表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
726/1299

見誤る

 良いな〜。

 羨ましい。

 兄の魂の欠片の能力が、空を飛ぶ事だったなんて。


 確かに僕は、自分が変わりたいとか背が大きくなりたいと願ったけど。

 変わりたいの意味が姿をまんま変える事だし、背が大きくなりたかっただけなのに、何故か巨大化するし。

 何かがズレてる気がするんだよね。

 その点兄の空を飛びたいという願望は、そのまま反映されてる。

 これが例えば、めちゃくちゃジャンプ力が上がるだけとかなら、あぁ要らんな・・・って思えた。

 でも本当に空を飛んでたからなぁ。

 羨ましいとしか言いようがない。

 まあ代わりに、英雄願望というのは意味が分からなかったけど。

 アレ、何が影響しているのか未だに分からない。

 もしかして、常時発動してるのかな?

 それとも条件付きで、何かをしないと駄目とか。

 自分の願望でもないし、全く想像がつかない。

 兄はその辺深く考えていなさそうだし、このまま能力の解明をしないままかもしれない。


 とはいえ、これでようやく四つは集まった。

 残りは二つだったかな?

 もうすぐ欠片も揃うし、元の身体に戻れるぞ!







 タツザマの報告に、帝はやはりと呟く。

 どうやらトーリと激突する事は、想定内だったようだ。



「戦闘の様子は見たでおじゃるか?」


「拙者、そのままこちらへ向かったので見合っているところまでしか見ておりません」


「それなら俺達が見たぜ」


「タケシ殿!」


 タツザマの報告に割って入るタケシ。

 すぐにギュンターがタケシを制し、続きを話し始める。



「躾がなっていなくて、申し訳ありません」


「いや、マロ達は協力をお願いする立場でおじゃる。楽な形にしてくれて、良いでおじゃるよ」


「ほらな。帝もこう言ってるし」


「お前は黙ってろ!」


 気楽にと言われて、そのまま座り込むタケシ。

 ギュンターはそれを見て、眉間に皺を寄せながらため息を吐いた。



「私達も全てを見たわけではないですが、衝突したのは確認しました」


「戦況は?」


「私の見立てでは、トーリ軍が有利に思えました」


「ほお・・・。流石はトーリでおじゃるな」


 一際声が高くなる帝。

 西の雄トーリ軍の強さに、感心しているようだな。

 スマジとトーリだけなら、僕もトーリという連中の方が勝つとは思ったけど、モールマンが居るのに押しているとは思わなかった。



「トーリは勝つと思うでおじゃるか?」


「このまま行けば、勝率は五分以上だと思います」


 凄いな。

 そんなに有利なのか。

 どうしてそんなに強いのかと思っていると、ハクトが僕の疑問を代わりに聞いてくれた。



「トーリ軍というのは、そんなに強いんですか?」


「際立った騎士は居ないけど、統率力や団結力といった意味ではケルメンでトップじゃないかな」


「へえ、流石は騎士王ですね」


 オケツがハクトの疑問に答えてくれた。

 ハクトがオケツを褒めた事で、少しドヤ顔をしている。

 そこで軽くイラッとした僕は、ちょっとした意地悪な質問を思いついた。



「それはボブハガーの部下だったお前達の団結力よりも、上だったのか?」


「えっ!?いや・・・そうですね」


 僕がニヤニヤしていると、オケツは何を言わせたいのか察したらしい。

 ぶっきらぼうな言い方で、答えてくる。



「そりゃあウチ等はダメダメですよ!ハッシマーがお館様に下剋上するし、私には周りからの当たりも強かったし。団結力なんか無いですよ。お館様が居たから、どうにかなっていたんじゃないですかね」


