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復讐のダークストリーム

本日は少し遅くなってしまいました・・・

いつもより少し長めです。

 月曜日。

 梨音は学校へ。


 教室で岩崎と目が合った。と、すぐに目を逸らされる。

 梨音はまっすぐに岩崎の前に歩いて行った。


「何か、言うことは無い?岩崎さん」

 岩崎は下を向いたままだ。

「呼び出されて行ったわ。でもあなたはいなかった。アパートの部屋の中にもいなかった。何処にいたのかしら?」

「あ、あたしは・・・」

「監禁されていた、のね。他の4人に」

 顔を上げる。その目は泳いでいた。

「し、仕方無かった・・・。く、倉本さんを呼び出さなければ、あ、あたしを・・・あの、あいつらに売りつけるって・・・」

「つまり、私を騙したのね?」

「騙したつもりは・・・」

「自分の身代わりにするために私をあの部屋に行かせたのでしょう?何が起きるのか知っていたのに」

 再び下を向く岩崎。

 梨音はため息をつく。


 かつての世界では12歳は大人だ。

 いや、大人かどうかで言えば大人ではない。成人は15歳で行う。12歳は正式に働けるようになる年齢だ。

 つまり自分で責任を取るようになる年齢だ。


 国境警備隊長レナータ・ディ・スカファーティーは、徒弟見習いの子供が悪党に脅されて担がされた片棒を、頭ごなしに断罪してきただろうか・・・。


 思い返してみる。あれは確か半年くらい前。

 漁業ギルドの見習い徒弟が幼馴染のチンピラに言い包められて・・・

 人攫いの声掛け役をやっていた事件があった。奴隷として売られる子供を人の目の無い裏路地に誘い出す役目だった。

 あの時、レナータはあの少年を理由も聞かずに断罪しただろうか。


 したな、そう言えば。

 労役2年の罰になったはずだ。

 あの少年は必死に仲間に脅されたんだ、と言い張っていた。私は「それがどうした?悪事をしていることには気付いていたのだろう?ならば罰を受けるべきだ」と耳を貸さなかった。


 しかし、こちらの世界では違う。

 中学1年生は・・・まだ子供の範疇だ。


 善悪の判断は出来る。けれども自分の行動に責任を取らされる年齢ではない。


 それに・・・

 梨音は断罪する立場に立っているわけでもない。

 

「岩崎さん。もう2度としないと約束してもらえる?」

「はい・・・もうしません」

 殊勝にも岩崎は頷く。

「それから、あの4人とは縁を切って。ちょっと悪さの度が過ぎるわ」

 コクコクと頷く。

「もう付き合いません。怖い思いはしたくないし。それに・・・今夜、マナは呼び出し受けてるって・・・」

「マナ?誰それ」

「あ、えと、倉本さんの言う4人のうちの一人・・・」

 あ、そっか。名前、聞いたこと無かったね。

「呼び出しって誰に?」

「あの、えと、おかしなやつを寄越しやがって、と言われたって・・・ただでは済まないっぽいけど、行かなきゃ行かないで何されるかわからないからって」

「呼び出しって、何処?知ってる?」

「場所ですか?一応知っていますけど・・・いえ、昨日のアパートではないです。あそこは撮影用とか言ってた・・・」


 岩崎の話をまとめるとこうだ。

 マナは、とある芸能事務所に属しているタレントで、グラビアっぽいやつとかネット配信っぽいやつとかに出ているらしい。

 もちろんメジャー系のやつではない。身も蓋もない言い方をすれば、広告写真とか風俗系のイメージ写真とかそういうやつだ。それ自体は悪いことではない。アイドルデビューのための下積みのようなものだ。でも、その芸能事務所というのが怪しいところで、アイドルの仕事なんていうものはやってないんだそうだ。

 アイドルになりたいんなら、一肌脱いでくれないと紹介できないな、と言われているらしい。

 けど、それは自分でやらなきゃいけないわけでもないらしく、誰か友達を紹介してくれてもいいよ、と言われて、こういうことになったらしい。

 元々、梨音のことは、見た目が目立つから邪魔に思っていたし、ちょうどいい、とか言っていたという・・・


 放課後。

 都代に午前中の話をした。

 マウリツィオも一緒だ。

 場所は学校の近くの公園。


 梨音は怒っていた。そのマナっていう子のことも身勝手で腹を立てていたし、その芸能事務所というのも懲らしめられるべきだと。

「けど梨音ちゃん、懲らしめるって言っても、そういうところってなかなか証拠をつかませないっていうか、訴えられないっていうじゃない?」

 都代はネットの情報サイト大好きっ子なので、そういうのには妙に詳しい。

「そうですな。結果的にレナータ様もアパートの部屋に監禁されたわけでもないですし、むしろカメラやら照明やらを壊して帰って来たわけですからな。逆に訴えられかねませんぞ」

「証拠?訴える?そんなつもりはないわよ」

「え?でも梨音ちゃん、じゃあどうするつもりなの?」

「ちょっとダークストリームでもぶち込んで・・・」

「「いやいや・・・それはダメでしょう!」」

 都代とマウリツィオの声が重なった。

「なんで?悪いやつらは一網打尽に成敗してしまえば・・・」

「死んじゃう、死んじゃうから!梨音ちゃん、それはやり過ぎだから」

「そうかなあ・・・」

「そうだよ。こっちの世界では、そんなに簡単に人を殺してはいけないんだからね?」

「でも、悪いことをしている人達ですよ?罰を受けるべきです」

「百歩譲って梨音ちゃんが腹いせに魔法を事務所に撃ち込むとしても、ダークストリームはダメ!どんな魔法かわからないけど、名前からして事務所内が阿鼻叫喚の地獄と化すような気がする」

「都代様・・・ダークストリームは洪水系攻撃魔法です。濁流を作り出し敵の陣地を薙ぎ払う強力な魔法です。おそらくコンクリートの建物も破壊されるかと・・・」

「梨音ちゃん!ダメです!そんな魔法は。ご近所にも迷惑です!」

「・・・わかりました。それでは止めておきます」

都代は、ほっとして息を吐く。

「それで、どんな魔法ならいいのでしょう?」

「あ、攻撃するのは止めないんだ・・・」

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