◇《第33話 天空の檻 ― スカイ・カジノ・B9》
【LUNA EDGE ─ 仲間想いの頑張り屋】
オレはユーキ。
こういう自己紹介って、何言えばいいんだろ…。
オレは昔から、あんまり自分に自信があるタイプじゃなかった。
でも、LUNA EDGEのみんなと出会って、少しずつ変わることができたんだ。
仲間のためなら、オレは何だって頑張れる。
「オレだって、やればできるんだ!」
その言葉を胸に、今日も前へ進んでる。
オレのことも、本編を読めば少しずつわかってもらえると思う。
それじゃ、本編で会おう。
そして次の日、LUNA EDGEは、ドレスコードの問題を抱え、裏街の古着屋や質屋を回るも、カジノのセキュリティを欺けるレベルの衣装は見つからない。
焦りがピークに達したその時だった。
ムツミとマキがルミナをチラチラと慌ただしい様子で心配そうに見ている事にアサヒが勘付いた。
「ムツミ?マキ?どうかしたのか?」
その問いに二人ははぐらかす。
「え?あ、なんでもないよ…」
「もしかしてさ…昨日の夜の事か?」
ムツミとマキは目を見開いた。
「アサヒ、あんたもまさか、起きてたの?」
アサヒは頭を掻きながら話し始めた。
「スカイカジノの事を考えてたら、なんか眠れなくてよ。そしたらルミナの声が聞こえてきちまって………」
マキとムツミはお互いに顔を見合わせ、ションボリと下を向いた。
「実は、うちらも途中で目覚めちゃってさ。そしたらルミナが泣いてたの……。
ルミナ大丈夫かなぁ?心配だよぉ( ; ; )
あの子の事だから、みんなに心配させないようにって、きっと強がって振る舞ってるんだと思う…」
アサヒもどうしたもんかと、腕を組んで悩んでいる。
「何かオレらがしてやれる事があればな……とにかくルミナが泣いてたってのは3人の秘密だぞ」
マキとムツミもアサヒの言葉に反応した。
「当たり前でしょ!そう言ってるアサヒも周りに喋べんないでよ。ルミナが可哀想だし!」
ユーキ達は、昨日の事は何もわからずにドレスコードの事を話しこんでいる。
それからしばらくして、彼らが身を潜めていた路地の入口に、一台の超高級リムジンが音もなく停車した。
リムジンの車体には、あの巨大財閥のシンボルが微かに刻まれている。
リムジンの後部座席のドアが開き、黒のサングラスをかけ、最高級のファーを羽織り、ルビー色のロングヘアーを靡かせる1人の女性が降りてきた。
女性は、近くにある裏街のブティックとは思えない、煌びやかな店に迷いなく入っていく。
そこは、裏のコネクションを持つ富豪だけが知る特別な場所だった。
ルミナたちLUNA EDGEのメンバーは、路地の影からその女性の行動を圧倒されながら見ていた。
「す、凄い……」
マキが、思わず息を呑む。
「あの店、超セレブ向けの店よ。でも見た感じ、うちらと歳同じくらいじゃない?」
そしてしばらくして、店員が何十枚もの高級な衣装ケースを慌ただしくリムジンに運び込む。
「ちょ、ちょっと待って……あのドレス……あれ、数百万は軽くするヴィンテージのコレクションよ。あれをいくつも買っていくなんて……」
ムツミが、信じられないものを見たように、目を大きく見開いた。
「凄い……あの女、一体何者なんだ……」
ヨシマサが、呆然としたようにつぶやいた。
彼らにとって、それは文字通り別世界の出来事だった。
その女性が店員に指示を出し終え、再びリムジンへ乗り込もうと立ち止まった、その瞬間だった。
ルミナは、路地の影で、その女性を静かに観察していた。
その強気なオーラと、圧倒的な風格に、ヨシマサが小さく呟いた。
「ん?……あのリムジンの紋章、まさか…」
ムツミとマキも顔を見合わせる。
