Ersatz Persönlichkeit Gemeinschaft (後編)
梨音に選択肢は無かった。
現代兵器の威力について具体的に何を知っているわけでもない。梨音は兵器マニアじゃないからね。
けれど、テレビの戦争報道で戦闘シーンのニュースは見たことがある。梨音の記憶に過ぎないけれど。映画でも銃や戦車、戦闘機、ミサイル、爆弾・・・梨音の魔法がどれほど優れていようとも、その物量や破壊力に勝てるとは思えなかった。
では逃げるか?
働ける年齢にも達していない少女が、いったいどうやって暮らしていけばいいというのだろうか。所持金は、たったの数百円である。1日と持たない。
非合法の方法もあるが・・・
魔法を使えば金を手に入れることは難しくは無い。手段を選ばないのであれば。
でもそれは、追っ手を増やすことなるし、非合法な手段を取ればいつかは戦闘になる。
選択肢は無い。
EPG直轄組織、折湊監視制御システム室、主任、倉本雅臣。そして「調査チーム」リーダー高倉。
EPGは決して無理矢理に連れ去ったりはしない。日本国籍を持つ転生者ならなおさらだ。本人の同意の元に、契約をした上で、施設へお連れし、協力をしてもらう。
つまり、そういうことだ。
現代日本において、攻撃魔法の使い手なんていうものは・・・金属探知機にも引っかからない大量殺りく兵器みたいなものだ。
兵器には、それを正しく扱うものが必要なのだ。
「お父様」
「その呼び名は・・・」
「お父様は、お父様です。もとより血縁関係は無いのでしょう?今でも戸籍上は私はあなたの娘であるはずです」
雅臣はため息を、それと気取られないようゆっくりと、吐き出した。
「いいでしょう。おっしゃる通りです、レナータさん。ですが、私はあなたを梨音とは呼びません。妻との約束がありますから」
「ママ・・・お母様にはなんと仰ったのですか?」
「その話は・・・また後にしよう」
「・・・いいでしょう。それで、私は何をすればいいのですか?」
「まずは車に乗って移動してもらいましょう。そう遠くは無い。ある施設へ行きます。そこでEPGメンバーに会ってもらいたい」
「わかりました。行きましょう。ですが、一つ確認したいことがあります」
「なんですか?」
「私は・・・元の世界へ帰れますか?」
雅臣はじっと目を見つめた。真意を計ろうとしているようだ。
「・・・わかりません。EPGは研究を進めています。意図的な異世界転移は、まだ成功していない。転生の方は何例かは・・・。そのあたりもメンバーと話してください。私はあくまでこちら側の人間です。魔法に詳しくは無い」
「私は、私のいた世界へ戻りたい。おそらく私の意識と入れ替わりに向こうへ行った梨音の意識と、もう一度入れ替わりをしたい、と思っています」
「・・・」
「一緒に行くことは構いません。けれど協力するかどうかは保留としてください」
「いいでしょう。私もあなたの攻撃魔法の素晴らしさは見ましたが、あなたが何処から来た、どういう人物なのかは全く知りません。お互いに、まずは知り合うところから、と言うことです」




