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PROJECT♾️HEART-X─その涙に宿る心と絆─  作者: 陽月勝也
【第二章: ◇─ 蒼月の伝説・空白の五年─ 】       ─鋼の心が人間の鼓動を取り戻すまで─               ─ LUNAEDGE編          
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◇《第37話 刻の迷宮と深淵の闇 ― 試される絆》


赤い闇に染まるスカイ・カジノの中で、仲間たちは二つに引き裂かれた。


ルミナ率いるA班、そしてエリサ率いるB班。


それぞれ別の危険なステージへと叩き落とされた彼らだったが、目指す場所はただ一つ──仲間との再会。


互いの無事を信じ、彼らは新たな檻へと足を踏み入れる。



───────────────────


B班──時の間へ到着



扉が開いた瞬間、

エリサたちB班は圧倒的な静寂に包まれた。


足を踏み入れたのは、巨大な時計塔の内部のような円形の空間。

壁と床はすべて、重厚な歯車と精密な機構で覆われている。



ギィィィィ……


歯車がゆっくり動いている。


床には、光る円形の刻印が描かれ、その中央に六つの台座が並んでいる。


中心には赤く点灯し、秒針が刻むデジタルタイマー。


『TIME LIMIT: 30:00制限時間:30:00』


挿絵(By みてみん)


ムツミが悲鳴を上げる。


「ヒィィィィィィ!!! 30分!? これ絶対頭使うやつじゃん!」


アサヒはため息をついた。


「いや、もっとヤベぇやつだろこれ……」


天井を見上げると、巨大な鉄骨の天井がギシギシと音を立て、少しずつ低く降りてきている。


「おい……あの天井、時間が過ぎたらオレたちを押し潰す気だぞ!」


タカが叫ぶ。


エリサは冷静に中央の装置へ歩み寄り、6つの台座を見つめた。


「時間制限付きの歯車パズルね。壁に埋め込まれた50個の歯車から、正しい『色』と『形』の6個を選び出し、順番通りにセットすればタイマーは止まるわ」


タカが周囲を見渡し叫ぶ。


「歯車なんかどこにあるんだよ!?」


ヨシマサが指をさした。


「……あれじゃねーか?壁の高いところにめっちゃ刺さってるけど……?」


見ると、

巨大な壁一面に 50個くらいの歯車が貼りついている。


「50個の中から探すのかよ!? 正しい順番なんてどうやってわかるんだ!?」


アサヒが焦燥を隠せない。


「壁の数字を見て! 青く光っている数字の順番がヒントよ。タカ、ヨシマサ! 私が指定する歯車を壁から引っ張り出して!」


「おう! わ、わかった!」


タカとヨシマサは巨大な歯車を引っ張り始めた。



───────────────────


ルミナ側、A班──深淵(しんえい)の回廊(かいろう)




一方、A班(ルミナ、マキ、ユーキ)が飛び込んだのは、ネオンの光も届かない、文字通り漆黒の回廊だった。

床は湿った金属質で、天井は遥か高く見えない。


「真っ暗だ……なんも見えないぞ」

ユーキが恐る恐る手を伸ばす。


マキはルミナの服を掴んで離さない。

「や、やだ、何がいるかわかんないよぉ!」


ユーキはいつも持ち歩いてる小型ライトをポケットから取り出して点灯する。




(『深淵』……物理的な敵じゃない。ここでは、五感が試される)


ルミナの紫色の瞳が、わずかな光の粒子を捉えようとしたその瞬間、ルミナの足元から、巨大な影が音もなく立ち上がった。


その瞬間、異様な『カチカチ』という不快な金属音が響き渡る。



「マキ、ユーキ。絶対に騒がないで。『音』が最大の罠よ。それに『光』も頼りにならない」


「な、なんだアイツ!?」


挿絵(By みてみん)


ユーキが息を飲む。


「あれは、『音響感知型』の敵。

光や音に反応して動く。おそらくあの突起は……」



ルミナは、破かれた生地の切れ端を放り投げた。

切れ端が影に触れた途端、瞬時に切り刻まれ、粉塵になった。


「……あの突起は…『振動カッター』。少しでも触れたら、私たち死ぬわ」


ルミナはライトを消すよう指示し、再び暗闇の中へと身を沈めた。



───────────────────


エリサ側、B班──



色の空間では、タイマーが15:00を切る中、B班のパズルは難航していた。


「クソッ、この赤の歯車か!?」


タカが焦って歯車を台座に押し込む。


カチリ。


わずかな噛み合わせのズレ。

その瞬間、デジタルタイマーの表示が真紅に点滅した。


『ERROR』



ガゴォォォンッ!!!