「そこまで酷いと思ってないですよ」


 ちょっと可哀想な気もしてきたから、ここらでやめておこう。

 しかしオケツ、自分でも周りから当たりがキツかったのは自覚してたんだな。

 若くして偉くなると、周りからやっかみがあるのは何処も変わらない。

 そしてボブハガーという、強烈なカリスマが全てをまとめ上げていたというのが、彼の話からよく分かった。



「と、とにかく、今はトーリの強さに期待しましょう。タツザマ殿は、このままヌオチョモ領へ戻られるのか?」


「スマジ殿達が素通りしてくれたので、拙者もこのまま御所で働かせてもらいます」


 ヌオチョモとしてはタツザマを御所へ派遣した事で、最低限の仕事はこなしたと言いたいんだろう。



 だけど僕としてはそんな事よりも、超音波発生器とモールクリンの方が重要だと思う。

 この二つ、モールマンがヌオチョモ領を避けた事で、効果があると証明されたのだ。

 スマジがモールマンの全てを、制御出来ているとは言い切れない。

 それでもヌオチョモ領を避けたのは、そういう意味だろう。



「しばらくはトーリの戦いに期待しよう」


「その間に、東からも騎士が集まるはずでおじゃる。帝国の戦士に魔族の方々、今後ともよろしくお願いするでおじゃる」







 トーリ軍とモールマンの戦いは、拮抗していた。

 一週間が経った頃でも、まだトーリ達を倒しきれていないのだ。

 国全体ではなく、トーリ軍だけでこれだけ戦えている。

 これは孤軍奮闘していると言っても、過言ではないだろう。



「俺、参上!」


「トキド殿!」


「タツザマ殿、何やら新しい力に目覚めたとか?」


「耳が早いですな」


 何処から仕入れたのか分からない、トキドの情報能力。

 東側に居たのにそんな直近の情報を持つなんて、トキドの諜報レベルも馬鹿に出来ない。

 と思ったのも一瞬だった。



「凄かったでござるよ!タツザマ殿が、空を駆けたのでござる。アレはカッコ良かった」


「お前かよ!」


「痛い!どうして殴られたでござるか?」


「他所様の情報を、簡単にベラベラ喋るんじゃありません!」


 まさか、慶次が集まってきた騎士達に話しているとは。

 その姿を見た慶次は、あたかも自分がやったように自慢気に話していたようで、タツザマも満更ではなかったのか見て見ぬフリをしていたらしい。

 情報は武器よ。

 そんな簡単に話しちゃ駄目だって。



「良いな〜。俺も見たかったな〜」


「タケシ殿も一見の価値アリでござる。ここが戦場になれば、すぐに見られるでござるよ」


「良いな!早く見たいな〜。イタッ!沼田、何するんだ!」


「アダダダ!太田殿、何をするでござるか!?」


 コイツ等、不謹慎にも程がある。

 言ってる内容が、トーリが負けて早く来てくれと願っているのと同じじゃないか。

 僕はすぐに太田に頼み、慶次をしばいてもらう事にした。

 するとギュンターも同じ考えだったようで、身体の大きな沼田に羽交い締めにされて、引っ張り出されていこうとしている。

 しかし連れて行かれそうなタケシは、不穏な言葉を口にする。

 それを聞いた皆は、逆に口を閉ざした。



「だってさ〜、トーリももう少ししたらヤバイと思うぜ。そろそろ裏をかかれる頃だと、俺は思うんだよなぁ」


「裏をかかれる?タケシ殿、それは一体?」


「あん?タツザマさん、気付かなかったのか?アイツ等、ヌオチョモ領を避けて山の中に消えたけど、一部の連中は居なくなったままだぞ」


「な、何を言っているのか、ちょ、ちょっと分からないのだが」


 タツザマの動揺が激しい。

 口が回っていないのだが、その動揺は沼田やギュンターも同じだった。



「タケシ!お前、どうしてそれを早く言わなかった!」


「え?皆、気付いてなかったの?」


「あんな大群の中で、一部だけ減ったところで分かるわけないだろう!」


「タケシ殿、詳しく聞かせてもらえるでおじゃるか?」


 神妙な面持ちの帝が現れた事で、空気が張り詰めていく。

 これは作戦見直しも、検討するべきなのか?



