三十二話 始まりの朝です!
かなり間が空きました。
構成はできていましたが、書く時間が皆無でした。
明日からまた頑張ます。
「オーカぁ!!!朝だよぉ!!!起きてぇ!!!」
俺の肩をピクシスのマチが叩く。
青いドレスに身を包んだ手のひらサイズの妖精は、背中から生えた透明な羽をパタパタと揺らす。
「もぅ、うるさいなー」
俺は手でマチを払う。
「えぇ、いーじゃん。いーじゃん!起きろー!」
マチは俺の肩を掴む。
「お前が起きる1時間も前から起きてるよ!なんだよ、そのノリ?!ベッドにすらいない俺にどうしろってんだ?!」
俺はネクタイを結ぶ手を止めてマチへと向く。
「だって、やってみたかったんだもーん」
マチは終始こんな感じだ。
一緒にいて疲れる。
あの入学試験からひと月、マチは我が家に居座り続けた。
目隠しメイドことメイド長のダリューに聞いたところ、ピクシスという生き物はかなり珍しいらしい。
お伽話の中では幸運の象徴らしく、その姿を見たものは願いが一つ叶うという。
これだけ連日顏を会わせているが、特に効果はない。所詮はお伽話か。
どうせ叶わないなら流れ星みたいに一瞬で消えてくれ。
「マチ、お前ほんとに学園についてくるのか?」
俺は肩に座ってるマチに今日何度目になるなわからない質問をする。
「うん。ラヴィーにはもう言ってるー。」
学園長もなに考えてるんだか……。
パタパタと廊下の方から音がする。
「オーカ、起きてる?私は今起きた」
そこにはパジャマ姿のジト目の姉 アルカ。
「アルカちゃん、おはよー。早く用意しないと初日から遅刻するよ」
何故、寝坊の報告をいちいち弟にするんだ?
「ちょっと、アルカ!あなたまだ寝間着じゃない?!さっさと着替えなさいよ」
そこにピンク髪を可愛らしくツーサイドアップにしたもう一人の姉 ナナカが現れる。
「ナナカねーさま、おはよー」
俺はナナカに朝の挨拶をする。
基本的にこの家ではナナカ、俺、アルカの順で目覚める。
朝の鍛錬のために早起きしている俺より先に起床して、姉が何をしているのかは知らない。
「あぁ、オーカ。おはよう。なんだ、もう制服に着替えちゃったのか」
そう言うナナカも黒地のブレザーを着ている。
なんでも、制服という文化自体はヒュルムのものを取り入れたらしい。
通りで前世で馴染みのあるものが見られるわけだ。
「さっき着替え終わったとこだけど、なにか問題あった?」
俺は自分の姿を見る。
ナナカと同じ黒を基調とした制服。
ネクタイは黄色。
異形が多い悪魔で制服を作る意味はあるのか?
「ネクタイ結んであげようと思ったんだけど。必要なかったみたいね。ダリューに習ったの?」
あ、しまった。
社畜のころのくせで、なにも考えずに着てしまった。
「あぁ、そんな感じ」
というか、前世と結び方一緒なんだな。ネクタイ。
「私も準備できた」
そこには制服に着替えたアルカがいた。
「アルカ、あなたまたそんなことに魔法つかって……。主から与えて頂いた力をなんだと思ってるのよ」
アルカの得意魔法【置換】。
彼女の触れているものと、一定距離内にあるものを入れ替えることができる。
普通は入れ替えるだけ。それをきっちりと着替えにまで昇華しているあたり、ほんとに魔力の無駄遣いといえる。
「別に、他で魔力使う予定ないし」
アルカがジト目でナナカを睨む。
「これから学園に行くのに、よくそんなこと言えるわね」
ナナカが呆れ顔でため息を吐く。
「二人とも準備できたみたいだし、早いけど学園に行く?」
俺が仲裁代わりの提案を口にする。
「そうね、アルカがいいなら私は構わないわ」
ナナカが一転して笑顔になる。
なんだかんだで、学園生活が楽しみなのは俺だけではない。
「私はいつでも大丈夫」
顔洗わなくていいの?とは何故か聞けなかった。
「なら、ダリューを呼んでくるよ」
俺は一階へと足を向ける。
「オーカ様、どうなされました?」
紫髪の目隠しメイドことダリューはメイド控え室にいた。
ダリューの他に青いスライムメイド プゥミンもいる。
「少し早いけど学園に出発しようと思う。馬車の準備がまだだったら申し訳ないんだけど……」
馬車というものが意外と不便だとこの世界に来て学んだ。
前作のキーさえあればすぐに出発できる車とはわけが違う。
「大丈夫ですよ。フニャニャに用意させているので、いつでも出れます」
柔和な笑みでダリューが応える。
さすがは気がきく。
「ありがとう。もうすぐ二人も降りてくるよ……ん?どうして泣くんだ?」
突然涙を流し出したダリューに俺がドン引く。
「いえ、ずびません。ただ、ついこの間まであんなに小さかったオーカ様がこうやって学びの場に身を投じるお歳になられたのかと思うと……うっ」
相変わらずだな……。まぁ、嬉しいんだけど。
「この制服どう、プゥミン?似合う?」
俺はダリューが見てられなくなり、プゥミンに話をふる。
「グッド!」
ビシッと親指型にした触手をかざしてくる。
ついでにプゥミンはスライムなのでちゃんとは話せない。
身体をそのまま声帯に似せて音を出す。
ゴボゴボと水の音が混じるが、慣れてしまえばこれはこれで可愛らしい。
「ちょっとオーカ?アルカが……って、またオーカがダリュー泣かせてる!」
この後ナナカに弁明するのに初の登校時間のほとんどを費やしたのは言うまでもない。
俺が産まれて初めて見た、あの二塔の時計台が近づいてくる。
「それでは、オーカ様、ナナカ様、アルカ様行ってらっしゃいませ」
ダリューが深々と頭を下げる。
社畜が送る異世界学園生活始まりだ。




