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社畜が送る異世界デスマーチのすすめ  作者: Maskwell
三章 この学園に革命を!
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三十六話 約束された勝利と強すぎる力

俺はメロウという女悪魔の認識を改める必要があるようだ。


彼女は率先して規範的な行動を取るタイプではなく、わがままでプライドだけが高い性格だと思っていた。


しかし、混乱に狂う教室の中で彼女は倫理的に正しい行動を真っ先にとった。


思い返してみれば、今までも俺に「邪魔だ」と口ではいっておきながら、真っ先に行動で解決の糸口を示し続けてきた。

……とも取れる。


まぁ、少なくとも俺が冷静さと勇気を取り戻す程度の行動を彼女はやってのけた。


が、状況は決して楽観できない。


土すら溶かすような高温の火球。ショートワードの詠唱魔法の中では破格の威力を誇る【ファルガ】。


カインのおっさんのような化け物クラスでもなければ、かなり高等な魔法と言える。


前世の基準で言えば、そんなもん当てられたら確実に死ぬ。


しかし、魔法耐性が高いのか魔獣は燃え尽きることなく、背中の肉が焼けるに留まる。


痛覚はあるのか、肉の焼ける嫌な臭いを放ちながら魔獣はうめき声をあげる。しかし、その背も見る見る回復してゆく。


「ほら、あんたの相手はアタシだよ」


背の翼を羽ばたかせるとメロウは教室の天井近くへ舞う。


おいおい、普通の家屋より天井が高いといってもここは屋内だぞ。飛ぶことで、デメリットしか生まれないんじゃないのか?


メロウの真意が読めずに、俺は額の魔眼アルマスへと力を込める。


そういえば、この状況に飲み込まれていたせいで魔眼に魔力を全く流していなかった。


魔力の流れを見る。


「なんだ……これ……」


今まで見えていた魔力の流れ、白いポワポワとは全く別のどす黒い針の様な、棘のようなものが見える。


それは魔獣の全身から出て、メロウへと向かっている。

その内何本かはメロウを貫くように伸びている。


なんだこれは?


そういう魔法?魔術?


いや、違う。


魔力の流れはあくまでしっかりと見えている。


これは全く別物だ。


黒い棘はメロウを貫いているが、メロウに何か害があるわけではないようだ。




なんだこれは?




ふと、教室の隅を見ると泣いている女生徒がいる。


彼女の腕には、俺と同い年くらいの男の子がぐったりとしている。


血潮に染まった男の子。彼女の弟か?


彼女がどれだけ声をかけ、揺らしても男の子反応はない。


「ん?」


まさにそのときにだった、泣き崩れる彼女の背からゆらゆらと黒い影が見えたのは。


そのどす黒い影はやがて針となり、棘となり魔獣へと向かう。


そうか、この棘は……。


「貫け!【ゲイヴォーグ】」


ハスキーヴォイスが響き渡り、俺の意識は再びメロウへと向く。


彼女の手には燃え盛る槍が握られている。


おいおい、なんだあの魔力量は?!


そう年齢の変わらないであろう、彼女の魔法に俺は驚きを隠せない。


彼女は具現した槍を振りかぶると、短い掛け声と共に放つ。


稲妻のような閃光と轟音。


そこで、俺はメロウがわざわざ天井付近まで羽ばたいた意味を理解する。


彼女の生み出した槍は魔獣を貫き、地面に突き刺さっている。


上空からの攻撃でなければ、他の生徒を巻き込んでいただろう。


この、局面でそこまで気を回すことができるとは……。


【ファルガ】では表面しか焼くことができなかった。


しかし、貫いた槍は尚も燃え続け魔獣の内臓を焼きつくす。


阿鼻叫喚。


魔獣は狂ったように、暴れまわるが燃え盛る槍が抜ける様子はない。


魔獣の表皮はボコボコと異様な変形をみせ、瞳は白く濁る。


先ほどまでメロウに向かっていたどす黒い棘もなくなっている。


「【ルーヴァテイン】」


ハスキーヴォイスと共に全てが白ける煌めきが教室を覆う。


教室が元の明度に戻る頃には、教室全体がどよめく。


魔獣を貫いていた炎の槍は、消えていた。


しかし、魔獣はピクリとも動かない。


それもそのはず、魔獣の頭部は胴体から離れ教室の床に転がっていた、。


光に包まれた数瞬に何が起こったかを正確に把握できた者は恐らくごく少数だったろう。


俺は魔眼の力で、その全てを捉えることができた。


「回転する……炎の剣?」


ナナカの呟き声が聞こえる。

どうやら、我がピンク髪の姉もメロウの一撃を捉えることができたようだ。


メロウの詠唱。しかもあれは汎化されたものではなく、彼女固有のオリジナルワードだろう。

その詠唱と共に圧倒的なエネルギーを持つ回転する炎の剣が現れた。

メロウの動きに合わせて炎の剣は一瞬で、魔獣の首を切断した。


あれ、山でも簡単にぶった斬れるようなエネルギーだったぞ。

それを具現化して制御するなんて、固有スキルにしても強すぎるだろ。


俺は別の意味でさらなる恐怖心が芽生える。


自体をようやく把握した生徒から歓喜の声がパラパラと漏れる。


ようやく、なんとかったみたいだ。


あとはこの教室からどうやって出るかだな。


「おいマチ!まだ保つか?」


肩のピクシスへと視線を向ける。


相変わらず顔が青い。


「オーカぁ……」


なんだ?俺の子がお腹にいるとかいう冗談はやめろよ?


「どうした?」


俺は勤めて優しい声を出す。


「……まだ、終わってない」


「??……どういうっ?!」


俺は思わず言葉を遮る。


不自然な魔力の流れ。


俺がそれを感じると共に、絶望の旋律が再び鳴り響く。


俺の焦りなど無視するように、教室の中央には二体の魔獣が轟音と共に現れた。


あぁ、くそったれ。

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