都代と魔法練習に出掛けます
金曜日は平穏に過ぎていった。
都代は放課後にやってきて、明日の予定を決めた。
9時半に学校の近くのコンビニ。自転車で来ること。
それから一度家に帰った後、自転車を押してカイ兄様のところへ。
金曜日も自転車の練習に付き合ってもらう約束をしていたのだ。少し距離を乗ることになるから念のために練習をしておくのだ。
土曜に都代と魔法の練習に行くのです、と言うと海翔は悔しそうに顔をゆがめた。
「明日はバイトなんだ。僕も梨音と出掛けたかったなあ」
「何故ですか?カイ兄様も魔法を使いたいのです?」
「いやあ、なんていうか、海までサイクリングでしょ?なんか楽しそうだから」
「そうですか?じゃあ、次はカイ兄様がお休みの日に一緒に行きましょう」
「本当?じゃあ来週の日曜日、その日はバイト無いから!」
土曜の朝。
「では行ってきます」
母親に手を振って出掛ける。このところ、ずっと真面目そうな本ばかり読んでいるので、「勉強しなさい」とは言わなくなっている梨音のママ。
けれど、自転車を引っ張り出したら慌てて出てきた。
「梨音、乗れないはずでしょ?大丈夫なの?」
「大丈夫です。カイ兄様と練習しましたから」
「そうなの?あんなに練習嫌がっていたのに・・・。とにかく気を付けて行きなさいよ?」
「はい、ママ。死亡フラグ回避ですね?心得ています」
「いや、意味わからないから」
あれ?と首を傾げた。梨音の記憶によれば正しい日本語のはずなのだけど・・・
待ち合わせ場所のコンビニに着くと都代が先に来て待っていた。
「梨音ちゃん、おはよう!わぁ、猫さんだ」
黒猫マウリツィオがバスケットから「にゃお」と挨拶する。
「おはよう、都代ちゃん。こちらは黒猫マウリツィオ」
「よろしくね、マウリツィオ」
都代がマウリツィオの頭を撫でる。
マウリツィオも嬉しそうに撫でられている。
実際、ロリ少女に撫でられて悪い気はしていない。
コンビニで飲み物を買う。
「待ってて。自転車を取ってくる」
コンビニの隅に置いた自転車へ都代が走っていく。
都代の自転車は銀色の普通のやつだ。
少し羨ましそうに都代が梨音の自転車を眺める。
「梨音ちゃんの自転車、かわいいね」
「ありがとう。私も気に入っているの」
「うん、よく似合うよ。なんとなく欧州風味で」
「オーシューフーミ?」
何語だろう?と思う梨音。
「ヨーロッパ風ってこと。欧州はヨーロッパって意味の日本語だよ」
そうなのか!日常会話はともかく少し難しい日本語がまるでダメだ。これは普通に日本語勉強から始めた方がいいかもしれないな、と一人ため息をついた。
「それで、今日は何処へ行くの?梨音ちゃん」
「海の近くまで。人の目に付きにくくて広い場所、そこしか知らないから」
「そうよね!魔法の練習を人に見られるわけにはいかないものね!」
うん、うん、と激しく頷きながら目をキラキラさせる都代。
「うん。けど魔法の練習をするのは都代ちゃんだよ?私は教えるだけ」
「えー?それじゃあ梨音ちゃんは私が魔法の練習している間、なにするの?」
「私は剣の練習、というか素振りかな?カイ兄様に貰ったから」
布に巻かれた棒状のものを見せる梨音。それも興味深そうに見る都代。
都代は梨音以上に厨二病患者だった。
「じゃあ、早くいきましょ!」
「あ、待って。マウリツィオ!おいで。バスケットに乗って」
マウリツィオが自転車に飛び乗る。梨音と都代は並んで走り出した。




