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死の森。武装城郭

 村の門に辿り着いた。

 そこにいた人はグリーンの髪のヨーロッパ系、という感じの男だった。

「カモーン」

 そう言いながら大きく手を振っている。門は閉ざされていたけれど、人ひとりが通れるくらいの通用門があった。


 なんか、村の門というより、城門みたいだなあ。


「こんな門やバリケードが無いと生きていけない場所なんですね、きっと」

 ナタリーが少し驚いた顔で言った。

「そうですよ、ナタリーちゃん。このあたりの村は武装城郭と呼ばれたりします。お城というほどの建築物はありませんが、守りに特化した村の作りは独特で興味深いのですよ」

「城郭というより、RPGの関所みたいな感じする。バリケードとか、あの見張り台とか」


 城門のサイドには3階建て程度の高さの塔のようなものがあって、その屋上は見張り台になっているようだ。

 村の内側には家や倉庫が並び、一角には野菜畑もある。

 人口はそれなりにありそうだったけど、今は人影はほとんどない。


 門番だろうか、緑の髪の男は自分を指して「エミリオ」と言った。

 私は、自分を指して「トヨ」、それからナタリーとマウリツィオを順番に指し示して紹介した。

 ワイバーンの襲撃中だ。

 ゆっくり自己紹介している暇は無い。


 エミリオが、ついて来い、という身振りで走り出した。

 私達も追いかける。


 てか、エミリオ、速い、速いから。


 必死で追いかけると、倉庫が何軒か立ち並ぶ裏手に出た。

 そこには砦のように煉瓦を積んで作られた城壁があった。高さは2階建ての家くらい。階段がついていて、エミリオが駆け上っていった。

 私とナタリーも階段を上がる。


 砦だ。


 階段を上がると、私の身長くらいの壁のある屋上みたいな感じになっていた。

「都代、ナタリー!」

 レナータがカイトや、何人かの村人と一緒に待機していた。

「こちらからも見えましたわ。ワイバーンを引き付けてくれてありがとう。お陰で怪我をしていた村人を無事に移動出来ました」

「いやーそれほどでもー」

「何言ってるんですか、都代ちゃん」

 師匠に呆れられた。レナータはスルーで続けた。

「ワイバーンは、この村を狙っているようです。村人の情報によると、北にある村がワイバーンによって壊滅状態となったようです。味をしめたワイバーンが、次に標的にしたのが、この村だとか」

「味をしめた?」

なんの?と思った・・・思ってしまったよ・・・。

「ワイバーンは肉食です。滅ぼされた村の惨状は見るに堪えないものだったそうです」


 うわぁ・・・。熊か?人食い熊か?ウィキ〇ディアで三毛別ヒグマ事件の記事を読んだことがあるけど、しばらく夢でうなされたよ。

 怖いよ、正直、めちゃ怖い。


「今さらですよ、都代ちゃん」

 師匠は冷静な声だった。


 うん、まあ、今さらだね、たしかに。


 それに、今は急速に成長中の魔法がある。

 今なら、人食い熊とだって戦えるはず。


 というか、熊の魔物なら、先月くらいに戦って勝ったっけ?


「今、村の人達は何処に?」

 ナタリーが手短に聞く。

「砦に続く、レンガの建物に立て籠もっています。こういう事態を想定した頑丈な建物ですけれど、大岩を落とされたら壊れるかもしれません」

 なるほど、ワイバーンの岩攻撃は阻止した方がいいのね。

「戦える村人は、ここにいる者で全てです」

 エミリオ、他に4人。男性3人、女性一人。


 少な!


「最初の攻撃で、何人もの怪我人が出てしまったんですよ。対空戦闘が出来そうな人は、これだけしか残っていません。他の人は避難しています。地上から攻められたのであれば村人達も投石なんかでも戦力になりますが、上空からやってくる敵には無力ですから」


エミリオは口径の大きい火縄銃を用意していた。

同じく女性も同じ銃を用意している。エミリオは痩せ型で強そうには見えない。

残り二人の男性は、みるからにゴツい体型をしていた。

身長は2メートル近い。ムキムキの胸板、太い腕。よく日に焼けた顔。髪は、一人は濃いブルー、もう一人はエミリオと同じようなグリーン。火縄銃の女の人も髪はグリーンだ。  

このあたりの人のデフォルトなんだろうか。


 レナータが手をあげて注目を促した。

「作戦をお話しします。英語で説明した後、同じ内容を日本語で話します」


 あれから30分くらい経過していた。

 説明された作戦を頭の中で確認しながら、私は上空を見上げていた。


 ワイバーンは目がそれほどよく無いんだとか。

 そのため、夜間の襲撃は無い。手元の腕時計で、午後5時を過ぎていた。

今日は2度も撃退されていることから、もう襲撃してこないかもしれない。


 けれど、味をしめたワイバーンが、簡単に諦めるとも思えない。

 もう一度、明日、岩を抱えたワイバーンが襲撃してくるだろう、と。


 ワイバーンの知能は比較的高く、学習能力も高い。

 レナータのファイヤーボール、私のアイスミサイルの威力や攻撃範囲は見切られていると考えた方がいいだろう、とのこと。


 今日はこのまま警戒を続ける。ワイバーンの襲撃が暗くなるまで無ければ、明日、明るくなってから来襲するとして、いったん休息を取る。

 明日は朝から警戒態勢。

 陽動作戦でワイバーンを撃ち落とす。


 レナータは、いきいきとした顔で作戦を説明していたよ。

 しかも説明がうまい。村の砦を生かしたいい作戦だった。さすが、本物の警備隊長だよね。

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