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Ersatz Persönlichkeit Gemeinschaft(前編)

 倉本雅臣は両手を上に向けて差し出した。

「武器は持っていません。強制するつもりもありません。我々の目的はあなたのような異世界人格を持つ方の保護と、この社会への適合を手助けすることです」

 雅臣は説明する。その話し方は誠意のあるもので人を安心させるものだった。

 EPG。

 Ersatz Persönlichkeit Gemeinschaftの頭文字だという。直訳すれば「交換人格共同体」となる。

「何語ですか?」

「ドイツ語ですよ」

「どうしてドイツ語なのです?」

 雅臣は肩を竦めた。

「転生者にはドイツ系の方が多いんですよ。元々は異世界から転移してきたある人物が、こちらで生活するにあたって仲間を集めるために作った組織です」

「その方のお名前は?お聞きしてもよろしいですか?」

「ルブレヒト・フォン・ルードヴィッヒ。20年前ほど前に異世界から転移でいらっしゃった方です」

 現在、EPGには50名弱の名前があり、その8割ほどが男性である。

「男性が多いのですね」

「こちらでも一人でも多くの転移者、転生者を保護したいと思っておりますが、公開募集するわけにもいきません。異世界の女性の方は、あまり目立つ行動をされない方が多いようで、把握が出来ておりません」

「目立つ行動、というのは?」

「魔法の行使、です」

 ああ、と梨音は納得する。それで私は見つかったわけですか。

「魔法は監視されているのですね?」

「ええ。我々のメンバーには大規模魔法を感じ取る能力のある方が何名かいます。主に転移や転生が魔法で行われた場合にはお知らせいただいています。それと各地に磁場センサーを始めとした魔法監視装置の設置を進めています。自動でデータ収集を行い、より小規模な魔法の行使を感知出来ます。とはいえ、空間に歪みが出るほどの規模の魔法でないと感知できませんけど」

 大規模な転移、転生の魔法が感知されるのは年に1度くらい。偶発的な空間の歪みや異世界での召喚による弊害などによる転移はもっと頻度が多いようだが全てが把握できるわけではない、といったところ。魔法の感知にしても同じで、バスケットボール程度のファイヤーボールを撃ったぐらいでは感知は出来ない。魔法そのものを感知する技術は、今のところなく、あくまで魔法の行使による空間の歪みを計測しているからだ。

「倉本梨音さん・・・いや、本当のお名前をお聞かせ願えますか?」

「・・・レナータ」

「レナータさん。失礼ながら我々は、本日早朝よりレナータさんの監視を行ってきました。本日の魔法行使は3度。自転車に乗りながらの風属性魔法が2度。そして先ほどの雷属性魔法の行使が1度」

 そこで雅臣は大きく息を吸う。気持ちを落ち着かせているようにも見えた。

「正直に申します。私は恐ろしく思いました」

「恐ろしい・・・?」

「ええ。レナータさん、気付いていませんか?あなたの魔法は破壊力があり過ぎます。私は今日、あなたの魔法を直接見ました。あの落雷です。もしもあれが、人に向けて行使されたら、と考えたら震えが止まりません」

「・・・いたしませんわ」

「そうお願いいたしたいですね。そして可能なら、あなたの意思で、我々にご協力いただきたいと存じます」

「・・・断ったら・・・?」

梨音は無表情に聞き返した。雅臣の言葉に嘘は感じられない。けれど語られていないことも多そうだ。

「あなたは警察に逮捕されます」

「どうして?どういう罪で?」

「原子力施設への不法侵入、もしくは危険行為、なんでもいいでしょう。罪に問うことが目的ではありませんから。身柄の確保さえ出来れば」

「出来ると思いますか?」

雅臣は首を振った。

「出来ないでしょうね、あなたが本気で逃げようとするのなら。・・・でも、そうしてしまえば、あなたは誰かを傷つけることになる。警官か、我々のメンバーか・・・。そのことがあなたを拘束する新たな口実となる。より多くの人員があなたを追うでしょう。あなたの魔法に対抗できる武器の使用も許可されるかもしれません」

「・・・」

「それでも抵抗するのなら、あなたはこの国を敵に回すことになるでしょう。いくらあなたの魔法が強力でも、現代兵器の前には無力ですよ」

 雅臣は梨音の反応を見る。梨音は黙っていた。

「それに、我々と一緒に来ることを断って何処へ行くのです?あなたの家は、いえ、血縁上の母親には事情を説明済です。今日、帰る家はありません」

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