床全体が跳ね上がり、全員がドンと下に叩きつけられる!

同時に、頭上の巨大な鉄骨が一気に1メートルもガクンと降下してきた!




「うわあっ!?ちょ、ちょっと待って待って待って!!今のマジで死ぬやつだったでしょ!?」


ムツミが顔面蒼白になり、完全に腰が抜けた状態でその場にへたり込む。


「一回のミスで、このペナルティ。ミスは絶対に避けなきゃいけないわね」


エリサは、荒くなりかけた呼吸を意識的に整えながら、タイマーを睨みつけた。


「タカ!違うわ、その色は罠よ、台座の『形』を優先して!」


エリサが即座に指示を修正する。


ヨシマサも焦っていた。


「クソッ、この歯車は数字の『6』の形に合うはずなのに、どれだ…」


「ヨシマサ、その歯車は『6』じゃなくて、『9』に対応しているんじゃないかしら?数字の向きが鏡合わせになっているのかもしれないわ」


「えっ…マジかよ!こんなの意地悪すぎだろ!」


エリサが、冷静にタカとヨシマサの間違いを指摘し、アドバイスする。


(エリサのやつ……なんて頭の回転の速さだ……!)


アサヒは、凄まじいスピードで謎を見抜くエリサの横顔に息を呑んだ。



そしてムツミは、恐怖で完全に腰が抜け、床に座り込んだまま耳を塞いで泣き出してしまう。


「む、無理!!死ぬ!!絶対死ぬってば!!!もうやめてー!やだやだ!ルミナぁ……早く来てよぉ!うわぁぁん!!」


アサヒがムツミを揺さぶる。


「ムツミ!しっかりしろ!今はオレたちだけでなんとかするしかねぇんだぞ!」



エリサは、血の滲む腕を抑えながら、ムツミの傍まで駆け寄り、ムツミの瞳を真っ直ぐに見つめた。


「ムツミ。あなたは、ルミナの大事な友達でしょう?ルミナもきっと合流を急いでいるはずよ。それは私たちを心配しながらも全員が無事だと信じているからよ。あなたが今、諦めてパニックになれば、この後に会えるはずのルミナに会えなくなってしまう可能性だってある。それでもいいの?今ここで私たちが力を合わせれば、必ず後でルミナに会えるのよ」


ムツミは、その言葉にハッと顔を上げた。

必ず後でルミナに会えるという言葉がムツミの心に強く響き、恐怖に震えながらも、ムツミは必死にうなずいた。


「そ、そうだよね……。こーゆー時こそ、前を向かなきゃだもんね…わかった。でも……早くルミナ来てぇ( ; ; )」


自分自身を落ち着かせ、強く心を持とうと自分に言い聞かせようとしていた。


エリサはムツミに微笑む。


「怖いわよね。私だって本当は怖いわ…でもこういう時こそ怖がってられないわ…」


そして再び気を取り直し、指示を出し始める。


「ヨシマサ、あの紫の歯車を持って。それに対応しているわ。タカは一番大きなオレンジの歯車よ!」



タカとヨシマサは、エリサの指示に従い、残り時間を削りながら次々と歯車を組み込んでいく。

ムツミも、小さなレバーの位置を指し示すなど、サポート役に徹していた。


エリサは汗を流しながら壁の振動を読み取る。


(……歯車の配置が意図的に変えられてるわ…

プログラムが独自に動いてる……?)


エリサは違和感を感じていた。


(これはやっぱり、イヨナじゃない……)




───────────────────


ルミナ側A班──



深淵の回廊では、極限の緊張状態が続いていた。

ルミナは、全身の筋肉を硬質化させ、空気の振動を最小限に抑え、回廊を滑るように進んでいた。

マキとユーキは、恐怖で呼吸すら忘れている。


「回廊の先には、わずかに青白い光が見える。出口はあそこね」


(距離は……約50メートル。番人の位置を見る限り左と右に2体はいるってことね。音を立てずに突破しなければ)


一歩、二歩……。



番人たちは、無音のルミナには反応しない。

しかし、足元に小さな水たまりがあり、マキは水たまりを避けようと、一瞬体重を傾けた。


ピチャ……!


極限の静寂の中、わずかな水音が響いた!


ガチィィィィン!!


水音にそこから近い番人が、超高速で振動カッターを起動させ、マキめがけて襲いかかってきた!


「きゃーーー!!ルミナー!」


マキは泣きそうな顔になっている。


「しまった!マキ!」


ルミナは、マキの手を引っ張り、避けるために音を出すことを恐れ、反射的に、そのままマキを抱え、身体のバネのみを使い、その場で真上に跳躍!


