表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/195

魔法アシスト自転車

 倉庫から自転車を引き出す。

 梨音のオシャレ自転車だ。

 マウリツィオは都代の所に行っているのでバスケットにはお昼ご飯のオニギリの入ったバッグを入れる。


 海翔カイトとはコンビニで待ち合わせていた。

 梨音はコーラを一本買う。


 プシュッ!

 キャップを開けると一口。

「くーぅ!やっぱりこれですわね」

 口調は令嬢を保っているけれど、性格は少しづつ変化していた。国境警備隊長の頃の荒くれ達と過ごした数年間。12年分の梨音としての記憶。

 微妙におっさんっぽい性格に振れていくのはなんでだろうね?


「おはよう、梨音」

「おはようございます、カイ兄様」

「急に日程を変えてごめんね?バイトのシフト、変わってくれって頼まれちゃって」

 微笑みながら梨音はゆっくりと首を振る。

「いいえ、構いませんわ。私も用事はありませんでしたし」

 そこで梨音は海翔の傍らにある自転車に気付いた。梨音の記憶と、図書室で見た雑誌を思い出す。

「あら?カイ兄様の自転車、これはロードバイクというものですか?」

 海翔がにやりとする。

「そう。買ったばかりの、ね。ビアンキっていうんだ」

「ビアンキ・・・屋敷の植木職人と同じ名前です・・・わね」

 レナータの故郷は異世界のイタリア辺り、名前が被っていても仕方がない・・・。

「え?植木職人?」

「いえ、なんでもありません。それよりカイ兄様。とても軽そうで速そうに見えます」

「うん。速いよ。けど今日は梨音に合わせて走るから大丈夫」


 先週の金曜日。

 海翔と自転車で出かける約束をした梨音。

 約束は日曜だったけれど、今週になって海翔から電話があり、土曜に変更になった。バイトの都合だ。

 海翔のロードバイクは、そのバイト代で買ったものだ。とても軽量でスピードが出る。

 

 最初の目的地は海の近く。

 

 折湊市は海辺の街だ。

 原発の開発によって切り開かれた歴史の浅い街だ。

 はっきり言って、海以外に見るべき観光スポットは無い。

 だから、何処か行こう、となると、誰もが海を目指す。

 それしかないから、ね。


 けれど、今日の目的地は海ではない。

 梨音が行きたがった場所、それは原子力発電所の広報館。


 広報館は、原子力発電所の仕組みや施設の案内をわかりやすく解説している資料館のことだ。地域住民の理解と協力を得るための一助として運営されている。

 ちなみに入館は無料だ。


 このところ雷属性魔法にご執心の梨音は、発電所にも興味を持ったわけだ。

 

 電話で海翔が行きたいところを聞いてきたとき、梨音は真っ先に発電所、と答えた。

 けれど、発電所内に立ち入れるわけでもないので、海翔は広報館はどうか?と提案したのだ。

 梨音はもちろん目を輝かせて「行く」と返事をした。

 目を輝かせていたのは電話では伝わらなかったけれど。


 そんなわけで、今、海翔は梨音の前を走っていた。

 道案内を兼ねて、だ。


 最初は梨音を気遣ってゆっくり走っていた海翔だったが、梨音が速くてもよい、というので少しづつスピードを上げていた。

 不思議なことに、スピードを上げても梨音は涼しい顔でついてきた。

 梨音の自転車はオシャレ自転車、変速機付きとはいえ、その性能はママチャリと大差ないはずなのに。

 途中から、海翔は本気になって飛ばし始めた。

 ロードバイクの本領を発揮する。普通のママチャリの倍くらいの速さで車道を駆け抜けていく・・・なのに、梨音は追走してきたのだ!


「どうなってる?僕、遅い?・・・いや、サイコンも時速30キロを示してる・・・結構飛ばしてるんだけどな?」


赤信号で停車した。

はあ、はあ、と息を切らす海翔。すぐ後ろに梨音が停車する。慌ててブレーキをかけたようで必死にブレーキを握っていたようだ。

「梨音、は、速いな。電動アシストとかついてるのか?」

「電動アシスト?いいえ、カイ兄様。私が使ってる魔法は風属性ですよ?あえて言えば、ウインドアシスト?」

「ウインド・・・アシスト・・・」

「そうです。カイ兄様に追いつくために強力な追い風を発生させているんです」

「・・・」

 そんな馬鹿な、と海翔は思った。そんな便利な魔法、あるのか?というか、魔法で自転車のスピードを上げているとか、どんな設定なんだ?と。

 けれど・・・梨音は汗一つかいていなかった。

 それに、当然、梨音の自転車にバッテリーは付いていなかった。

 海翔は、わけがわからなかった。

 わからなかったが、つい、こう言ってしまっていた。

「そうなのか。それって、僕も一緒に追い風に乗れるの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