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レナータと打ち合わせ

 レナータがカイ兄様と呼ばれた高校生の方へ行った。

「誰ですか、あの男の子は」

「レナータ、というか梨音ちゃんの知り合い。前に何度か見たことがあるのを思い出したよ。年上の頼れる人だって言っていたような気がする・・・梨音ちゃんが、だけど」

「なるほどですね。けれど中身がレナータですからね。何かあったんでしょうね」


 ちょっと立ち話をしてレナータが帰って来た。

「もういいの?」

「ええ。後で話をしますって言っておきましたから。今は本屋さんへ行きましょう。準備の打ち合わせが優先ですわ。カイ兄様もアルバイトへ行く途中だそうですし」

 カイ兄様、こと藤田海翔さん。こちらをチラチラと気にしながら飲み物を買って店を出て行った。気のせいかレナータだけじゃなくてナタリーや私もチラ見されていた。


 本屋さんでイタリア地図を買った。

 その後、レナータの・・・というか梨音ちゃんの家に行った。

 久しぶりだね、この家。


 梨音の部屋に上がり、地図を広げて検討に入る。

 お菓子と飲み物は用意済だ。


 地図にレナータがマウリツィオ師匠の意見を聞きながら書き込んでいく。

 イタリア半島は長靴って言われるけど、本当にヒールのあるブーツを履いた足みたいに見える。横向きの左足だ。

 え、右でも左でもシルエットは一緒だって?あ、うん。そうだけど、なんとなく左足って感じがする。いいの、左足で。

 丁度、膝のお皿の部分がローマだ。脛の真ん中あたりがナポリ。太ももの真ん中あたりがフィレンツェ。

「こっちの地図で言うと、ローマあたりから下、東海岸の一帯がカンパニア王国になるわ。スカファーティー領はそのカンパニア王国でも南の方。ルカニア帝国と国境を接している場所ね」

 ふむ。膝から下、脛の部分がカンパニア王国。レナータの産まれた国。靴に当たる部分がルカニア帝国。靴の上の脛の一部がスカファーティー領、ね。

 師匠が前足で地図を指し示す。

「カンパニア王国の北側に位置するのがエトルリア王国ですな」

 太ももの前側半分がエトルリアね。エトルリア王国はマウリツィオ師匠の住んでいた国だね。

「転移する場所はここね」

 太ももの丁度中心くらい。東海岸にも西海岸にも丁度同じくらい遠い真ん中だった。

「まずは海岸線を目指すべきね。安全が確保しやすいルートを優先したいわね」

「同意いたします。ですが、道のあるルートで考えますと、死の森から南西へ進み、しばらく後に海岸線に出るべく西へ進路を変更いたしましょう」

 レナータが次々にマジックで地図に線を入れていく。黒い太い線は道だ。覚えている限りの道をレナータがマウリツィオ師匠と書き込んでいく。あ、書き込んでいるのはレナータだけだけどね。

「レナータ、質問してもいいですか?」

「ええ、ナタリー」

「この道は馬車が通れますか?」

「通れるわ。今、マジックで書きこんでいる道路は全て馬車道よ。徒歩でのみ通行出来るルートは他にもあるけれど、そういうのは地元民しか知らないものなのよ」

「道路の整備状態はどうかしら?」

「まずまずといったところね。カンパニア王国は他の諸国に比べて最大の勢力を誇るわ。整備状態は良いと思っていいわ。エトルリアも海岸線沿いはいいわね。死の森に近いあたりはどうしても整備の手が遅れがちになるだろうけど」

「そうですな。馬車を使うにしても修理するための道具は必要ですな。それと修理技術ですか」

 修理かあ・・・そうだよね。馬車壊れるよね。馬のエサも必要だし・・・というか馬を操るのも難しそう。レナータは出来そうだけど・・・あ、ナタリーちゃんもやり方は知ってそう。

「馬車の手配はナタリーに任せてください。頑丈なやつを手に入れるから」

「ええ、悪いけどお願いね」


 途中、お昼ご飯を挟み、夕方まで話し合いを続けたよ。必要なもの、その手配、ルートの検討、役割分担・・・等々。

 で、必要なものはほとんどナタリーちゃんが用意することになった。


 実際、私はほぼ無力だし、師匠はもっと無力。レナータはいくらかの資金はあるようだけど・・・。ある程度、自分の身の回りの物、靴とか服とか、アウトドア用のしっかりした装備に使う感じかな。私も魔法バイトで貯めたお金で服を買い足すつもり。


「荷物はアイテムボックスで預かれますから、制限なく持ってきて良いですよ。ただ整理が大変なのでまとめてくださいね」

「わかったわ」

「うん、わかった」

「マウリツィオは・・・用意するものなどありませんので・・・」

 うん、大丈夫だよ、師匠。師匠のミルクは私が用意するよ。実際、師匠は半精霊みたいな状態の猫だから、一日に一回くらいのミルクで全然大丈夫みたいなんだけど・・・


 出発は2週間後を予定。


 本当はもっと準備期間を取りたかったのだけど、レナータにも事情があった。


「この世界に転移通路が繋がった時、私が調査に出たのね。それで、自分の世界だと確信を持った。世界感や、廃村みたいな村での聞き取り、魔法の出現の仕方なんか、ね。でもそのことを報告はしていないの。魔物の森の真ん中へ繋がってしまったから、使えない転移通路だと、報告したのよ」

「それはなんのために?」

「決まってるわ。私の世界だということがバレないためによ。あの世界は、こちらの日本の世界に近い。近いのに魔法文明の世界なの。そのことは、彼らにとっては重要なことなのよ。きっと彼らは、私達の世界に乗り込もうとするはず。それが世界にどんなダメージを及ぼすかわからないわ。それに、私の目的は、元の体に戻ること。それもリスクが高いって理由で阻止してくるに違いない」

「そこまでするんだ・・・」

「今のところ、私が乱発した魔法で繋がっている世界の調査に人手を使っているから、調査が困難な私達の世界には興味を失っていてくれている。でも、それがいつまで続くのかわからない。出来るだけ早く元の体に戻って、梨音に・・・都代と梨音に、通路を破壊して欲しい」

「レナータ・・・」

 レナータは、自分の意思で日本に来たわけじゃないもんね・・・。そうだよね、戻りたいと思うよね。うん、その願い、かなえてあげなくちゃ。

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