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ドラム缶のお風呂を満喫する

 アンジェラのお店の裏庭は高い垣根のある薄暗いスペースだった。

 

 今は、そこにドラム缶が一つ置かれていた。


「ドラム缶?何故、ここに!」

 ドラム缶の素材感丸出しの感じが、まるで違和感ないけれど、ドラム缶が、この世界にあるはずが・・・。

「あ、ナタリーだね、これを持ってきたのは」

「あら?その通りですよ、都代」

 タオルを持ってナタリーも現れる。

「一緒に入りましょう」

「うん、一緒に入ろ!」

 そう言って、ドラム缶の中を覗く。

 まだお湯は入ってないね。水道とか無さそうだけど、どうするんだろう?

「都代、来ましたね?じゃあお湯を入れましょう」

 レナータが、ドラム缶のそばに近寄る。よく見ると、ドラム缶は並べたレンガの上に置かれ、中に入りやすいように脇にもレンガが積まれて階段みたいになっていた。

 その階段を上がり、レナータが魔法で水を出す。アクアボールだ。

 アクアボールなんだけど、すごい勢いで水が出てるよ。ものの数秒でドラム缶から溢れ出した。

「少し入れ過ぎましたね。ファイヤーボール!」

 お、定番のファイヤーボールでお湯を作るってやつだ。なるほど、そっと水に沈めていくんだ。傍から見ていると、ドラム缶の中がオレンジ色にぼうっと光っていて幻想的。


 裏庭は、月明かりで照らされている程度の明るさだから。


「これくらいの温かさでしょうか?」

 レナータが自分の手で温かさを確かめる。

「はい、いいですよ、都代、ナタリー。そこに籠を置いていますから、服を脱いで入れてください。こっちの籠には新しい下着と、タオル。じゃあごゆっくり」

「ありがとう!レナータも一緒に入らないの?」

「さすがにドラム缶風呂に3人は入れないでしょう?」

 う、確かに。ドラム缶の直径は60センチ、高さは90センチ。ナタリーが教えてくれたよ。うん、体の小さいナタリーと二人なら何とか入れるけど、三人は無理だね。

「それにね、都代。さっきからこっちの様子を覗っているマウリツィオを向こうに連れて行って監視する役目がありますからね」

 そう言うと、ひょいっと裏庭の一角にしゃがみ込み、何かを拾い上げた。


 あ、師匠だ。


「こんなに暗いのに、何も見えないでしょう、師匠」

「都代、何を言っているんですか。猫の目は夜目が効くんですよ?」


レナータと師匠が裏庭から出て行って、私は服を脱ぎはじめた。

 一度ベッドに寝かされていたので、防具は付けていない。シャツとズボン、そして下着だけ。さっさと脱いでしまう。

「都代、裏庭にはお湯をこぼしてしまってもいいってアンジェラさん言ってましたから。はい、これ」

そういって渡してくれたのは、桶だった。私には空中から出現したように見えたんだけど。

「アイテムボックスから出しましたよ。気分ですからね、ケ〇リン」

「銭湯のやつじゃん!黄色いケ〇リン」

「ナタリー、本当に異世界人?なんでこんなマニアックなものを持っているの?」

「普通にホームセンターで売ってましたよ。見たら無性に欲しくなってしまい、二つほど買いました。見てください、こっちのなんかケロ〇軍曹のイラスト付きなんですよ!」

「わ、ほんとだ。かわいい!」

 せっかくなので、満杯のドラム缶風呂からお湯を掬って肩から掛けた。

「わ、気持ちいい。露天風呂だし、なんかいい感じ」

「じゃあ、私もお湯をもらいますね」

 ナタリーも裸になって、お湯を掬う。ジャバーっとお湯が流れ、ナタリーが、ほうっと息をつく。微妙におっさんくさい・・・。

「て、ナタリー、中身おっさんじゃん!」

「え?何を今さら・・・。転生して6年も経つんですよ?元おっさんでも、今は女の子ですってば」

「いや、そうだけど、いいんだけど、なんかなー」

「都代が気になるなら、後で入りますけど・・・」

 ナタリーが少し寂しそうに言った。

 いやまあ、そうだよね。完全に女の子のナタリーが、前世のおじさんの記憶があるからって理由で一緒にお風呂に入れないっていうのもおかしいよね。

「ごめん、ナタリー。気にしないよ。ナタリーはナタリーだもんね」

「ええ、私はナターリエ・フォン・シュッテルヴァイスビンゲン。6歳の女の子ですよ」

 そういうナタリーは、月の明かりに照らされて幻想的に立っていた。お湯で蒸気の上がる白い肌。日本人じゃないんだな、とすぐにわかる白さ。そして長い金髪は、月明かりの元で光り輝いていた。まるで一枚の絵画だ・・・。

「なんかナタリー、ごめんね。ナタリー、すごく綺麗だねえ。惚れちゃいそうだぞっ」

「何言ってるんですか、都代」

 そう言いながら、ナタリーはケ〇リンで掬ったお湯を私の肩に掛けた。

「じゃあ、私も」

 ナタリーの肩からお湯を注ぐ。艶やかな肌をお湯が流れていく。透き通るような白い肌って本当にあるんだねえ。

「よし、じゃあ入りましょ!」

 そう言ってナタリーがレンガの階段を上り、ドラム缶の両わきに手を置いて、ゆっくりと沈んでいく。

 ザバアーっとお湯が零れ落ちる。

 辺りに湯気が立ち上る。

「じゃあ、私も入るよ」

 ナタリーが肩まで浸かって端の方に寄るのを待ってから、私も腕で支えながら両足を入れていく。

 ドラム缶は狭い割に深いので、立ってお風呂に入る感じだよ。

ザバアー・・・。さらにお湯が零れ落ちた。

「ふあー、いい気持ち・・・」

「いい気持ちですね・・・。三日ぶりのお風呂ですものね」

「そうだねえ・・・」

 狭いお風呂で、ナタリーと、くっついて空を見上げる。

 暗さに慣れてくると、夜空には星がたくさん出ていることに気が付いた。

「すごい、いっぱいの星空だね」

「ええ。地球の星空とあまり変わりませんね。本当にここはパラレルワールドの地球なんですね」

「本当だ。あ、カシオペア」

 それにしてもいい気持ち・・・。

「ふあー、超気持ちいい。五臓六腑に染みわたるーだね」

「都代、それはお酒を飲んだ時のセリフですよ」

 あわわ。またバカっぷりを発揮してしまった・・・。


 ところで、さっきから気になっていたんだけど・・・

「ナタリー、ひょっとして足、ついてない?」

「はい・・・足、届かないんです・・・」

 ナタリー、ドラム缶の底に足が届いていなかったよ。どおりで私の胸にナタリーの背中が周期的にぶつかると思ったよ。

 え、いや、気にするほどの胸は無いけども!


「あ、温まったらシャンプーもするでしょ?都代。洗い物の籠の中にシャンプーとコンディショナーを用意してますから。あと、ボディーソープも」

「ほんと!?ありがとう。頭、かゆかったんだー。助かるー」


 そんなわけで、お風呂から上がり、シャンプーしてリンスして、体を洗って・・・途中でナタリーも出てきたから、背中の流し合いして、お湯が減ってしまったから、魔法でお湯を足そうとしたら、熱くなりすぎたり・・・。


 お風呂を出るころには、はしゃぎすぎてクタクタになっていたよ。

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