三十一話 湯船に癒されるのです!
第二章完結です。
「オーカ様!お待ちしておりました」
学園長から話を聞かされた後、俺たちはすっかり日が暮れた学園を後にする。
目隠しメイドことメイド長のダリューは約束どおり校門の前で待っていてくれていた。
俺を一目見るなり慌てて駆け寄ってくるあたり、この人の俺への好意は本物なのだと再認識できる。
俺が泥まみれな理由をナナカから聞くと、眩暈を起こし、一緒に来ていたフニャニャへと馬車の運転を任せ、そのままぐったりとしてしまった。
道中、俺は姉たちが話しかけてくれても適当な相槌を打つ程度で学園長から聞かされた話を頭の中で反芻していた。
「お帰りなさいませ。オーカ様、お嬢様方」
屋敷へつくと、ハルが出迎えてくれた。
ハルは表情が読みづらい。
それでも、俺が泥まみれになっていることに少し驚いているようだ。
「お風呂、沸かしています」
優しい笑みと共にそれだけ告げるとハルは代えの洋服を準備しだしてくれた。
俺は短く礼を告げると屋敷の大浴場へと向かう。
「ああぁ~~~、生き返るぅ」
俺は屋敷の大浴場で疲れた身体を癒す。
まぁ、悪魔の身体は湯治しなくても全く問題ないんだが。
それでも今日あった出来事は精神的にかなり疲れた。
「っで、なんでお前は屋敷にまでついてきてんだ?」
俺の肩で一緒に湯船に浸かる羽虫へと声をかける。
「チョー気持ちいいねー」
全然聞いてない。
ちなみに、マチの格好は布切れ一枚巻いただけだ。
脱衣所で入ってくるなと言っても、こんな感じでのらりくらりと躱されて現在に至る。
身体はお子ちゃま、頭脳は社畜。そんな俺が、羽虫の裸体ごときで欲情なぞするはずがない。
はずがない!
先ほどハルから聞いた話だと、父たちは遠征に再び出たらしい。
戻るのはひと月程先とのことだ。
それよりも、目先の問題がある。
「オーカ、入るよー」
2人の姉たちが大浴場へと入ってくる。
こちらはタオルすら巻いてない。
だが、大丈夫!
血縁者だから!欲情なぞするはずがない!
屋敷の風呂はデカい。
石造りの浴場は前世の銭湯を思い起こさせる。
「さて、俺は出るとするか」
湯船から身体を出す。
「だめ。逃さない」
アルカの声と共に肩を湯船へと押し戻される。
ちょ!そんな深くまで押し込むな!溺れる!
アブアブ言ってる俺を他所に、二人もかかり湯を済ませて湯船へと入る。
「あの、お姉様方……。これだけ広い浴場で、何故これ程密着する必要があるのでしょうか?」
俺を挟み込むようにナナカとアルカが湯船に浸かる。
「いいでしょ?姉弟水入らずで」
スレンダーなナナカがすまし顔で俺へとさらに密着する。
「今日はオーカがんばった。だから私たちが癒してあげる」
ナナカよりは大きな胸をアルカが押し付ける。
おい、弟ながら心配になるほどのブラコンだな。
まぁ、愛そのものはしっかりと受け止めるよ。
大方、馬車の中で俺が元気なかったのを心配してくれたのだろう。
本当に優しいよ。
そして、脱衣所へもうひとつ気配。
ガラガラと引き戸が開く。
「オーカ様!私がお背中を……」
ビタン!
紫髪の目隠しメイドが見えた瞬間、俺は魔眼の力で引き戸を閉める。
さらに開かないように魔力で固定。
「ちょ!オーカ様?!そんなに恥ずかしがらずとも、いいじゃないですか!オーカ様!!!」
忙しいダリューのことだ、しばらくすれば諦めて仕事に戻るだろう。
カポーンとどこからか聞こえてきそうなのんびりとした空間。
ナナカとアルカに身体を無理やり洗われて、再び湯船へと浸かる。
「ねぇナナカねーさま、アルカちゃん……」
俺は唐突に言葉を紡ぐ。
「ん?どうしたのオーカ?」
ピンク髪にタオルを巻いたナナカが隣から俺の顔を覗き込む。
「……オーカ?」
マチと湯船で遊んでいたアルカもこちらへと近づいてくる。
「……学園生活、楽しみだね」
俺は学園の医務室を去り際に、学園長から言われた一言を思い出す。
『君の夢への入り口はこの学園できっと見つかる』
学園長からの言葉。
それは、事実上の合格通知だった。
「……うん。私もオーカとの学園生活楽しみだよ」
ナナカが俺の髪をくしゃくしゃと撫でる。
「一緒のクラスになれるといいなー」
アルカが俺の肩へ頭を預ける。
「ワタシもしばらくはオーカぁと一緒にいるよー!!」
マチが再び俺の鼻へと抱きつく。
これにももう慣れた。
さぁ、学園生活が始まりますよ!!!
次回また閑話入れるかも不明です。
少し構想練ります。