挿絵(By みてみん)


番人の振動カッターは、ルミナのヒールの裏をわずかにかすめ、床を豆腐のように切り刻んだ。

ルミナは、着地と同時に2体の番人が自分を認識したことを察した。


「マキ?大丈夫?」


ルミナは、無音を諦め、極限の反射神経とリズム感に頼った戦い方にシフトし、戦闘態勢に入った。

 

ズシャアアアア!


「ユーキ!マキを連れて私から離れて」


左右から、番人の猛攻が始まった!

ルミナは、二人の盾となり、連続のバク転と低姿勢の回避で刃をすり抜ける。

しかし、この回避行動で微細な風切り音が発生し、番人たちの動きはさらに加速する。


「マズい……!振動が速すぎる!」


番人たちは、ルミナのわずかな足音と、鼓動のリズムを察知し、振動カッターを振り回してくる。

回廊は、超高速で動く刃の迷路と化していた。

ルミナは、刃と刃の間をダンスを踊るようにすり抜け、絶対に壁や床を大きく蹴りつけないよう、体のバネだけで進んでいく。

しかしルミナは、防御に徹することで、一瞬、動けなくなる。


だがその時ユーキは、一瞬光った何かに気づいた。


「なんだ、今のは…? ん?この回廊の材質と構造…。あの光のパターンは何を?…」


ユーキは、周囲の壁の構造に気付いた。


「そうか…そうだったのか!わかったぞ。あの光、一定の間隔で微弱な電磁波を出してる!あれは、トラップだ。本物の出口は光が消えた瞬間、わずかに別の場所に浮かび上がる『影』の場所だ!」


ルミナはユーキの一言に振り向く。


「影…?」


ルミナは、鏡の回廊での経験を思い出した。

今までの敵は、『影』や『コピー』といった、実体のない罠を好む。


ルミナは、番人の猛攻をかわしながら、メカなどに関して詳しい知識を持っているユーキの解析を信じ、出口の光が消えるのを待った。

バイクなどメカのメンテナンスが得意なユーキの知識がここで役にたつ。


ルミナは、番人の振動カッターを両手で受け流し、それを受け止め後ろに移動した。

そして数秒間、動きを止める。


「ユーキ!影の場所が正確に見えたら、私がこいつらを引きつけておくから、その隙にマキを連れてすぐにここから逃げて」


ルミナは、もはや自分が盾になることしか考えていなかった。

出口の青白い光が、ゆっくりと力を失い完全に消えた。

その瞬間、ユーキの足元から一歩先の床に、壁の磁場にできたわずかな黒い影が浮かび上がった!


「見えた!あそこだ!」


ルミナは叫んだ。


「マキ!ユーキ!今よ!走って」


ユーキは、いまだかつてないほどのダッシュで、迷うことなく、ルミナとマキの2人を両腕に抱きかかえた。

ルミナは一瞬、ユーキを見て驚きに目を見開く。


「オレはルミナ一人を置いていくなんて、絶対にできねぇ!」


ユーキは、ルミナの紫の瞳をまっすぐに見つめ、強く言い切った。


「3人でここまで来たんだ!オレが、その絆を背負って連れて行くんだー!」



その時、深淵の番人は今、ユーキという獲物に標的を定めた。


ルミナの背筋に、冷たい汗が流れた。


「ユーキ!無理しちゃダメ……あれ、完全にユーキをロックオンしてる!」


ルミナがそう理解した時には、もうユーキは地面を蹴り出していた。


「うおぉぉぉーーー!!」


ユーキの全身のバネが今、ここで爆発する!!


彼は、全速力で影めがけてダッシュした!


挿絵(By みてみん)


その瞬間、追撃してきた番人の振動カッターが、ユーキの背後の空気を容赦なく切り裂く!


ズガァァァン!!


さらに挟み撃ちを狙うもう一体の番人の刃が、ユーキの足元を襲う!


ズガガガァン!!


追撃してきた番人たちの振動カッターが、ユーキの背後を立て続けに切り裂いていくが、ユーキの決死のスピードがわずかに勝り、間一髪ですべての刃をかわしていく!