「ねぇ、ムツミ…あの女の子、どこかで見たことあるって思ってたけど……絶対そうだよね…」
彼女は、何かに導かれるように、一瞬だけサングラス越しにルミナたちのいる路地の影に目を向けた。
ルミナの紫の瞳と、その女性のサングラスの奥に隠された視線が、初めて交差する。
ルミナの眼には、その女性の傲慢な風格と孤独なオーラが映っていた。
一方、彼女の心臓は、ルミナに対してまるで何かの記憶のスイッチが入ったように、一瞬だけ強く跳ねた。
(ん?この青い髪の子……何、この眼……奥に優しさを持った力強い目をしてる)
彼女のワガママな好奇心と、運命的な繋がりが、彼女の行動を突き動かした。
彼女はリムジンに乗り込まず、踵を返してルミナたちが潜む路地の入口へと歩み寄った。
彼女は、LUNA EDGEの前に来て冷たい視線で彼らを見下ろしながら話しかけた。
「ちょっと、あなたたち。そんな惨めな表情で何をしているの?」
ルミナはその質問を無視し、逆に問い返した。
「あなた、誰?」
女性は、鼻で笑うように答えた。
「私?エリサ。私の名前なんてそんなのどうでもいいじゃない! で、先に私が聞いてるんだけど、見たところトワイライトの人じゃないわよね?」
その強気な態度と、圧倒的な風格に、ヨシマサとタカは言葉を失う。
アサヒが、一歩前に出て答えた。
「オレたちは、どうしてスカイカジノへ行かなきゃなんだ。ドレスコードをなんとかしようとして、古着屋や質屋を回っていたところだ。どこかいいとこあれば教えてほしい」
エリサは、その言葉を聞いて、ルミナたちを頭から足先まで、ジーッと見つめた。
彼女は、彼らの瞳の奥に、自分の知る上流階級にはない、必死な切望を感じ取っていた。
(こんな連中が、そこまでして行きたい場所……何か理由があるに違いないわね。)
そして、エリサは鼻でフッと笑った。
「古着屋? あなたたち、スカイカジノがどんなとこか知ってんの? あそこは最上層しか入れない、光の宮殿よ」
エリサは、彼らの努力を容赦なく踏みにじるような、厳しい言葉を投げつけた。
「そこらへんの古着屋なんかで買ったような服なんか、ドレスコードのドの字にすらならないわよ。
イヨナの罠に、道化師の衣装で飛び込むようなものよ。諦めてとっとと帰る事ね」
その時、ムツミがハッとしたように、マキにだけ聞こえる声で囁いた。
「やっぱり間違いないわ!あの顔、オーラにあの佇まい、ほら、いつも雑誌で取り上げられてる、あの有名な……」
そしてエリサの容赦ない嘲笑、その強気な態度と、圧倒的な風格そしてカジノの詳細を知る口ぶりに、ムツミとマキは顔を見合わせ、確信を得た。
「ヴェスパーグループのご令嬢だーっ!!」
ムツミとマキは、目の前の大財閥令嬢との遭遇に、恐怖と感激が入り混じったような大声をあげ、場違いな興奮に震えた。
ユーキやタカ、ヨシマサが驚いて二人を見るが、エリサは正体をバラされても動じる様子はない。
「うるさいわね」
エリサは、二人のミーハーな反応にうんざりしたように、ワガママな優位性を保ち続けた。
しかし、その言葉の直後、ルミナがエリサの言葉の核心を鋭く突いた。
「さっきイヨナって言った?イヨナを知ってるの?」
ルミナの紫の瞳が、エリサのサングラスの奥を貫くように見つめた。
エリサは、その鋭い視線に一瞬だけたじろいだが、すぐに傲慢な笑みを浮かべた。
「ふん!あのタカビーな女なら嫌ってほど知ってるわよ」
ルミナは、エリサの態度を無視し、命令するように言い放った。
「知ってるならイヨナの情報教えなさい!」
この全く遠慮のないルミナの態度に、エリサのプライドが激しく動いた。
「はぁ?何よあんた、私が誰だか分かってるの?」
「ヴェスパーグループのお・嬢・さ・ま、!
