10節 セレーナサイド
休憩回。
私は光の中で創造されました。まぶたの裏のまぶしさが弱まるのを感じて目を開けます。生まれた場所は何もない真っ白な小部屋でした。
部屋の中には私と目の前のマスターの二人だけです。こちら見つめるマスターが尋ねてきます。
「おれが君を創造したマスターだが、そのことはわかっているか?」
なぜかはわかりません。ですが、自分が生まれたことに気付いたときには、さまざまな知識があり、そして目の前の方こそが私の創造主、そしてマスターであることを理解していました。
「はい、マスター。私を創造していただきありがとうございます。この命、つくってくださったマスターのために使う所存です。」
このとき、すでにマスターへの忠誠心が私を満たしているのも当たり前です。こちらをジッと見るマスターの視線も私の忠誠心を試すものだと思っていました。だからこそのこの回答だったのですが。
「ありがとう。だが君は俺のパートナーにするために生み出した。ダンジョン全体の相談から家事などまでやってもらうつもりだが、このダンジョンでは唯一おれと最も対等に近い存在になってもらいたい。まあまだほかのやつは創造していないんだが。」
こんなこと、マスターのパートナーなどと、言われてしまったら、平常心が保てるはずがありません。マスターによって最初に創造された存在であるというだけでも冷静であり続ける自信などないというのに。
「本当によろしいのですか。私などがマスターのパートナーなど。」
声や表情も抑えようとしているが、自分の声が抑えきれず若干震えている気がします。顔もにやけていないでしょうか。
「ああ、先ほども言ったが、そのために君を作ったんだ。いろいろやることも山積みだけど、よろしく頼むよ。」
これほどうれしいことがあるでしょうか。忠誠心に加え、今ではマスターへの愛が自分の中にこの短い時間でうまれてきているのが実感できます。まだあってわずかに言葉を交わしただけですが。
「はい!マスター。これからよろしくお願いします。」
わたしがマスターにつき従う、まさに第一歩でした。マスターとの時は全てが思い出となるでしょうが、今後これほど鮮明に残り続けるものもないでしょう。
またマスター、いえゴッドは力あふれる創造主のような存在、いえ私にとってはまさに創造主そのものでありながら、やさしさにあふれたお方です。わたしが、
「わたしはマスターに創られた存在ですので、マスター。名づけていただけませんか?マスターの名前も教えてほしいです。パートナーとして。」
と言うと、私にセレーナという名、そして私の厚かましさにすら答えハートというゴッドと共有する姓を下さりました、そしてご自身の名前すら私にゆだねてくださったのです。ゴッドという我ながら安直な名前しか浮かびませんでした。それでも喜んでくださるのは慈愛とも言うべきものからでしょうか。
ゴッドは私にとって敬愛の対象であることは変わりませんが、ゴッドのそのやさしさが御身を滅ぼすことにならないか、など不安にもなりました。だからこそゴッドが隠蔽を希望されたとき、命をかけて守ろうと決意しつつ、より確実にしようと、洞窟などの偽造ダンジョンを提案したのです。
そこで私はゴッドの本当の力に気付きました。本当の強みは、その能力ではなく、それを行使する知略なのだと。注目されすぎず、それでいてダンジョン内で殺す。これを満たそうとしたとき、正直偽造ダンジョンなどはだれでも思いつくものでしょう。
しかしゴッドはこの考えの裏をいったのです。わたしのいった偽造ダンジョンとは、あくまでダンジョンを自然風にすることです。これは内部を細かく設定できる代わりに、ポイント消費がおおきいです。
それに対し、ゴッドの偽造ダンジョンとは、自然にそのままダンジョンとしての性格を持たせようというものでした。こちらは広範囲に少ないポイント消費でダンジョンを広げられます。
さらに、これならば拡大すればするほど、自動的にポイントが入ってくるようになるでしょう。同じように見えてまったく違うこの後者の案を咄嗟に思いつく知性。身が震えました。
すぐに必要だと思われる情報をコアに確認します。その際自分のポイントを確認し、さらに忠誠と愛が深まったのはいうまでもありません。今まで以上の覚悟で、このお方のお役に立とう。そう思えました。
その日の終わり、私が
「ゴッド、出ましたよ。お風呂、すごい気持ちよかったです。次は一緒に入ってくださいね。」
とねだったのも、少しばかり私欲も入っていましたが、本質はゴッドの疲れをお風呂で癒してさしあげようというものです、もちろん。
そして今朝、ついにダンジョンが開放されました。ダンジョンの開放をゴッドに従って目にした時といったらもう、言葉にすらなりませんでした。
さらにはその主力が私と召喚した精霊なんです。これはもうがんばるしかありません。それで早速動こうと思っていたんですが、やはりゴッドは私など及ぶ余地もないくらい冷静でした。
開放も何段階にもわけてチェックしつつやりましたし、罠を仕掛け終わっても、
「じゃあ、とりあえず戻ろうか。とりあえずダンジョンマスターとしての第一段階はこれでいいだろう。」
と遠まわしに私を止めてくださいました。このままだったら、勢いのままに魔物を狩りに行って、やられることはなくとも、ダンジョンにつながる手がかりを残してしまったかもしれません。そう諭されている事に気付き、一度落ち着くことにします。
「魔物が近づくまで、どうしてますか?ゴッド。監視は精霊に任せておけば大丈夫だと思うので、少し手持ち無沙汰になってしまいますが。」
「別にいいだろう。これからも常に働き続けるわけじゃないはずだ。またゆっくり話でもして時間をつぶそう。お昼にはまだ早いから、何か飲み物用意してくれるか?」
確かにそうです。パートナーならもっとゴッドの考えを読まなくては。
その後は私が用意したお茶を飲みつつ、雑談をしながら、ゆったりとしていました。話の中でゴッドが
「そういえばセレーナの体は普通のものなのか?」
と訊ねられましたが、これはゴッドの体のことも含めもちろん昨日のうちに確認済みです。理由はもちろん決まっています。ゴッドとの子供ができないということを知ったときは少し落ち込みました。
「はい、昨日コアにも確認を取ったので、そうだと思います。ゴッドの体は主にコアの力で構成されているんですよね。」
「ああ、そうだな。ということはセレーナには寿命もあるのか。」
ゴッドも少し残念そうな顔でおっしゃられます。それはそれでうれしいのですが、こんな大事なことを私がコアに確認していないはずがありません。
「コアの話では、Lvがあがれば、強化でゴッドの命と直結できるそうです。ですから、心配なさらなくても大丈夫です。一生お供しますよ、ゴッド。」




