二十六話 反旗を!
魔眼を発動する前から分かっていたことだが、このカインというオッサン間違いなく強い。
魔眼を通して見る魔力量が半端じゃない。
父以上か?
そして、なにより厄介なのは黒い二本の腕、蝕義手ブラスノイル。
アレはただの腕ではない。
「逃げ回ってるだけじゃ、俺は倒せないぞ」
距離を取った俺に、カインが不敵に笑う。
「轟け!【サンドラ】」
俺が詠唱すると、一筋の稲妻がカインの脳天めがけて頭上から轟音と共に空間を割く。
「あ?」
カインはワンテンポ遅れて上を見る。
「おぉ!オーカぁ、すごい!」
眩い光を見てマチが叫ぶ。
だが……
「なにあれ?」
肩の妖精は驚愕の声をあげる。
まぁ、初めて見るとビビるよな、アレは。
まるで黒い傘のようにカインの頭を庇う物体。
「あれが蝕義手の力だ」
蝕義手ブラスノイル。普段は腕のような形をしているが、それはあの黒い腕の一面でしかない。
同質量のものであればどんな形状にでも変化できる。
しかも、持ち主が一定量の魔力を込めていれば魔力を帯びた攻撃を自動で防ぐ、盾とも鉾ともなるチート能力だ。
集団戦には向かないため、四戒門には入っていないが、こと一対一の戦闘においては間違いなく上位能力と言える。
おれはこの能力の前に手も足も出ずに父に負けた。
だが、ある意味幸運かもしれない。
二年前にやられて以来、俺はこの能力の対策をずっと考えてきて。
【DECLARE forcus Directivity】
脳内詠唱。
俺は大気中に漂う魔力に指向性を持たせ、それをカインへと向ける。
「む?どーなってる?」
傘のように頭を庇っていた蝕義手が元の腕に戻らず、さらにカインを覆っていく。
俺はそれを見ると共に駆け出す。
自動防御機能。自動が故に攻撃かそうでないかの判断は、持ち主であるカインとは異なる。
指向性を持たせた魔力がカインへ向けば、蝕義手は攻撃と判断して防御体制へと入る。
魔力の流れをカインへと向けているだけなのでカイン自身には何が起きているのか分からない。
まぁ、しかしこれはただのドッキリだ。
視覚を奪うだけなら詠唱魔法でも事足りる。
【ALTER TABLE eden ADD ( katana nvarchar (80)), ADD ( shadow nvarchar (max) ) after katana】
追加詠唱。
魔力消費量がぐんと跳ね上がる。
ここまでいくと魔眼に魔力を込めるというよりも、魔眼に魔力を吸われている感覚になる。
「ふん!芸達者なヤツd……!」
カインは覆われていた蝕義手を通常の腕へと意識的に戻す。
が、ヤツの視界に俺はいない。
そこにいたのは「影」。
俺が魔力で生み出したもう1人の俺。その手には同時に創り出した日本刀が握られている。
この影は魔眼アルマスの効果範囲内であれば、俺の意思で動くことができる。
1つ目の魔法を切断。
【魔眼解放】
ここからは時間との勝負だ。
【INSERT INTO eden VALUES (alter times)】
マチの時に使った魔法を脳内詠唱。
「こんな拙い【具現化】じゃあ、魔眼が泣くぞ!」
カインは影を蝕義手で振り払おうとする。
うるせー。今の俺にはこれで精一杯なんだよ!
「ちっ」
俺の魔力阻害にカインが眉をしかめる。
「大人、舐めてんじゃねーぞ」
大人気ないやつが何言ってんだよ。
カインは魔力阻害によって動きの鈍くなった蝕義手ではなく、自らの白い腕で影を殴る。
やはり、蝕義手を使わなくてもかなりの使い手のようだ。
だが、もう充分だ。
「オーカぁ!いっけぇーーー!」
おい、羽虫黙れ。
「上か?」
ほらバレた!この羽虫妖精俺の邪魔以外できないのかよ。
俺は日本刀を握る力が自然と増す。
簡単なことだ、「影」をおとりに俺はカインの頭上へジャンプ。
天井を蹴って、このお子ちゃまボディでもヤツを倒せる加速を得た。
ありきたりだが、それ故効果はあった。
俺が日本刀を握っている理由?ちゃんとクエリを読め。
「次元よ……」
「遅い!」
カインが詠唱しようとするが、俺の刀が勝る。
「がぁっ!」
脳天を狙ったが、さすがに避けられる。
それでも、肩から胸にかけて一撃を食らわせる。
【…end】
それと同時に俺の魔力が尽きる。
うえ、吐きそう。
身体に耐え難い疲労感が湧き上がる。
「癒せ。【ヒルラ】」
カインが詠唱で傷を治す。
「あー!ずる〜い!」
マチがカインを罵る。
くそ、この程度じゃダメか。
諦念が滲む。
「5歳で俺に一撃喰らわせたことは誇りに思え。お前は強くなるよ」
カインが俺へと近づいてくる。
もう、魔力阻害も解けている。
ここまでか。
「オーカぁ!負けるな!」
マチの言葉と共に俺の身体に変化が起きる。
「おいおい、そりゃ反則だろ」
カインが引きつった笑みを浮かべる。
「魔力が……戻ってきた?!」