つべこべと、ごたく並べてないで、聞いてんだから早く教えなさいって言ってんのよ!」
「なんですって?生意気よ、あんた!」
「うるさいわね。先に嫌味ったらしく言ってきたのはそっちでしょ!」
「思った事を言っただけじゃない。あんたみたいな生意気な口きいてくるやつなんて初めてよ!」
「あ、そぉ!誰もまともに話しの相手すらしてくれないなんて、あー可哀想。私なんて、か弱くて可愛いからみんながルミナちゃんって、優しくしてくれるんだから」
「なによ、その青っぽい髪。クールでも演出してるつもりなの?バカみたい!笑えるわ。私なんて上品なルビー色なのよ」
「な、なな、なんですってー?言ったわねぇ、そっちこそ何よ!
髪がルビー色!?てっきりその性格の悪さとガサツ過ぎて、返り血を浴びまくって髪が赤く染まった下品な女なのかと思ったわ」
「な?…ちょ…あんた!もう一回言ってみなさいよ」
エリサとルミナは、互いの強すぎるプライドと2人とも気が強いツンケンした性格が激しくぶつかり合い、その間に火花が散った。
その凄まじい女の戦いを前に、LUNA EDGEの男性陣とムツミ・マキは、静かに言葉を失った。
「なんか話しがズレてきてるような…」
ユーキは呆然としている。
そしてムツミとマキが冷や汗をかきながら仲裁に入ろうとする。
「まぁ、まぁ、落ち着いて二人とも……(汗)」
ヨシマサは口を大きく開け、タカと顔を見合わせた。
「あのヴェスパーの令嬢に一歩も引かないなんて、さすがルミナだぜ……これは女の闘いってやつか?…」
「あぁ、おっかねぇなぁ……(汗)」
アサヒだけが、頭を抱えながら、この状況の収拾のつかなさにため息をついた。
「「フン!!」」
ルミナとエリサは2人とも腕を組み同時に逆方向にそっぽ向いてしまった。
そんな時にムツミとマキが、遠慮がちにエリサに話しかけた。
「あ、あのぉ〜、エリサさん?そのイヨナの事なんだけど、どんな女なんですか?よかったら少し教えてほしーなーって思って…」
エリサはムスッとしたまま質問に答え出す。
「イヨナ?あの女、私の事を仔猫ちゃんとか、子供は帰ってオネンネしてなさい!
とか言うのよー!あーー、思い出したらイライラしてきたわ!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾」
「え?…そこ?(苦笑)
いやぁ〜、そういう情報ではなくて、どういう立場とかどんなことしてるとか、そういう事を教えて欲しいんだけども…(・・;)」
その時、突然それまで黙っていたルミナが冷たい声でトーンを合わせて話に割って入ってきた。
「なんですって?仔猫ちゃん?子供は帰ってオネンネしてなさい?それは頭にくるわね!」
ムツミとマキはポカンとしてルミナを振り返る。
エリサはルミナの顔を見て、パッと目を輝かせた。
「でしょー!? わかってくれる? あんた、生意気だけど話がわかるじゃない!」
ルミナはフンと鼻を鳴らしつつ、エリサを真っ直ぐ見据えた。
「ええ。そのイヨナって女、もの凄く性格が悪いってことがよく分かったわ」
エリサとルミナは、お互いに腕を組んだまま、フッと不敵な笑みを交わした。
「あなたとは、妙に気が合いそうね」
