第2話 彼の知らない顔
エルニャ「私と彼のキルフスは黒魔術同好会という少人数のサークルに毎日通っていたんだけど、その日、彼はサークルに顔を出さなかったの」
サークルにはエルニャとキルフス、それにビーコラの三人が在籍していた。
三人は皆、同い年の集まりだ。
その日、キルフスが欠席だったので二人で黒魔術の研究をしていた。
エルニャ「ねぇビーコラ、キルフスから何も聞いてない?」
ビーコラ「知らねぇよ、そんな奴」
エルニャはため息をついた。
サークルに関しては真面目なキルフスが無断で休む事は今まで無かった。
それに二人は付き合ってまだ半年なので会いたくて堪らなかった。
エルニャ「ビーコラ、今日ちょっと早退してもいいかな?用事思い出しちゃって」
ビーコラ「あん?どうせキルフスだろ?勝手にしろよ、俺は一人でやってるからいいよ別に!」
エルニャ「ごめんね、じゃあ私行くね、お疲れ様!」
エルニャは手早く帰る支度をして黒魔術同好会を後にした。
ビーコラ「チッ、あんな奴の何処がいいってんだよ、っざけやがって!畜生!」
ビーコラは手に持っていたペンをノートに思い切り突き刺した。
エルニャは早足でキルフスのアパートに向かっていた。
途中、街のパン屋でキルフスに差し入れを買った。
エルニャは文房具を入れたトートバッグを肩に掛けて紙袋に入ったパンを両手で抱えていた。
しばらく歩くと、アパートの近くまで辿り着いた。
もうすぐ会える、そう思うと胸が高鳴り、嬉しさの余り無意識に走り出していた。
ワンルームのアパート、キルフスの部屋の前に着くと、ポケットから合鍵を取り出してドアを開けた。
中に入って行くと話し声がする。
エルニャは中に入り、いつものキルフスのシングルベッドを見た。
それはとても信じられない状況だった。
そこには裸になっているキルフスが下半身に毛布を掛けて隣に寝ている女と親密に話をしていた。
エルニャはあまりの出来事にショックを受けて、持っていた荷物を腕から落とした。
床に荷物が落ちた音でエルニャに気づいたキルフスはこちらを見た。
するとエルニャを見るキルフスの顔は冷たく嘲笑うかの様な、悪魔の様な笑みを浮かべていた。
エルニャは怖かった。
その事態から逃げ出す為に渾身の力を使い部屋から逃げて来た。
アパートから離れた場所まで行くとエルニャは訳が分からず、只々辛すぎて泣き出した。
泣きながら実家に歩いて帰った。
エルニャ「それでその日から私は家に引き篭もる様になったの」
エルニャは両手で涙を拭きながらサーシャ達に話をしていた。




