三十三話 みんな一緒!
かなり早く着いたつもりだが、既に多くの生徒で学園は賑わっていた。
「クラス分けが発表されているみたいね」
校門を過ぎたところで、ナナカが人だかりを見つける。
どうやら、クラスの掲示がされているみたいだ。
そーいえば、合格発表もあそこでされていた。
学園長から合格を匂わせる言葉はもらったものの、姉たちの合格確認もあったので発表当日は朝から見に来た。
合格者は受験者数を考えるとかなり少なかった。
60名弱。それが今年の合格者だ。
合格者氏名だけが載っている掲示板の前では喜ぶ者、涙を流す者と三者三様だった。
自分の名前が本当にあるのか不安になる中、俺たちの名前を誰よりも先に見つけたのは一緒に来ていたダリューだった。
彼女がその場で泣き崩れたせいで、合格の喜びを味わうことすらできなかった。
その掲示板で、今日はクラス分けが発表されている。
「オーカと一緒のクラスになれますように。オーカと一緒のクラスになれますように。オーカと……」
アルカが突然ぶつぶつと呪文を詠唱しだした。
おそらく、かなり強力な魔法に違いない。
「うーん、あ!オーカぁの名前あったよー!」
マチが掲示板を指差す。
どこだ?
父はここで一番上のクラスに入れなければ主席獲得は難しいと言っていたが……。
「あ、あった……」
「オーカ!やった!」
アルカが抱きついてくる。
俺の氏名が記載されていたのは……。
「二番……か」
3組ある中の真ん中。そこに俺の名前が書かれていた。
そして、同じ組にはアルカとナナカの名前もある。
まぁ、真ん中に入れただけでも上等と思うしかないか。
にしても……。
「1組の人数は、なんなんだ?」
2組、3組はそれぞれ20人程なのに対して、1組だけ圧倒的に少ない。
その数、10人。
「1組に入れるのは本物の化け物だ。生半可な実力や地位があったところで意味がない」
後ろからの声。誰なのかは、分かっているが敢えて振り返る。
「おはよう。ジン」
そこにいたのは黒の長髪に額から生えた刀の剣先のような角。少し太めの眉が凛々しい顔立ちをした少年だった。
ミキシ国王子 ジン。
入学試験では何かと関わり合いがあった。
「おはよう、オーカ。お前も2組みたいだな」
その言葉で再び掲示板へと目をやる。
そこにはやたらたと長い名前が一人。ジンも同じ2組のようだ。
「ちょっと、邪魔なんだけど」
再び後ろからかけられる声。これも、誰だか分かる。
俺は振り返らずに半歩左へとズレる。
だが、なんでコイツはいちいち俺に突っかかってくるんだ?
「おはよう。メロウ」
俺は先ほどまで自分がいた空間を見つめる。
そこには金髪碧眼。背中から生えた白い羽。頭に輪っかが乗っていれば天使そのものだろう。
「ふん。おはよ」
チラチラと掲示板と俺を見比べる。
ん?あー、なるほど。
「メロウも一緒のクラスなんだな。よろしく」
俺はビジネススマイルをメロウへと向ける。
「べ、別にあんたとよろしくする義理なんかないんだから!」
何故ツンデレ?
あと、リアルなツンデレは嫌われるぞ?
それだけいうと、メロウはスタスタと校舎の方へと行ってしまう。
「私たちも教室へ向かいましょう」
ナナカが俺の手を引く。
「俺も一緒にいこう。セルシス、行くぞ」
「かしこまりました」
ジンの言葉と共に彼の背後から影が現れる。
魔眼に魔力を注いでいないとはいえ、全く気づかなかった。
背丈は俺と同じくらい。頭から黒いフードをかぶり、顔には目元だけくり抜かれた白い仮面。
声から察するに、おそらく少年。
「オーカは会うのが初めてか。俺の執事のセルシスだ。俺たちと同じ今年入学の2組だ。よろしくしてやってくれ」
俺の視線に気付いたジンが、彼を紹介してくれる。
「セルシスです。よろしくお願いします」
変声期を迎えていない、鳥のような声でセルシスがペコリと頭を下げる。
「オーカです。よろしくお願いします」
俺もつられて頭を下げる。
「私のようなものに頭を下げられては困ります」
あわあわと慌てた様子のセルシス。
そんなもんなのか。
「ふっ。セルシス、そいつは変わっている。あまり気にするな」
ジンが苦笑と共にセルシスを諭す。
おい、だれが変態だ。訂正しろ。
「……」
視線を感じて前を見ると、セルシスがじっと俺を見ている。
白い仮面から覗く目は、意外と綺麗な二重だ。
「なにか?」
視線に耐えきれずに俺から声をかける。
「……いえ、オーカ様、あなた……」
「オーカぁ!早くいこーよー!」
「いてててて!」
いててててて!
髪を思い切り引っ張られて、無理やり校舎の方へと顔を向けられる。
もちろん、マチの仕業だ。
この羽虫は、全くもー。
「はいはい、わかったよ。今いくよ」
俺はセルシスのことが気になりつつも、俺たちを見下ろす二塔の時計台に期待をせざるを得なかった。
がんばって時間を作りますが、四月はこのくらいのスピードです。