「私も今、同じことを思っていたわ。いいわ、スカイ・カジノね。私が一肌脱いで協力してあげるわ」
ほんの数秒前まで火花を散らしていた二人が、一瞬でダークな同盟を結んだ光景に、アサヒたちは完全に放心状態だった。
「なんかよくわからないけど、仲直りしたぞ…
なんて単純な2人だ……さっきの言い合いはなんだったんだ…(汗)」
ルミナとエリサの2人は手と手をガシッと握り合った(笑)
「さて、善は急げよ。スカイ・カジノへ行きたいんでしょ? 私に任せなさい。そんな格好じゃ裏口のゴミ箱にすら入れないわよ。私、あのカジノの裏も表も全部知っているの。スカイ・カジノは私の知り合いもたくさんいるし、なんかあったら、力になれるわよ! 私がいる限り、イヨナの好きにはさせないから」
エリサは最後に、自信たっぷりに微笑んだ。
世界の経済界を動かすと言われる大財閥のお嬢様が自分たちの目の前にいるのだ。
しかも協力してくれると言う。
ルミナが、再びエリサに問いかける。
「で?あなたの目的は何なのよ」
エリサはサングラスを少し下げ、紅い瞳でルミナを見つめた。
「面白そうだからに決まってんじゃない。私、退屈は嫌いなの! それに私はあのイヨナが大っ嫌いだから。それだけで十分でしょ?」
そしてルミナもニッと口角をあげて言った。
ルミナは、エリサの傲慢さの裏に、何か深い孤独を抱えていることを感じ取った。
「まぁいいわ。あなたの言う事に従ってあげる」
エリサは満足そうに笑い、サングラスをかけ直した。
エリサは、ルミナの強烈な目力に押し負けることなく、その気の強さに自分と同じ種類の孤独な魂を見出し、フッと冷たく笑った。
「決まりね。あなたたち男子4人、その格好じゃ、あまりにみすぼらしいわ。みんな最高舞台に行くからには最高のコーディネートに仕上げてあげるわ」
LUNA EDGEのメンバー全員が、エリサの強引さに抗うことなく、ヴェスパーグループのリムジンに押し込まれた。
リムジンは静かに、トワイライトの下層から、光の眩しい表通りへと滑り出していく。
「ちょっと、どこへ向かってるんだ?」
ユーキが焦って尋ねる。
「最高の舞台に上げるんだから、一流を身を包むのは当然でしょう?」
エリサは、ルミナに隣の席を陣取り、優雅に足を組みながら答えた。
「ところであなた達、なんでイヨナなんてあんな危険な女を探してるのよ?」
エリサは不思議そうに問いかけてきた。
そしてアサヒが答える。
「実はオレたちはサウス・ベイサイドタウンから来たんだ。
オレたちの先輩がある日を境にパッタリと姿を消しちまった。
だけどトワイライト・メトロポリスで見たって目撃情報を聞いたんだ。そしてその人は行方不明になった妹を探していた。あれから急に姿消すなんてきっと何かに巻き込まれたんじゃないかって思って、探すためにきたんだ。そして、そういう類ならイヨナって情報屋が外せないって聞いてな」
アサヒは事の発端をエリサに説明した後、エリサが眉を上に潜めた。
「イヨナが情報屋?あんた達もよくわからない噂に流されてたわけね…確かにあの女は裏の情報には長けてるけど、情報屋じゃないわよ。
イヨナはノクターナ・コネクションのボスの第一級の専属秘書よ」
そう言い放ったエリサにムツミとマキが聞き返す。
「ノクターナ・コネクション?
