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ひねくれ“悠榎”は、恋をしない  作者: 小梅沢田 明
高一の“伏見悠榎”は、心なしか夏休みを楽しみにしている。
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“伏見悠榎”が海を満喫する訳がない。

 砂浜は熱い。まだ俺は靴履いてるからまだマシも、こんなところを裸足で歩くと絶対火傷するだろ。何こいつらMなの? と思ってしまう位暑い。やはり夏だからといって海にいくのは間違っている。

 まぁ、俺と価値観が全く違う奴もいるのだけれど。その代表である神城はと言うと、


「きゃあ~~!!」


 と叫び倒しながら千夏と共に海水を掛け合って遊んでいる。ホントに無邪気っつーか、単にアホの子オーラ全快っつーか。まぁ、楽しそうなら別にいいや。

 ちなみに千夏の水着についてだが、どうやら来栖家所有の別荘にたまたま来栖の幼い頃の水着が存在していたらしく、それを借りて現在に至るのである。何故幼い頃の水着が? と思ったのもつい数分前の出来事である。

 こんなことを言うと軽く変態扱いされかねないのだけれど、いつ頃の水着だかは知らないが、その頃と比べたら来栖は格段に成長したようだ。いろんなところが……。


「……兄貴ぃ」

「……ふしみんのバーカ」

「………」


 来栖を執拗に見詰めすぎたのか、この後様々な方から避難を受けた事は言うまでもないことである。逢坂に限っては目を伏せたまま憐れみの溜息を溢されるまである。






 ぼっちの特性“人間観察”によると、人が違えば海での楽しみ方も違うらしく、それは勿論のこと我が隣人研究部りんじんけんきゅうぶに対しても例外ではないらしい。神城と千夏は別荘より持ち出したビーチボール的何かを打ち合って遊んでいる。逢坂は立てたパラソルの日陰に座り、ボーッと海を眺めている。水着に着替えたのなら海行けよ海。

 来栖は……何か寝そべっている。近くには日焼け止めらしき容器があり、それをカラカラ振りながら、「これを塗れ」と言わんばかりに俺を誘ってくる始末。当然の如く、俺はその誘いを断るのだけれど。

 さて、各位う俺はと言うと……。


「………」


 何かもうやることないので、海の家で一人、少し早めの昼食(ラーメン)を取っているのである。勿論、他の奴らを無視してである。


「………」


 各人それぞれが海を楽しむ中、ただ一人ズズズと麺を啜る俺。なにこれ悲しい。もしくは切ない。だが、これがいいのだ。何て言うの? こういうのがなんか俺らしいって言えば俺らしいと自分でも思う。一匹狼って言うの? まぁ、俺はそれとは違うけどな。

 ……さて、結果ラーメンをスープまで食べ尽くしてしまった訳だけど、今だ奴らは海を満喫しているようである。正直もう帰りたいんですけれど。

 ……おや? よく見ると何やら見知らぬ男性グループが逢坂&来栖の下に近寄っているようだ。

 なんと言う無謀な挑戦であろう。確かに美女を見つけたらナンパのひとつしてみたくなるのが男というものなのだろうけれど、全くの認識のないやつの誘いに乗るアホがどこにいるのだろうか。俺がナンパされる立場なら確実に拒否る自信がある。その前にナンパされない自信もあるのである。

 やはりというかなんというか、男性グループは案の定逢坂達に会話を求めてきた。逢坂はただそいつらをジッと睨み付けているようた。代わりに来栖がやつらに返事を返している。

 ……なかなか会話が途切れねぇなぁ。もしかして来栖は奴らの誘いに乗ろうとしているのか? 何て思ったが違ったようだ。さっきからどうすればいいの? オーラが来栖からプンプンと漂っていた。何てったって不意にキョロキョロし始めたかと思えば俺を見つけて、助けてほしそうにチラチラ見るんだもの。仕方ない、助け船を出してやろうか。やれやれと溜息をつきながら俺は来栖達の下へと向かうのであった。

 ある程度近付いた辺りで、


「……あら、ふしみん。帰ってきたのね?」


 と、口調はいつも通りであるが、さっきまでの不安げな表情をぱぁと輝かせて来栖が呟く。


「おい貴様、ふしみんって呼ぶな。鳥肌がたつだろうが」

「ふふふ、ごめんなさいね」


 こんな感じな会話を交わしていると、男性グループは軽く舌打ちをしてどこかに向かって歩き出したのであった。案外あっさりと帰るのな。


「……来栖ってああいう輩は苦手なわけなん?」

「いいえ。ああいう連中の対処は慣れているわ。今回はちょっと想定外に粘られただけよ」

「……それは、いつもああいうナンパ的何かをされていると言うことで?」

「……まぁ、そういうことかしらね」

「……さいですか」


 ……何だろう。ちょっとイラッとした。人にモテる奴らは大抵こういう考えなのだろうか。そんな奴らは爆発すればいいと思います。 


「……どうでもいい事かもしれないが、帰りたいんだけれど、俺」


 思っていることをそのまんま言葉にしてみた。するとやはりクスクス笑われて、


「そんなに帰りたいの? もう少し堪能してみたら?」


 と言われた。しかしこれ以上一体何を楽しめと言うのだろうか。お前らは水着に着替えているからまだましも、俺は私服そのままなのだぞ? そのままここにいると暑いことこの上ない。なにこれ新手のダイエット? って感じ。


「これ以上何を楽しめと?」

「例えば……私の水着姿……とか」

「嫌だよ」


 来栖の冗談混じりの一言をあっさりすんなり全力で拒否ってみた。ふざけていると殴ってしまいそうな位イラッとしたので。


「まぁ冗談はさておいて……」

「やはり冗談かよ」

「帰りたいならご勝手に。別荘までの道のりは覚えてる?」

「まぁ大体は覚えてるけれど」

「それならいいわ。迷子にならないよう気を付けてお帰り」

「……なんかその言い方イラッとする」


 まぁこの際そんなことはどうでもいい。来栖たちはもう少し遊んでから帰ると言っていたので、俺は誰かを待つことなくそそくさと、かの別荘への帰路を帰っていったのであった。

 勿論のこと迷うことなく別荘へと戻った俺は、そのままの足取りで荷物を置いた部屋へと向かい、鞄から小説をひとつ取り出して読み始めた。やはり俺はかくも儚いインドア派の人間なのであった。






 その後、他の奴らが海から帰ってきて、晩飯の準備に取りかかっていた……らしい。

 どうして曖昧な表記をしているのかと言うと、読書を始めて数十分後に俺は寝落ちをしてしまったのである。しかも恥ずかしながらそのまま次の日の朝まで爆睡だったのです。せめて風呂には入りたかったのだけれど……まぁいいや。

 こうして俺は、合宿での一日を終えたのであった。








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