里の中へ
「ミズキさん……? だ、大丈夫ですか……? ぼんやりしたまま動かないから、もうみんな先まで歩いていってますよ?」
「あ、ああ……」
そうだった。俺は今里に向かって歩いている途中だった。なんていうタイミングで呼び出すんだあの神様は。
あの神様はキュリアは王になれないといった。じゃあ他の神がついてる上位種を王にすれば良いのではないか。神がついていないと王になれないというのも初めて聞いたし、そもそも俺の世界に神様なんていなかったから言われるまでわからないし、なんなら今も信じてはいない。
まえに上位種が束になれば神に匹敵するほどの力を得るとかなんとか言ってたけど、もしかしたらそれが何か繋がるヒントになるのではないだろうか。
今は上位種の一部を除いて人以下の扱いを受けているから均衡が保たれている。そういう考えもあるのかもしれない。
上位種から王が出たことがないといった発言にも何かひっかかる。
丁度サンダーバードたちのいる里まで脚を運んでるし、何か情報を得られるといいが……。
「おせーぞ。おいてくぞォー!」
ダンが少し離れたところからこっちに向かって手を振ってくる。キュリア、るんるん、リコルノも一緒になって手を振っているようだ。
ひとまずは目の前のことが大切だ。
俺はルナを連れて、謝りながらダンのところへ向かった。
里の目の前まで着くと、見張りの人が入り口を塞いで構えている様子が見えた。
部外者の俺たちが近づいていることに警戒してるのだろう。が、先頭にダンの姿があるためか攻撃される気配はない。
「何道塞いでんだよ。どけよ」
「家出したという話を聞いていたが……、後ろにいる輩は誰だ?」
「うるせぇなぁ、さっき道の途中で助けてもらったんだよ。命の恩人だから少しくらい入ってもいいだろ。里長にも顔を合わせたい」
家出のことをはぐらかしつつ、警備の人を下がらせると、ダンは俺たちに手招きし、里の中へと入っていった。
ダンが言っていた通り、男は皆旅に出ているためか女性が多いようだ。警備の人も2人とも女性。俺は軽く会釈するとダンの後を追って里の中へと入っていった。
里の中はあまり活気付いているというわけでもなく、各々が自分の仕事であろう作業を黙々とこなしている様子だった。
外との繋がりがないぶん、自給自足の面が強いからだろうか。狩りに行く者と里内で作業する者、どちらも女性だけで構成されているようで男性の姿はない。
「ここの男ってダンだけなのか?」
「いや、里長も男だ。男がいないと周りの魔物の抑止ができないから、最低でも1人は強い男が里に滞在する必要があるらしいぜ。あとは3ヶ月に一回くらいのペースで親父とかは帰ってくる感じだな」
出張とかそういう感じだと捉えればいいのだろうか。男が旅に出ることはここにくる前に聞いてはいたが、改めて里の中に入ると男がいないことに違和感を感じる。
こんな中今のところ里長を除いて唯一の男であるダンと出会ったのは運がよかったのかもしれない。
「とりあえず滞在許可をもらうために里長のとこに行くけどいいよな? 俺はそこまで行った後家出関連諸々で少し席を外させてもらうぜ……」
「わかった、ありがとな」
まあ、実際実力不足ではあったし自分でも思うところがあるのだろう。ダンは肩をすくめながら、少し先にある大きな建物へ向かって進んでいく。
里長ってことは上位種のことについても今までよりちゃんと聞くことができるかもしれない。神様が言ってた王なれるなれないみたいな話についても聞いておきたいところではある。だが一番は友好関係を結べるかどうか、それを忘れてはいけない。
ダンの後を追い、里長のいるであろう建物の見張りをしている女の人に会釈をする。
他の建物と高く作られているためか、入り口までの階段も長い。しんどい気持ちを抑えながら、上まで登り、ダンが開けた扉と同時に中へと入った。入る前に呼びかけたりノックしたりしなくていいのだろうか……、ダンたちの風習は知らないからなんとも言えないが、少し気まずい。
「おいじじい! 俺の命の恩人を連れてきた。少しくらいここに泊まらせてもいいよなァ!?」
いや違う。これはダンの礼儀がなってないだけだ。一緒に中に入るべきじゃなかったやってしまった……。
俺は慌てて姿勢を正し、中にいる里長であろう年配の方に向けて最大限頭を下げた。
「頭なぞ下げなくてよい。お主の気配でだいたいどのような人物かはわかる。神を従えてるという点以外では信用できる人物であろう」
そう言って振り返った老人の目には光が失われていた。元々か怪我かわからないが、視力がないはずなのにどうして俺の姿がわかるのだろうか。それよりも、見ただけで俺に神様がついてることまで理解しているのもおかしい。
上位種の里長ってだけで桁違いな何かを持っていそうなのは察していたが、まるで俺の何から何まで見通しているように見える。
「まあだいたい許可してくれるってのはわかってたからなァ。俺も用事があるからここで失礼するぜ。なんかあったらまた呼んでくれよな!」
「お前が俺に助けを求めないことを祈るわ」
颯爽と里長の家から去ろうとするダンに手を振ると、ダンは少しムスッとした表情をして家から出ていった。
中にはその様子を黙って見ていた里長と続いて入ってきたルナたち、そして俺が残った。
ダンが出ていったのを確認して、里長はゆっくりと口を開いた。
「それで? ここまで理由もなしに来ることもなかろう。それも神持ちときた。何を御所望か?」
「はい、実は──」
……そこから俺はの上位種たちの立場と現状を伝え、上位種たちの力を借りて一つにまとめたいということを話した。
それと上位種の中で過去に神と契約したものがいたかどうか。できるのかどうか。
そこまでの要件を伝えると、里長は少し考え込み、苦笑しながらその問いに答えるのであった。




