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都代と魔法の練習(2)

前田都代マエダトヨ視点です。

 私の名前は前田都代マエダトヨ。中学一年生。

 倉本梨音ちゃんとは小学4年生の頃から友達。その頃流行っていた魔法少女のアニメの話題で気が合って話すようになったの。

 梨音ちゃんと魔法について話をしたり、どうやったら魔法が使えるようになるか練習したり・・・楽しかった。


 私の名前・・・

 マエダトヨ、という。

 私にとって学年の最初の自己紹介の時間は苦しい時間でしかなかった。

 私の名前を聞いたクラスの誰かが、絶対にこう言うのだ。

「前だ!とよ?」

 前だとよ、と言われる度に恥ずかしくてうつむいてしまう。なんでこんな名前を付けたのか、と両親に食って掛かったこともあった。

 いつの間にか、私はクラスになじめずに一人でいることが多くなった。

 いじめられてはいなかったけれど、仲のいい友達もいなかった。


 梨音ちゃんと出会うまでは。


 小学4年の頃、梨音ちゃんと魔法の練習をした。

 他の誰にも言っていない私たちだけの秘密。火魔法も聖魔法も使えなかったけれど。梨音ちゃんは魔法なんて簡単には出来ないよね、と言っていたけれど・・・でも私には魔法は存在していた。

 仲のいい友達が出来たこと。

 友達の出来る魔法は、確かにあったの。

 その事が何よりも嬉しかった。


 梨音ちゃんは女子達のグループにはいじめられていた。

 けれど、梨音ちゃんが気付いていなかっただけで、男子達にはすごく人気があったの。

目鼻立ちのはっきりした綺麗な顔だけで男子の目を惹いていたし。それを好意というよりもイタズラとかちょっかいとかいう形で表すから、梨音ちゃんは迷惑がっていたけれど。

 そんな梨音ちゃんを独占している私は、それだけですごく嬉しかった。

 梨音ちゃんにも「一番の親友」と言ってもらったこと、すごく覚えている。


 中学に入って別のクラスになった梨音ちゃんとは、あんまり会う機会は減っていた。

 忘れたわけではないよ。ただ新しい環境に慣れる時間が必要で・・・時々、放課後に会いに行ったけれど、梨音ちゃんはいつもいなくて。

 授業が終わるとすぐに梨音ちゃんは帰っていたらしい。

 なんかクラスの女子に陰湿ないじめをされているみたいだった。


 私は梨音ちゃんを助けたいと思った。

 でも、何も出来なかった。なんの力もない私に、梨音ちゃんを助けることなんて・・・


 先週、私は自分のクラスでギャルっぽい子達が梨音ちゃんの名前を言っているのを聞いた。聞き耳を立てていたら、なんか手品っぽい技で目つぶしされた、とか見えない壁に飛ばされた、とか言っていた。


 それは・・・梨音ちゃんは本当にいじめられていたんだ。反撃した梨音ちゃんをあいつらは許さないだろう。絶対に仕返しされる。

 そう思ったら、私は居ても立っても居られなくなったの。



 それで、今に至るわけなんだけど・・・


 私は魔法が大好き。アニメも漫画もラノベも大好き。

 それと同じくらい梨音ちゃんが大好き。

 本当には魔法が使えなくても、梨音ちゃんと魔法の練習をするのはすごく楽しい。


 さっきまで、そう思っていた。

 

 今、左手の中に温度を感じている。

 梨音ちゃんと繋いだ右手はしっとりと湿った柔らかい暖かさ。それとは違う熱さが左手の中になる。

 なんだろうこれ。

 本当に、本当の魔法みたいだ。


 それと梨音ちゃんの言葉。


 魔法力を感じる?


 それってどういうこと?と最初は思った。

 けれど梨音ちゃんの手を通して何かが私に伝わって来た。手の中に、腕の中に、そして胸の奥に感じている。


 これが魔法力?


「都代ちゃん、そっと目を開けてみて」

 梨音ちゃんの優しい声で私は目を開ける。


 左手の中に小さな炎が揺らめいていた。

「ファイヤーボールだよ、都代ちゃん」


 オレンジ色の揺らめく炎の塊。ビー玉くらいの小さな小さな炎・・・それが左手の中で空中に浮かんでいた。

「そのまま、手を開いて・・・そっと上へ向かうように意識して・・・」

言われたままにやってみる。

ほわっと小さなファイヤーボールが浮かび上がっていく。


 なんだろう、これは・・・手品?イリュージョン?


 まさか、本当に魔法なの?

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