反対
「キミはいったい何をしようとしているのか自覚しているのか?」
不意に耳元でチラつく聴き慣れた声。
俺が唯一初対面で何も不快感を感じなかった相手、神様、アフロディーテの声だ。
周りを見渡すと何もない真っ白な空間。以前もここへきた気がするが何かが違う。たしかさっきまで俺は里へ向かおうとダンのあとを追いかけていたはずだ。
アフロディーテとは同一状態といってもいい、一種の精神世界といったものなのだろう。
「わかってるよ。俺が今行ってる行為、上位種の統一はこのままいくと戦争を呼ぶ。それほどに強大な勢力をまとめようとしてる」
「前にも言ったが、キミが上位種と人との間を取り持つことなど不可能だ。強大な力を人は恐れる。そこからうまれるのは争いだけ、人が自分より上の存在を認められるとでも思っているのかい?」
「上位種がまとまってしまえば、戦争をしたところで全人類が集まったところで勝機はないだろ。神様は上位種にパワーバランスが傾くといったが今は人族に傾いてる。高い戦闘能力をもつ上位種は自衛能力があるかもしれない、だけど他はどうだ?狩られ売られ居場所もない。
何を言われようが俺は上位種の国をつくる」
言い切る俺に対し、アフロディーテは若干怯んでいたが、すぐに真剣な表情に戻り、俺の方へ顔を向ける。
「上位種をまとめる、その道の途中で絶対に情報は漏れる。その瞬間キミは全世界を敵に回すと思っていい。ルナやキュリア、るんるんにリコルノ、彼女らのことを考えたらこのような馬鹿らしいこと……。上位種をまとめるまえに全滅するのがオチだ。それにまとめたあとはどうするんだい。国の王は? キミがなるつもりか? 人族の間で一生汚名を着せられる覚悟はあるのか?」
「王は……、キュリアに任せるつもりだ。人の俺が、上位種を代表して人間と話しあえるなんてこれっぽっちも思ってない。でも彼女は龍だ。上位種の中でも高い地位にいたあのドラゴン。そして唯一人との親睦を深めたいと考えている龍。キューちゃんが王になれば……」
「それはできない」
アフロディーテは言葉を遮る。
キュリアが王になれない理由でもあるのか? たしかにまだ年齢は低く、今国をまとめる素質など見えるわけもない。だけど、国をつくりあげてる頃にはキュリアだって……。
「国を作り、その王になるには後ろに神がついていないといけない。もっというと、王と神が契約を結んでいないといけない。そういうとキミはボクとの契約をキュリアに移せばとか言い出すだろう。でもね、この契約は解約すれば最期、神と離れた人間はその場で死ぬ。生命力ごと抜き取られるんだ」
だから今の今まで、上位種から国が誕生したことはない。と付け加え、あらためて俺の方を見た。
王の座をキュリアに譲れば俺は死ぬ。だけど、俺が王になれば永遠と上位種と人が和解する未来はこない。
俺が死ねばいいだけ、それなら……。でも、俺が死んだらルナは、キュリアは、るんるんたちはどう思うだろうか。
俺が結論を出すまもなく、白い空間は暗転していき、アフロディーテの姿も見えなくなっていった。
彼女がどういう顔を最後にしていたのか、俺にはわからない。
王になるには神がついてないといけないとか聞いたことないぞ。いや、そもそもそんなことに興味がなかったから知らなかったというのもあるけど……。そうか、アフロディーテが俺から離れたら俺は死ぬのか……。
それでも俺は、これ以上上位種だけが苦しめられる世の中を続けていきたいとは思わない。
どうなろうと変えてやるんだ。絶対に──
アフロディーテの姿が完全に消えると同時に、俺の意識も途絶えた。




