ナタリーちゃんの秘密
異世界通路から目印の大木、小川を辿って橋へ。
何気に遠いよね、毎回。
前回は書かなかったけど、実は魔物も出るんだよ。最初の時は2頭だっけ?道に出るまでは豚の魔物が1頭出ただけだっけ。道に出てからヘルハウンドと戦ったっけ。前回も1頭出たし。
今回は、転移の部屋を出たところでウサギの魔物に出会った。
ひょっとしたら襲ってはこなかったかもしれないけど、私はアイスニードルを使って仕留めたよ。
うん、師匠にコントロールしてもらいながら、感覚を掴んだから。見様見真似ってやつ?自分で練習するよりも全然上達早いね。師匠様々だね。
橋のところで、ナタリーちゃんの馬車が見えた。
待っていたらしい。
「やっほー、来たよ」
「お待ちしてました、都代ちゃん」
ナタリーちゃんの乳母と護衛の人が一緒に降りてくる。乳母が私に何か言って、深々と頭を下げた。
「三日間、よろしく、と申しています」
「うん、こちらこそ。まあ、日本に着いちゃえば危険なんて無いしね」
「日本も言うほど安全ではないですよ。特に幼い子供にとっては」
「でも、それは普通の子供の話でしょ?私達、普通の子供じゃないから」
それで、また来た道を戻る。
ナタリーちゃんが一緒だから、あんまり魔物には出てきてほしく無かったけど、熊の魔物が現れたよ。
「げ、強そう」
「都代ちゃん、体借りますよ」
「はーい」
「え?マウリツィオさん?」
ナタリーちゃんがびっくりしていたよ。
「アイスフィールド!」
氷の塊が周囲にたくさん浮かび上がる。ナタリーちゃんを守るため、立ち位置は変えない。
「アイスニードル、バースト!」
氷の塊が形を変えて棘状になる。それを20メートルくらい先の熊の魔物に向かって三連射で撃ち出した。
マウリツィオ師匠が日本の銃器の雑誌で覚えた「三点バースト」を魔法で再現したものだよ。えーと、三点バーストは一回引き金を引くと、3発が「パパパン」と撃ち出されるマシンガンのことらしいよ。
アイスニードル、バーストは、それと同じように、三発づつ、目標に向かって飛んでいくんだ。微妙に角度が違うので、的に当たりやすくなる。
熊の魔物、ブラックムーンベアは、アイスビードルの斉射を喰らって足を止めた。
けど、グワーッと叫び、こちらへ突進を始めた。
「アイスニードル、フルオート!!」
残りのアイスニードルが連続で撃ち出されていく。パパパパパパ・・・と効果音付きだ。
熊にアイスニードルが当たる。連続して撃ち込まれる。熊は衝撃でダンスをしているように体を揺するが、倒れない。
「ふむ、弾が小さい、か。うむ、9mm程度の威力だからな」
最近、師匠はガン関係の雑誌を読むのが好きらしく、魔法をピストルの弾の威力で表現するんだよ。
でも、全然っわかんないっ。
「アイスフィールド!」
再び、動き出したブラックムーンベア。再び氷の塊を周囲に作りだす私、というかマウリツィオ師匠。
「アイスニードル、50AE!」
「なんですか、その魔法!」
ナタリーちゃんが笑いを堪えるような声で叫んだ。へえ、わかるんだ、ナタリーちゃん。
さっきより一回りでかいアイスニードルが形作られ、ダン!という低音を発して撃ち出された。
歩き出していた熊の真ん中に撃ち込まれた。ドン、という衝撃音で熊の歩みが止まる。信じられないものでも見たような目でこちらを見た。
「50AE!50AE!」
「言いにくくないですか、その魔法」
いちおう魔物に襲われているのだけど、ナタリーちゃんは冷静だなあ・・・。
あ、熊、倒れた。
「ユーハブコントロール、都代ちゃん」
疲れた声で師匠が言った。
「アイハブ」
「・・・それ、突っ込むところでしょうか?」
「いえ、突っ込まなくていいです。師匠の趣味なんです」
ブラックムーンベアは、間近で見るとデカかった。
「うわあ、身長3メートルくらいあるよお!」
「大きいですね、どうするんですか、これ」
「うーん、持ち帰れないし、焼いてしまうよ」
「えー、もったいない。帰って来た時に支払いますから、私に譲ってもらえませんか?」
「え?いいけど、どうやって運ぶの、こんなの」
「え?ああ、言ってませんでしたっけ?アイテムボックスで運びますよ?」
「は?」
ナタリーちゃん、やっぱチートだった。
この世界に魔法はある。
けれど、魔法文明というほど発達はしていない。
それから、梨音、というかレナータちゃんの世界みたいにエネルギー転移型魔法というわけでもなくて、もっとファンタジー的に説明不能な感じで発動するらしい。
それで、ナタリーちゃんは聖魔法が使えるんだとか。
「聖魔法?」
「そうですよ。聖なる力で穢れたものを浄化する力です。魔物の魔の部分を浄化します。攻撃的な魔物も、元はといえば野生の普通の動物ですから。浄化してしまえば元の動物に戻ります」
「魔物として侵食されていた場合は・・・?」
「そういう場合は浄化した場合、死んでしまいますね」
「なるほど」
「ただ、私の魔法は近接発動なので・・・最低でも5メートル以内、30秒くらい必要です」
「襲われてしまいますがな」
師匠が突っ込みを入れた。
「ええ、ですので、あくまで補助でしか役に立ちません」
そう言うと倒れていたブラックムーンベアに向かって呪文を唱え始めた。
「はい、これで魔物では無い素材の熊です」
そう言って、左手を翳す。
「アイテムボックス、収納」
さっと熊が消えた。あのデカい!熊が!
「うわあ・・・すごい」
「便利でしょ?」
「私も欲しいなあ・・・」
「教えられるんですかね、これ。今まで、誰も使えなかったですけど」
アイテムボックスかあ・・・。憧れのスキルだよねえ、やっぱり。




