ナタリーちゃんの提案
私もマウリツィオ師匠も黙ってしまった。
体力か・・・確かに15キロならなんとかなるかもしれない。それだって荷物が無い身軽な状態なら、だけど。でも、その先500キロを旅することを考えたら、手ぶらで済むはずがない。テントや食料だけでも大きな荷物だ。それを背負った状態で、いくら魔法中心の戦闘といっても、魔物相手に生き延びられるのだろうか。
そして移動の問題。
どうやってその先を進めばいいのか。
その時、ナタリーちゃんが手を挙げた。
「皆さん、提案があります」
「え?なあにナタリーちゃん」
「はい、ナターリエさん。提案と言いますと?」
「ナタリーちゃん・・・」
「私、ナターリエ・フォン・シュッテルヴァイスビンゲンは、アイテムボックスが使えます」
あ!と思った。そうだった。ナタリーちゃんは熊の魔物を収納できるアイテムボックスの魔法が使えたんだった。なんだかんだ言って、ナタリーちゃんはチートな転生者だったんだ。
「それと、レイスやファントムなら任せてください。足止めさえしてもえらえれば、私なら完全浄化の聖魔法が使えますので」
「す、すごいわね。ナターリエさん・・・確かに少し有利なるわ。荷物を持たなくてよいだけで最初の死の森突破の危険度が減少するわ。でも、その後は?いくら手ぶらでも、馬車を手に入れられるところまで辿り着けるとは思えない」
「レナータさん。馬車が手に入らないなら、持っていけばいいのですよ」
「え?今、なんて言ったの?」
「持っていけばいいじゃないですか。私のアイテムボックス、たぶん容量無限大ですから」
「まじで・・・?ナタリーちゃん、私が思っていたより、だいぶチートだね?」
「ふふ。そうですよ、都代ちゃん。冒険者の装備もお任せください。ちょうど鉄の街に滞在していたのです。剣や武器を用意します。それと資金ですね。金塊で用意して、こちらの日本で換金しましょう。それで必要なものを買うのです」
「しかし、それではあまりにも・・・」
レナータさんが慌てていた。慌てるレナータさんは初めてかもしんない。
「もちろん無償提供ではありません。装備や旅に関わるものについてはスカファーティー領にて清算してくださいね。金塊、もしくは金貨での支払いを要求します。それと最初に言った異世界通路の転移の部屋を使う許可、です」
「も、もちろん。無事にスカファーティー領に着いたらお支払いすることをお約束いたしますわ。正式な契約書を作っても構いませんわ。もしもナターリエ様のお力がお言葉通りだったのなら、それは神の導きでしょう。感謝いたします」
「交渉成立ですね。それでは具体的な検討に入りましょう。死の森の話を聞かせてください。それと出来るだけ正確な地図を作りましょう。地形が近いなら日本で売っている白地図が役に立ちますかね?話し合いの結果から必要なものを検討しましょう」
ナタリーちゃんが立ち上がった。
「さっそく行動いたしましょう。本屋さんへ行きましょう。パソコンから地図を印刷する手もありますが、印刷だと水でにじんでしまいます。本屋さんの地図は雨に強いですから」
「え、ええ。ナターリエ様・・・おねがいいたします・・・」
「レナータさん、ナタリーでいいですよ」
「そ、そうですか。じゃあ私のこともレナータとお呼びください。見かけと違って、私よりも年上の方でしょう?」
「ええ。48歳プラス6歳ですからね、レナータ」
「そうでしたのね、ナタリー」
お、なんか急に親密さが増したよ。
「いいな、私も仲間に入れて欲しいよ」
「都代、と呼ぶことにしましょうか?これからはパーティーメンバーですからね。いつまでもチャン付けも変ですから」
「うん、いいね、そうしよう!ナタリー、レナータ!」
「じゃあ行きましょう、都代」
「パーティー結成ね、都代」
なんかテンションあがるー!
公園の東屋を出て、コンビニまで戻ってきた。飲み物を買い足すために店に入った。
「レナータはコーラ?」
「もちろんですわ。手に入る日は毎日買っていますの。ナタリーは何がよろしくて?今度は私が奢りますわよ」
「じゃあレモンスカッシュにしようかな。都代は?」
「私は紅茶で。師匠は?ミルクでいい?」
「ええ、ありがとう」
女の子3人プラス黒猫でコンビニの中で盛り上がった。
いやなにこれ、楽しいじゃん。
レジの男の人がこっちを見ていた。たぶん大学生ぐらいのアルバイトかな。なんか騒いでいるのを咎めるというよりも、何か珍しいものでも見るような顔をしている。他のお客さんも、こちらをチラチラと見ていた。
うん、私はともかく、この二人は目立つよね。レナータはギリギリ日本人と言っても通用するけど、ナタリーちゃんは長く伸ばした金髪だしね。サラサラと肩を流れているよ。有り得ないくらいサラサラ。日本のシャンプーで洗っているから、いつもにも増してサラサラ。そしてエメラルドグリーンの瞳。
うん、ナタリーちゃんの破壊力、半端ない。
と、思っていたら声を掛けられたよ。
「梨音・・・?」
え?
男の子の声に私が振り向いた。高校生くらいの男子が驚いた顔でこちらを見ていた。
「・・・カイ兄様・・・」
レナータが気まずそうに男の子の名前を呼んだよ。あれ、まずかった?