それってあのエンターテイメント業界でトップのあの有名な? イヨナがそこのボスの専属秘書?」
「……そうよ。
まさか、その様子だと何もわかってなくてイヨナを探してた感じね。勇敢と言うより無謀だわ。
ノクターナ・コネクションはエンターテイメント業界の第一線を走る企業だけどそれは表向き。
裏の実態はマフィアの組織で、裏経済、闇金融、裏情報、カジノ、密売とかを主体にしてる。プロの殺し屋までいる厄介でとんでもないほどの秘密結社、巨大シンジケートよ。
うちのおじい様ですら、警戒してるわ」
ムツミとマキが食いついた。
「まさかお祖父様ってあの、政財界の重鎮とかフィクサーって呼ばれてる幻十郎って方ですよね…」
「そうよ、当たり前でしょ。他に誰がいるっていうのよ」
それを聞いた一同は目を見開き沈黙が続いた。
沈黙を破ったのはヨシマサとタカだった。
「マフィア……って、おいおい…マジかよ……。
って事はオレら、すげぇヤバいとこに足を踏み入れようとしてるってことだよな?…」
アサヒやムツミ、マキまでもが言葉を失っていた。
ただ1人、何も動じることなく静かに話しを聞いているのはルミナ1人だけだった。
そして走る事、数十分。
彼らが連れてこられたのは、トワイライト・ヒルズの高級ショッピングエリアにある、会員制のブティックだった。
『ル・ソレイユ・エテルネル(永遠の太陽)』
と書いてある。
店のエントランスには、通常通り警備員が立っていたが、エリサがサングラスを外し、ヴェスパーの令嬢であることが一目でわかる顔を見せると、警備員は即座に頭を下げ、店は貸し切り状態になった。
「……あのバッグ、最新作の限定品よ!」
ムツミとマキはテンションが爆上げだった。
その時、奥から店長らしき人物が駆け足でエントランスまで走ってきてすぐさま頭を下げた。
「エリサお嬢様。このたびはお買い物でございましょうか?ただちにご要望の物を承ります」
「今回は私じゃないの。この7人よ。もちろん金額はいくらになっても構わないわ。私の趣味に合うように、完璧なコーディネートに仕上げてちょうだい」
エリサは、まるでマネキンを選ぶようにLUNA EDGEのメンバーを指さし、店長に有無を言わせぬ指示を出した。
「はい!かしこまりました。すぐに最高の物を用意いたします。」
店長はスタッフ一同にすぐに指示を出しはじめた。
「そこの紫の目の娘には、最も冷たく、最も光を放つようなシルバーを。
そして、その筋肉質の二人には、最高にクラシックなタキシードを。
女性2人には華やかで最高にゴージャスなものを」
男性陣は、プロのスタイリストに囲まれ、体格に合わせたオーダーメイドのようなタキシードを次々と試着させられる。
特にタカとヨシマサは、ネクタイを締められるたびに苦悶の表情を浮かべた。
ムツミとマキは、夢のような高級ブランド品の山に、興奮と緊張で目が回りそうになっていた。
ムツミが、手渡されたドレスの裾を恐る恐る触りながら、取り付けられた小さなタグに目が釘付けになった。
「ん?……」
ムツミは、震える指で値札を追った。
「ひー、ふー、みー……えっ…(汗)」
隣でアクセサリーを試着していたマキも、ムツミの顔色を見て、慌てて手元の値札を確認する。
「ちょっ、なんなのこの値段っ!桁が違うわよっ!」
二人は、目を点にして驚愕し、互いに顔を見合わせた。
「汚したり、傷つけたりしたら……大変よ……」
ムツミは、ドレスから手を放し、まるで爆弾を扱うかのように静かにハンガーに戻した。
「弁償とかそんな心配する必要ないわ」
エリサは、奥のソファで優雅に紅茶を飲みながら、冷たく言い放った。
「あなたたちは、私の人形なの。あなたたちに払えなんて言うわけないでしょ。それより、最高の舞台に立つための顔を作りなさい」
