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社畜が送る異世界デスマーチのすすめ  作者: Maskwell
三章 この学園に革命を!
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三十七話 希望は……

希望なんて、絶望を引き立てるためのスパイス程度のものですよ。


誰かの声が聞こえたような気がした。




新たに現れた二体の魔獣。


先ほどの個体とは全く異なるフォルム。


一体は甲羅から生えた無数の鎌状の脚が特徴的。甲羅は分厚く、ゾウガメよりふた回りはでかい。そこから延びる禍々しい鎌。比喩ではなく、間違いなく凶器としての機能をもっているであろうそれは、動くたびにカタカタと不気味な音を立てている。

まるで馬鹿でかいカブトガニのような見た目の魔獣は、全体的に畏れよりも不気味な印象を強く受ける。


もう一体はヒルのような胴体に、無数の人の口と眼球を埋め込めこまれたグロテスクな魔獣。こちらは素早い動きは見せないが、身体の瞳と口唇はせわしなく動き続けている。

吐き気を伴う生理的に受け付けないルックス。この嫌悪感は魔獣に対する本能的な警戒からか?


なにより絶望的なのは先ほどメロウがほふった魔獣よりもはるかに魔力量が多い。


再び教室の中は混乱に包まれる。


いや、先ほどのメロウの攻撃のおかげか数名の生徒は混乱には飲み込まれていない。


俺もその内の一人。


バンダナを巻いた男子生徒が教室の隅に集まるように、怯えている生徒たちに指示をだす。


他の生徒たちも協力してゆっくりと、移動しだす。


しかし、動き出した生徒に向かってカブトガニに似た魔獣が反応し動く。


「氷晶よ!【レッフラ】」

「轟け!【サンドラ】」


バンダナの男子生徒が氷の壁を作り出すと共に、先ほど男の子を抱えていた女子生徒が魔獣に向かって雷を落とす。



ぎゃははははははははハハハハハ!!!!!

ふふふふふふふふフフフフフ……。



教室に響き渡る騒音のような笑い声。


その笑い声が響き渡ると、魔力の流れが掻き乱れる。


「……え?」


ナナカの口から間の抜けた声が漏れる。


俺も自分が見た光景を疑いたくなる。


放たれた魔法は消え失せ、カブトガニの魔獣が生徒に突っ込む。


轟音と共に、教室の備品が壊れて四散する。


幸い、今の攻撃で怪我人は出ていない。


「いまの、なに?」


アルカが震える手で俺を抱きしめる。


「魔力阻害……いや、そんな生易しいものじゃない。魔法の……無効化?!」


俺が見たままのことを口にする。


ヒル状の魔獣の無数にある口が突然笑い出したかと思うと、魔力の流れが完全に死んだ。


俺の魔力阻害なんかとは、格が全く違う。


魔法除去。まるで出来かけたプログラムが全部クラッシュするような光景。


あんなもんまであるのかよ。


俺が必死で完全下位互換を練習してきたのはなんだったんだ……。


いや、今はそんなことはどうでもいい。


目の前の状況は刻一刻と変化している。しかも、悪い方に。


カブトガニの魔獣が手当たり次第に近くにいる生徒を襲っている。


動きが早く、逃げ惑う生徒の背中を鋭い鎌で切りつけている。


スピードはあるが、胴が真っ二つになるような威力はないのは不幸中の幸いと言える。


それでも、首ぐらいなら簡単にチョンパできるのは間違いない。


ふと、メロウを見る。


肩で息をしている彼女は、元の魔力量の3分の1まで減っている。


いや、あれほどの魔法を使ってまだ魔力が残っている方が驚きだ。


俺の視線に気づいたのか、メロウがこちらを見る。


ん?


おい、なんだその目は?!


は?俺が行けって?


いやいやいやいや、無理だから!


死んじゃうから!!


やめろ、そんな怖い顔すんな!




前世でも女には弱かった。いや、女だけでなく大体のものに弱かった。


そもそも空気を読みすぎるのは日本人の長所である反面、短所だと俺は思う。


そういった特性は社畜を育てる。


そして何より、俺は社畜だ。




「マチ、じっとしてろよ」


俺は肩の妖精に優しく声をかけると、彼女を制服の胸ポケットへと避難させる。


固めた決意が揺らがないように、俺はマチの顔は見ない。


どっちだ?


俺の使える魔法で二体同時に吹き飛ばせるような火力のものはない。


身体能力には自信がある。


なら、カブトガニか?


いや、このお子ちゃまボディであの装甲を貫くのは不可能だ。


なら……。


「ナナカねーさま、アルカちゃんごめん!」


「「オーカ!!!」」


俺は抱きかかえていたアルカの腕を振りほどき教室中央へと走り出す。


あの魔法除去のせいで、おそらく魔法攻撃は通じないと思っていた方がいいだろう。


「いくぞ、おらぁ!」


たぶんその声は自分自身に向けたものだと思う。



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