影のポイントへ到達した瞬間、ユーキの体重と勢いで床のトラップドアが開き、三人は轟音とともに次のフロアへと落下した。



そこはB5階の通路だった。

ルミナは、ユーキの腕から静かに降りた。


「ユーキ……ありがとう。助かったわ。凄いのね、あなた!カッコよかったわよ」


ルミナはユーキの肩にそっと触れた。

ユーキは顔を赤くしながらも、得意げに笑った。


「そりゃ、オレだって男だ!助けてもらってばっかじゃ、なんか情けねーし。それにルミナとマキを守りたかったから」


通路の壁には、緑色に光る紋様が刻まれている。


『CRYSTAL MAZE : B5F』


そして台座にクリスタルが浮かび上がった。

ルミナは3つ目のクリスタルを手に取った。


「深淵の回廊を通ってB5階のクリスタル・メイズ...」


ルミナは、かすかに笑みを浮かべた。



───────────────────


エリサ側B班──



エリサ率いるB班は、エリサの冷静な指揮と、ムツミがパニックを乗り越えたことで、B班の連携が奇跡的に回復していた。


「ムツミ!あなたは、周囲の小さな機構に目を向けて。この部屋全体がテコの原理で動いているはず」


「タカ、ヨシマサ!最後の歯車は、オレンジに対応する最も大きな歯車よ!」


しかし、タイマーが04:00を割った時、彼らは最大の壁にぶち当たった。



「クソッ、最後の歯車が重すぎて持ち上がらねぇ!

これじゃ、オレたち二人でも持てねぇぞ!」


タカとヨシマサが悲鳴を上げる。


最後の歯車は、他の歯車より遥かに重さがあり、設置場所から一番遠い場所にあった。


挿絵(By みてみん)


「私も手伝うわ」


エリサとアサヒも一緒になって持ち上げようとするが力を合わせても持つ事ができない。



タイマーが02:00を示す。


刻々と時間はタイムアップにせまろうとしている。

最後の歯車は、他のどのパーツよりも大きく重く、表面にはオレンジ色のマークが刻まれていた。

天井の鉄骨は、彼らの頭上わずか数メートルまで迫っており、軋む音が恐怖を煽る。


そしてエリサがムツミの方を見て叫ぶ。


「諦めちゃだめよ!ムツミ!」


ムツミは、恐怖で震えながらも、壁全体を見渡す。

そして、壁のわずかな隙間に、小さな制御パネルと隠しレバーを発見した!


「あった!あったよレバー。回せばどうにかなる!?」


「回して! それはおそらく一時的に重力をズラして減衰させるレバーよ!私の考えが合ってればね」


ムツミは、力の限りレバーを回した!


「みんな、今よ!残り20秒!」


「よし、軽くなった!」


「運べるぞ、いくぞヨシマサ!」


エリサ達B班は体感重量が半減したわずかな数秒の間に巨大な歯車を台座の前に運び終える。

天井の鉄骨が、ついに彼らの髪の毛をかすめる時、

エリサが指示を出す。



残り15秒──!


「急いで!時計回りに設置よ!」


全員が力をあわせ、ギリギリの力で歯車を台座に押し込んだ。



──カチリ。


歯車が組み込まれた瞬間、全ての歯車が完璧な精度で連動し、空間全体に美しい金属音が響き渡った。


タイマーは『0:03』でストップ。


頭上の鉄骨もピタリと止まり、全員がその場に崩れ落ち、安堵と疲労の息を吐いた。


「…………えっ?助かった……の……?」


ムツミは震えながら見回した。


「イヨナお姉様、趣味悪すぎるだろ……!」


タカはグッタリしている。



エリサは整わない息のまま、ぽつりと静かに呟いた。


「……違う。この仕掛け、イヨナじゃないわ。このパズル……それに、誰かが私たちのルートを意図的に変えている……もしかしたらこの迷宮には……イヨナ以外の支配者がいるのかも…」



全員が静まりかえった。


「イヨナなら、もっと派手なエンターテイメントな演出を好む。それにこんな本当に死ぬかもしれない仕掛け、絶対にしないわ」



「マジか……じゃあ誰が……?」


全員が息を呑む。


パズルの成功により、時の間を突破したB班に中央の台座が光を放ち、第3のクリスタルの破片がゆっくりと浮かび上がった。


エリサはクリスタルを手に取る。

すると制御盤に表示された次のステージのヒントが浮かび上がった。


『CRYSTAL MAZE : B5F』


「クリスタル・メイズ...!制御盤を見る限りルミナたちもそこに向かってるみたい。無事のようね。ついに合流できるわ!」


ムツミが、喜びのあまりエリサに抱きついた。

エリサも、安堵と興奮を隠せない。


「ええ。あっちのルートにあった険しいエリアも、ルミナたちならきっと突破してB5階にたどり着いているはずよ。第3の鍵(クリスタル)も、向こうで手に入れているかもしれないわ。急いで向かいましょう!」



二つのチームは、互いの存在を信じ、カジノの最深部、B5階のクリスタル・メイズへと向かう。


次回

《PROJECT∞HEART-X 第38話》

( ── LUNAEDGE編 第14話:深淵の真実 ― 信頼を賭けたステージ)

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