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魔法と図書室

 翌日からの数日は平和に過ぎて行った。


 少なくとも表面的には。


 都代とマウリツィオは一緒に登校してきた。放課後は河川敷で魔法の練習。都代の魔法は目に見えて上達していた。

 といっても、火魔法でピンポン玉くらいのファイヤーボールを歩くくらいのスピードで不安定に打ち出すことが出来るようになった、くらいだ。

 青白い炎の塊が、ゆらゆらと揺れ動きながら十メートルくらい浮遊する、といった感じだ。


 織深川の河口に近い河川敷で人魂が飛ぶのを見た、という怪談がネットで話題になるのは、それから数か月後のことである。


 一方、梨音の方は放課後は図書室で過ごした。

 火や風の魔法も、科学的な知識をもって行う方が効率が良いようだ、と梨音は気付いていた。知らなくても操れる、けれど、知っていれば効率が上がる、というわけだ。

 例えば火魔法は、温度のエネルギー転移だ。

 具体的には熱を転移して集めることで高温を作り出し炎として可視化する。

炎の色から推定されるファイヤーボールの温度は約800度だ、と梨音は図書室で得た知識で知った。ファイヤーボールは赤っぽいオレンジだ。

一方で上級火属性攻撃魔法のフレイム系は黄色から白っぽい炎を発する。推定温度は千度以上。

具体的な温度の違いがわかれば、必要な魔法力が計算出来る。

今までは感覚で操っていた魔法が、具体的な数字で把握出来た。梨音の感覚においてはフレイム系の魔法はファイヤー系の倍くらいの魔法力を消耗している感じがしていた。

けれど、温度差は200度だ。

それならもう少し魔法力は抑えても生成できるはずだ。

つまり梨音の上級魔法は、それだけ無駄が多かったというわけだ。


風魔法については、気象関係の本が役に立ちそうだ。

風属性魔法は、火魔法以上に単純な魔法だった。空気の流れをエネルギーとして変換し、束にして攻撃をする。

それゆえに少しでも強い風が吹いている場所を知っているということは、発動する魔法の威力に直結する。上空を見て、雲の様子や地表付近の風の状態を考慮に入れていくとどういった魔法が最適なのかがわかるようになりそうだ。


そんな感じで梨音は図書室に通い詰め。


そうして土曜の朝はやってきた。


いつも通り時間に起きる梨音。

キッチンに入っていくと、父親と母親の両方が席についていた。

「あら梨音。土曜なのに朝が早いわね」

「おはようございます、お母様。本日はカイ兄様とお約束がありますから」

「そうなの。けれど勉強もするのよ?遊んでばかりでは成績が落ちてしまうんだから。せっかくやる気になってきたようだし、ここは是非とも上位を目指して頑張ってもらいたいって思ってるのよ」

「善処いたしますわ」

 そんな会話をして土曜の朝は始まった。

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