「俺達が偵察で、西の方に飛んでいったのは知ってるよな?その時にスマジ領からモールマンが大群を率いて東に侵攻しているのを知った」


「それは私達も聞いたね」


「その後、ヌオチョモ領をモールマンが避けて、山の中に入ってトーリ領へ向かった。でも、山の中から抜けてきたモールマンは、数が少なかった。これも聞いてるよね?」


「聞いてない」


「聞いてないでおじゃる」


「勿論、僕達も聞いてない」


「うん?言い忘れてたかな?」


 まさか、そんな重要情報を聞き逃して、違うな。

 言い忘れた馬鹿が居るとは。



「た、大変です!」


「どうした!?」


 トキドの配下のワイバーン隊が、慌てて部屋へやって来る。

 どうやらワイバーンに乗って、トーリ軍の様子を伺っていたようだ。



「トーリ軍の後方から、空を飛ぶモールマンが出現。挟撃により、トーリ軍はほぼ壊滅です!」


「な、何だとぉ!?」


「ほらな、俺の言った通りだったでしょ?イテッ!だから、何で殴るんだよ」


「お前が早く言ってれば、こんな事にはならなかったかもしれないだろ!」


 ギュンターに鞘に入った剣で、本気で殴られるタケシ。

 これは完全にやらかしだろう。

 しかし、オケツはそうとは捉えていない様子。



「タケシ殿が話していても、関係無かったかもしれない。トーリはプライドが高いから、私達の話なんか聞き流していたんじゃないかな」


「オケツの言う通りでおじゃる。騎士王の命にも従わないような男でおじゃる。素直に聞き入れたとは、到底思えない」


「じゃあ俺のせいではないね」


「それは無いかな」


「報連相は、社会人の基本でおじゃるぞ」


「す、すいません・・・」


 オケツ達に怒られるタケシ。

 自国の人間ではないからか、激怒はしなかったものの、やはり不満はあるようだ。

 そこで帝は、タケシを再び見る。



「タケシ殿はなかなか鋭いでおじゃる。他に気になる点は、なかったでおじゃるか?」


「沼田、下ろして」


 沼田から解放されると、タケシは地図を見てトキドの兵に尋ねた。



「空を飛ぶモールマンって、どれくらいの数が居たか分かる?」


「およそですが、五千くらいかと」


「五千・・・。それは東側から来たの?」


「北ですね」


「北ねぇ」


 タケシは考え込むと、顎に手を当てて地図を見始める。

 その真面目な雰囲気は、さっきまでのお馬鹿な感じとは打って変わっている。

 マスクで表情は見えないけど。



「何が気になってるんだ?」


「まず、数がおかしい」


「数が?増えたのか?」


「違う。俺が見た感じ、二、三万のモールマンが消えたと思っている。まあ二十万近く居たから、見間違いの可能性もあるけど」


 自信は無いと言いつつも、声はそうでもない。

 彼が気になっているのは、その先。

 消えたモールマンが、何処に隠れているかという点だ。



「もしかしてその消えたモールマンは、御所に単独先攻してくるんじゃないのか?」


「トキド殿、それをしても勝ち目が無い事くらいは分かっているんじゃないですか?」


「ウケフジ殿か。頭が悪い奴なら、それもあり得るだろう?」


「頭が良いから、こうやって私達を悩ませるのではないですか」


「確かに」


 遅れてきたウケフジが、咄嗟にトキドの案に反対する。

 トキドも本気で言ったわけではないので、すぐにその案を引っ込めた。

 しかし、何が目的なのだ?



「モールマンが考えてるのか、それともスマジが考えているのか」


「あ、そうか。スマジが考えてる線もあるんだ」


「スマジなら、何を考えるかな?」


 誰も答えずに静かになる中、何故かハクトが小さく手を挙げる。

 皆の視線が集まると、恐る恐る考えを口に出した。



「せ、戦力補強じゃないですかね?」


「戦力補強?そういえば、太刀を持ったモールマンが現れたとか」


「そっちじゃなくて。空を飛ぶ方です。タツザマさんの所で現れたモールマンで、強さが分かったじゃないですか。タツザマさんが活躍して倒せたけど、本腰を入れて増加させるつもりなんじゃないですか?」


「なるほど。しかし、どうやって?」


「それは・・・」


 答えに言い淀むハクト。

 するとトキドの兵が再び現れた。

 しかしそれを見たトキド自身も、予定外だったのかかなり驚いている。



「お、お前がどうして此処に!?」


「殿!至急お戻りを!トキド領へモールマンが侵攻して来ました!狙いはワイバーンです!」


「な、何だとぉぉぉ!!」


 トキドが驚いき騒めいていると、今度は僕の方にも連絡が入った。

 携帯電話に着信である。



「もしもし」







「もしもし、アタシよアタシ。ベティよおぉぉぉん!一応確認しておくわね。モールマンって空を飛ぶの?アタシの所に気持ち悪いのが、沢山押し寄せて来たんだけど。コレは仲間じゃないわよね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