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魔法を使ったバイト、始めます。

しばらくは都代視点です。


とある線路近くの家。

住んでいるのはおばあちゃんが一人暮らし。


マウリツィオ師匠に連れられて、その家の前までやってきた。

 

 しばらく待っていると、おばあさんが買い物袋を下げて帰って来た。その顔色は悪く、ふらふらしていた。

「どうしたんですか?大丈夫ですか?」

 師匠に声を掛けろって言われたので、声を掛けた。けど、心配になるくらい顔色が悪かったよ。

「え?大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

 そう言って家に入ろうとしたおばあさんが、私が抱えていたマウリツィオ師匠に目を止めた。

「あら・・・?あなたクロじゃないの?」

 そう言われてマウリツィオ師匠は、にゃあ、と返事をする。猫の真似、うまいなぁ、と心底感心したよ。

「クロが心配して連れてきたのね?・・・そうだったの・・・」

 それから家に上げてもらって、おばあさんの事情を聞いた。

 おばあさんのいうクロ=マウリツィオ師匠は、おばあさんの家に以前、よく行っていたらしい。

 おばあさんは猫好きで、おじいさんが亡くなった後、近所の猫を世話して、よく餌をあげていたんだって。その中で、クロは人懐っこくて、まるで話を理解しているように相槌を打つから、ついついいろいろ話をしたんだって。

 昼間、師匠が何処に行ってるのかと思っていたけど、こうやってあちこちに顔を出していたんだね?

 なるほど。


 それで、亡くなったおじいさんの話や、近所の猫の話を聞いていたんだけど、そのうち、奥の部屋で物音がしたんだ。

「あれ?」

 私がおばあさんを見ると、おばあさんは明らかに恐怖の宿った目をしていた。

「一人暮らしって言ってましたよね?」

 と聞くと「そうなんだけど・・・」と震える声で。

「ひょっとして、あれが幽霊・・・ですか?」

 私が、そう尋ねると、おばあさんは驚いた顔で私を見たよ。


 まあ、そりゃそうだよね。猫の紹介でやってきた女子中学生が、知ってるはずのない幽霊の話をするんだから。


「実は、この黒猫、名前をマウリツィオと言いまして・・・時々、私を幽霊関係で困っている人のところに引っ張っていくんです。そこでお化け退治をさせられていまして・・・」

「え?えー?」

 そりゃ驚くよね、というか、嘘くさいよね?自分でもそう思ったもの。でも、本当に困っている人は、そういう胡散臭い話でも信じちゃうんだね・・・。

「あの、奥の部屋、見ましょうか?」

って言ったら、あっさり「お願いします」って言われちゃったよ。


 私、霊感は無い方と思っていたんだけど・・・。


 魔法を習得したことで、マウリツィオ師匠と話せるようになった。それで、師匠を抱っこしている間だけ、悪霊が見えるようになったの。


 悪霊だけね。


 これはね、どうやら「レイス」とか「ファントム」の類に近い存在だけが「魔物」として見えるようになったため、らしい。

 それも、マウリツィオ師匠にくっついていないと見えない。なので、日常生活で見ることも無かったのだけどね・・・。


 奥の部屋で見たのは、ボロ雑巾のような黒いコートの男だった。

 家の裏の線路で電車に轢かれたんだろうな、とすぐに想像出来た。

 ・・・めちゃくちゃ怖かった。


「しばらく前に・・・線路で事故がありませんでしたか?男性で、黒いコートを着ている・・・」


 おばあさんは、冷や汗びっしょりの私に「見えるの?」と聞き返して来たので「見えてます」と答えた。それでおばあさんは、声にならない悲鳴を上げたよ。

 私も悲鳴をあげたいところだったけど、マウリツィオ師匠が「にゃあ(じゃあ、雷撃魔法ね。サンダースタンを幽霊の中心あたりへ)」


 ごくっと、唾を飲み込んで、わたしは「サンダースタン」と小さな声で唱えた。


 バチっと小さな火花が黒いコートの奥で弾けた。

 よく見ると、黒いコートの男は透けていた。火花がはじけた瞬間、そいつはまるで電気に撃たれたように(あ、本当に撃たれたんだけど)痙攣するように震えてより薄くなったように見えた。


「にゃーう(繰り返し撃って。たぶん都代ちゃんの魔法の威力なら5発くらいで消えると思いますよ)」


「サンダースタン・・・連射!」

 小さな声でそう言うと、雷撃を何発か幽霊に叩き込む。

 

 そのうち、黒いコートの男は見えなくなった。

「消えた・・・?」

「にゃーお(一時的にはね。強い地縛霊なら数か月で復活してしまうと思いますけど。聖属性魔法で完全に浄化したわけではないですからね。まあ、一月に一回、ぼんやり浮かんできたあたりで雷撃しておけば悪さも出来ないでしょう)」


 そんな感じで、お化け退治をしてきた。

 毎月、様子を見に来るから、とおばあさんの家を出た時に、おばあさんが「お礼に」とお小遣いをくれた。


 5千円札だった。


 いや、一度は断ったよ?

 でも、ほら、気持ちだからーって言うし。


 うん、最終的には貰うつもりだったけれど。

そういうわけで、魔法を使ったバイト、始めました。

梨音の話に戻るのは、何話か後になると思います。

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