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都代と魔法の練習(1)

 海岸で。


 先週と同じ海岸に来たよ。

 松林があって砂浜と陸地に高低差があるから人目に付きにくいから。

 まだ6月に入ったばかりの時期だから海水浴には早いし。


「じゃあ都代ちゃん、魔法の基本から教えますね」

「うん、梨音先生!お願いします!」

 都代が元気よく返事をする。

マウリツィオは呆れ気味だ。

猫なので顔は変わらないけど、まあ、そんな雰囲気で寝そべっている。

「昨日、マウリツィオとも話し合ったのだけど、魔法を使うためには神と契約をしなくてはならないの」

「神との契約?」

都代の目は真剣だ。キラキラ輝いている。

「そうなの。契約をするためには神官クラスの魔法士が必要で、本当は神殿で行う儀式なのだけど・・・」

「神殿って何処にあるの?」

「この世界には無いのです」

「この世界?梨音ちゃんは別の世界から来たの?」

「・・・。そうなの。私の名前はレナータ・ディ・スカファーティー。スカファーティー伯爵家三女にして国境警備隊長を務める魔法士だったの」

「おー!貴族令嬢キタコレ!それで、神殿無くても儀式って出来るの?」

「儀式は出来ると思う」

「梨音ちゃんは・・・レナータちゃんは神官クラスの魔法士だったの?」

梨音は首を振る。

「残念ながら、私は違います。神官になるには神殿での実務経験が3年以上必要で・・・」

「なんか大変なんだね」

「うん、そうなの。私、神殿に3年も入るとか許されない身分だったから・・・婚期を逃す、とか言われちゃって」

「じゃあ、どうやって儀式をするの?」

「あ、マウリツィオが神官クラスの資格を持ってるから大丈夫」

 そう言うと梨音が黒猫マウリツィオを抱き上げる。

「ふにゃあ・・・」

「うふ!かわいい。神官にゃんこさんなのね!」

「マウリツィオは猫の姿を借りているけど、本当は高名な魔法士なの。でも猫の姿だと魔法力が弱いから私がサポートします」

「はい!」

「じゃあ、今から始めます。私の手を握って?」

都代が梨音の手を握る。

「目を閉じて、空いている左手を胸の前に・・・そう・・・そこに意識を集中していて・・・今から言う言葉を復唱して」

「はい」

「He that observeth the wind shall not ・・・」

「な、いやいや、ちょっと待って?どうして英語?」

 都代が慌てて遮る。

「なんでって、そういうものだから・・・」

「英語なんて無理だよー。ていうか、梨音ちゃん、いつの間にそんなに英語うまくなったの?」

「うまくなったというか・・・むしろこっちの方が得意というか・・・」

「あー、そういえば梨音ちゃんってハーフだったよね?えっと、ギリシャ系?」

「・・・イタリア系・・・」

「イタリアって英語なんだっけ?」

「都代ちゃん、今はそんなことよりも復唱、して?ゆっくりでいいから」

「あ、そうだね。頑張るよ」

「He that observeth the wind shall not ・・・」

「ヒーザット・・・」

「observeth the wind・・・」

「オブザーべザウインド・・・」

 儀式の最初に唱える言葉を短く区切りながら復唱していく梨音と都代。梨音が覚えていない所はマウリツィオが梨音に教えながら・・・

 かなり時間が掛かったけれど、なんとか最後まで唱え終わる。

「じゃあ、左手の先、自分の胸のあたりに集中して・・・」

「はい」

「私が魔法力を注いでいきます。感じ取ってみて・・・目は閉じたまま・・・」

「うん・・・」

 都代は真剣だった。真剣に魔法力を感じ取ろうと意識を集中する。

「Enhanced energy transfer・・・」

「エンハンストエナジートランスファー・・・」

「イメージして。胸の前に熱を集める。周囲の温度を集めてくるイメージ・・・」

「熱、熱・・・温度・・・」


 梨音は都代の様子を見ながら、魔法力の流れを感じていた。


 梨音も小さい頃に一度は受けた儀式である。


 でも、随分と前のことなので完全には覚えていない。


 けれどマウリツィオは地元の神殿で働いていたことがあり、正確には神官ではなかったけれど、一応の儀式については学んでいる。

 そして梨音もマウリツィオも、研究熱心な魔法士だった。理論、実践ともに超一流と言っていい。

 本来目に見えない魔法力の流れを感じ取ること、それはレベルの低い魔法士には難しいことだったけれど、梨音には問題ない。


 魔法行使の儀式のポイントは「神」へのアクセス、そして自身の魔法力を感じ取ることと、それを操ること。神官の役目は、自身の魔法力を注ぎ込むことで、魔法力というものを感じ取らせ、それを自分の体の中に見つける手助けをすることなのだ。


「なんか熱くなってきたような・・・」

都代が目を閉じたまま左手を動かす。

「いいよ、いい感じ。それが温度転移、集中を切らさないで」

 いい感じだ。周囲の熱を少しだけだけれど集めている。

 今はほとんど梨音の魔法力だけど、都代の体を通して魔法力を行使している。

 このまま安定すれば、最初の一歩は成功するのだ。

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