を御所に固めようとしたからじゃないか。



 マルエスタは僕達みたいに、各領へジャイアントを配置しようと考えたらしい。

 それをオケツは、帝と自分が居る御所に集中させようとして、意見が衝突。

 結局は雇われている身のマルエスタが折れて、一部のジャイアントを連れて御所から離れたという。



「これからどうするんだ?トーリへ援軍でも出すのか?」


「今更もう遅いでおじゃる。だから西側にジャイアントの大半を配置し、トーリを落としたモールマンに備えるでおじゃるよ」








 長浜がモールマンに襲われてから、一週間くらい経った。

 それから長浜への侵攻は一切無いというが、蘭丸達はまだ警戒を緩めていない。


 そして挟撃されたトーリ軍はというと、こちらは大変な事になっている。

 敗れたトーリ軍は、そのままモールマンの文字通り餌食となったのだ。

 トーリ軍といえば、弓が得意な軍として有名らしい。

 確認はしていないが、おそらく食ったモールマン達は手が発達して、弓が扱えるようになったのではというのが、偵察部隊からの報告だった。


 そしてもう一つ、忘れてはいけない戦場がある。



「トキドからの報告は無いでおじゃるか?」


「無いですね。私もあのトキド殿が負けるとは思ってないけど、こうまで連絡が無いと・・・」


 弱気な発言をするオケツだが、それを真っ向から否定する者が居た。

 トキドのライバルである、ウケフジだ。



「トキド殿は負けませんよ。むしろ全てを倒すまで、帰ってくるつもりは無いのでは?」


「ハッハッハ!流石はウケフジ、俺の考えをことごとく見抜いているじゃあないか」


「トキド殿!?」


 何の前触れも無く、いきなり凄い勢いで扉が開くと、そこには真紅に燃える鎧を着込んだトキドの姿があった。

 返り血なのか自分の血なのか、鎧の紅に更に赤い物が付着している。



「その様子だと、何とかなったのですね」


「あぁ、ワイバーンや騎士が少し食われたが、他は問題無い」


「という事は、間に合ったんですか?」


 首を横に振るトキド。

 やはり報告直後に全力で戻っても、無理だったようだ。

 しかしそうなると、どうやって返り討ちにしたのかが気になるな。



「何故だ?副官のヤヤが奮闘した?」


「ヤヤも頑張ってはいたが、奴よりも獅子奮迅の活躍をした者が居る」


 そう言うとトキドが横へずれると、そこに立っていたのは身体がちょっと小さいジャイアントだった。

 勿論、僕達は彼が誰だか気付いている。



「マルエスタか!」


「お久しぶりですね」


 挨拶を済ませると、トキドが彼を大きく称え始める。



「実はマルエスタ殿が、俺達を助けてくれたんだ」


「えっ!?」


「マルエスタ殿は、トキド領とウケフジ領の近くに潜伏していたみたいで、トキド領にモールマンが出現したのを機に出てきてくれたんだよ」


 皆が感嘆の声を挙げている中、一人だけバツが悪そうな男が居る。

 オケツである。

 彼はマルエスタから視線を逸らし、自分が何か言われないかとビクビクしていた。



「ウケフジ、お前の所も狙われていたかもしれないらしいぞ」


「そうなんですか!?」


「狙われるとしたら、どちらかだと思っていただけです。それに、モールマンを倒せたのは僕の力じゃないので」


「どういう事?」


「そう、俺の城が落とされずに済んだのは、マルエスタ殿とこの方々のおかげだ。どうぞ」


 方々?

 複数居るのか。

 トキドが敬語を使う相手って、帝くらいかなと思っていたんだけど。

 そしたらそれは、思いもよらない連中だった。



「魔王様、遅れてしまい申し訳ありません」


「ご、権六!」


「お知り合いですか?この方々が参戦してくれなかったら、間違いなく被害はもっと大きなものになっていました」


 なるほど。

 トキドが敬語を使うわけだ。

 マルエスタもそれを見て、偉い人だとは分かったみたいだけど。

 知り合いもなにも、彼等は魔族の一員だからね。

 ジャイアントからしたら、そりゃ魔族もヒト族も分からないか。



「我々はジャイアントの援護を断っていたので、どのような方達なのか知らなかったのですが。彼等のような方々なら、我々も来てもらえばよかったと、少し後悔していますよ」


「いえいえ!皆さんが来てくれなければ、空飛ぶモールマンに僕達も為す術無くやられていました」


 お互いに、そちらがそちらがと譲り合うような展開が続く。


 話が進まないのでトキドに確認をすると、地底から出てきたモールマンはマルエスタ達がどうにか抑える事に成功したという。

 しかしワイバーン隊の大半を、御所へ連れてきてしまっていた為、空飛ぶモールマンの相手が出来なかった。

 そこに現れたのが、権六達というわけだ。

 越前国から遠路はるばるやって来た彼等だが、その一端を担うのが土蜘蛛である。

 彼等の糸が空飛ぶモールマンを下へと叩き落とし、対空から地上戦へと引きずり込んだ。

 全てのモールマンを地上へ落とせたわけではないが、土蜘蛛を警戒した彼等は消極的な動きをしている間に、トキド達が追いついたという話だった。



「まさにトキド領の救世主!マルエスタ殿と柴田殿がいらっしゃらなかったら、トキド領は蹂躙されていた。本当に感謝しかない!」


「僕は自分が出来る事をしたまでです。本来はジャイアントを全ての領に配置していれば、もっと迅速に対応出来たと思いますよ」


「私は家内が行けと行ったので、オケツ殿の救援依頼に来たまでですから」


「全ての領に?どういう意味?」


 トキドはマルエスタの言葉を聞いて、オケツと帝を見る。

 帝は何の事?という顔だが、オケツの顔は明らかに青い。

 それを見たトキドは、オケツへと詰め寄る。







「ちちち違うんだよ。まずは御所。帝が居る御所ありきで考えただけなんだ。他を蔑ろにしたわけじゃないからね。それにほら、私が越前国へ救援を頼んだから、柴田様がいらっしゃったワケで。・・・どうだろう、これでチャラって事にならない?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