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魔法でバイトをするよ

昨日は疲労でお休みしてしまいました。

 魔法でバイト、二つ目は魔物の討伐だった。


 ほら、冒険者ギルドで中級冒険者向けに貼り出されているアレですよ、アレ。


 日本に魔物なんていないだろうって?


 うん、いないと思ってたよ、私も。でも、ある意味でマウリツィオ師匠も魔物みたいなもんだしねえ・・・

 今回も師匠の引率の元、自転車で、魔物が出現するというスポットへ出向くことになった、ある土曜の午後である。


「それで、あれがターゲットの魔物?」

 郊外の空き地だった。正しくは、郊外からさらに森に入り、林業関係の人たちの資材置き場になっているのだろう広場というか空き地があった。そこに、そいつはいた。灰色の犬の皮を被って・・・。

「ヘルハウンドの一種です。このあたりは何故か魔素の濃度が高く・・・捨て犬なんかが影響を受けて魔物化するようです」


 折湊市は原発関連で発展した街だ。都市的な施設は駅周辺に集まり、郊外に向かうにつれ住宅地になっていく。その規模は人口十数万人。住宅地は森を切り開いて作られていく。

 この街は、自然を切り開いて作られている。

 だから、人の目を避けようとすれば、こうやって郊外から外へ出てしまえばいい。


 マウリツィオと二人。

 対峙する大きな犬の魔物。地面から頭の高さまでで1メートル以上。普通に大型犬として見るサイズの二倍くらいあるように見える。数十メートルの距離を取っているけれど。

 灰色の毛がボサボサと伸び放題。

 そして、目は・・・真っ黒で何処を見ているのかわからない虚ろさがあった。


 けど、デカい犬・・・だよね?魔物なのかな?


「それで、マウリツィオ師匠。わたしはどうすればいいんでしょうか?」

 胸に師匠を抱いたまま尋ねる。

「都代ちゃん、ファイヤーボールを撃ってください」

 言われるままに都代は手の上でファイヤーボール(ソフトボールくらいの大きさ)を作成する。もっと大きいものも作れるけれど、一発撃つと、かなり魔法力を消費するので、次弾が撃てなくなる。一発で倒せるかどうかわからないのだから無理はしない。


「ファイヤーボール!」


 マウリツィオ師匠も断言しているし、あれは魔物でFAだ。

 都代は作成したファイヤーボールを水平に打ち出した。

 ビュンっと音を立てて炎が飛ぶ。

 ヘルハウンドは、その光景を見ながら危機感もなくキョトンと、こちらを見ていた。


 ファイヤーボールは、ヘルハウンドの前足に当たった!

 ヒュウっと飛んで、パーン、と軽い音で弾ける。

 前足を炎で包み込んだ。

 ヘルハウンドは慌てた様子で、前足を振り、炎から逃れようとする。

「ワオーンッ」

 だけれど、そこは魔法なので、振っても逃げても炎は消えなかった。


 燃え盛る炎にのたうち回って逃げようとしていたヘルハウンドだったけれど、逃れられないことを悟ったのか、動きを止めた。


「観念した?」

 炎に焼かれたまま、その魔犬は顔をひねっていく。

 都代と目があった・・・


 直後、ヘルハウンドは地面を蹴ってこちらへ突撃を開始した。

「きゃあ!」

 都代は慌ててその場から逃げ出そうとする。

「都代ちゃん!逃げずに次弾を、早く!」

 師匠の言葉に、はっと我に返った。

「ファイヤー・・・ボール!」

 二発目は貯めもしないで作成直後にヘルハウンドへ向かって撃ち出した。もう10メートルくらいの位置まで到達していた。

 そしてヘルハウンドは私に襲いかからん、と跳躍をし・・・ようとしたが片足を炎につつまれていることで威力半減。ジャンプしたのはほんの数メートルの高さだった。それでも、私の目線の上だ。

 撃ち出したファイヤーボールは私の意思に従うように空中で軌道を変え、ヘルハウンドを追って上昇し、そして頭を炎で包み込んだ。


 ギリギリ間に合った。


 炎に包まれたヘルハウンドは動きを止め、空中から落下した。

 それは私の目の前、すぐのところに「ズシン!」と落ちて横たわった。


 いや、ヤバすぎるでしょ、これ。


「マウリツィオ師匠・・・」

「うん、危なかったね。一発で倒せると、計算違いをしてました・・・」

「・・・」

 つまり、全力のファイヤーボールで攻撃しておけば良かった、と・・・


 黒焦げになったヘルハウンドを見下ろし、私は握りしめていた手をそっと広げた。手のひらに自分で突き立てていた爪の跡がくっきりと残っていた。


「ふうう」


 息を吐いて呼吸を整えた。

 微妙に焦げた肉の匂いがしたけれど。

※マウリツィオ先生→マウリツィオ師匠 に修正しました。

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