エリサの圧倒的な財力とワガママな傲慢さに、ムツミとマキは、悲鳴をあげそうになるのを必死にこらえ、スタイリストとヘアメイクの人たちにメイク台へと連れていかれた。
そして、エリサが直接選んだ淡いシルバーのスリットドレスを身に纏ったルミナは、鏡の前に立つ。
その冷たい美しさは、トワイライトの華やかな衣装によって別世界の輝きを放ち始めた。
「あなたスッゴく美人だから着たものが生きているくらい完璧に輝いてるわね。服もどんな人が着てくれるのか着る人を選ぶものよ。私が直接コーディネートしたくなるなんて珍しいんだから感謝しなさいよ」
エリサは、ルミナの肩越しに鏡を覗き込み、満足そうに微笑んだ。
「これで、最高の舞台装置の準備完了よ」
リムジンに戻ったLUNA EDGEのメンバーは、ついさっきまで路地裏で焦っていた集団とは思えないほど、華麗な上流階級の姿へと変貌していた。
ルミナは、鏡の前でイヤリングを直しながら答える。
「こんな服着たの生まれて初めてよ…」
ムツミとマキも、
華やかなドレスに身を包み、上流階級の女性そのもの。
タカとヨシマサはタキシード姿でぎこちなくネクタイを締める。
タカが首をひねると、ヨシマサが鼻で笑った。
「オレ、ネクタイ逆じゃね?」
「んなこと、オレが知ってるわけねーだろ」
アサヒが深呼吸しながら、メンバーを見渡す。
「準備はいいな? 命懸けの潜入だ。ここから先は、失敗ひとつで全て終わりだ…。連中は招かれざる客には容赦しねぇはずだ」
そんなやりとりの裏で、ルミナの瞳だけは静かに冷えていた。
LUNA EDGEを乗せたリムジンは、トワイライトの中心にそびえる、オーロラ・ツインタワーのエントランスへと静かに滑り込み到着した。
トワイライト・メトロポリスの中心には、頂点にそびえるヴェスパー・セントラルタワー。
西側にはランドマーク・レジデンスタワー。
そして、東の空を切り裂くように聳える、対をなすもう一つの巨塔。
──オーロラ・ツインタワー。
雲を突き抜けるように聳えるその姿に、
誰もが一瞬、息を呑んだ。
「……あれが、スカイ・カジノ……」
マキがつぶやく。
ライトアップされたガラスの外壁が、
夜空を鏡のように反射して輝いている。
その奥で、ネオンの光が静かに蠢く。
まるで光そのものが罠のように。
エリサの強力なコネクションにより、彼らはVIPルートから直通エレベーターへと案内される。
入口の前でエリサがルミナたちを振り返った。
「ここから先は、本物だけが通される世界よ。さあ、最高に退屈な夜を、最高に面白いゲームに変えてあげましょう」
エリサはサングラスの奥でフッとイタズラっぽく笑うとエレベーターのボタンを押した。
ルミナは横目でエリサを見つめ、わずかに微笑んだ。
全員を乗せたエレベーターは、トワイライトの夜景を猛スピードで遠ざけ、雲を越えて、天空へと上昇していく。
そして、119階。
エレベーターの扉が、静かに開いた。
彼らが降り立つ先には、黄金の紋章が刻まれた巨大な扉。
きらめく夜景と夜空が同化したガラスの壁越しに、トワイライト・メトロポリスの光が果てしなく広がる。
そして選ばれし者だけが招かれる、天空の光の宮殿の入り口が、今、彼らを待ち受ける。
運命の夜が、ゆっくりと幕を開けようとしていた。
《AURORA TOWERS — SKY CASINO AREA B9》
オーロラ・ツインタワー最上階、119階《Sky Casino:Area B9》。
次回
《PROJECT∞HEART-X 第34話》
( ── LUNAEDGE編 第10話:氷華の美女― 悪魔のデスゲーム》
─── 作者のクリエイターズ・ノート ───
資金も衣装もなく、カジノ潜入を前に完全に詰んでしまったLUNA EDGE。
そんなアサヒたちの前に現れたのは、まさかの超巨大財閥ヴェスパーグループのワガママ令嬢・エリサでした!
ルミナとエリサ、気が強すぎるツンデレの二人が、まさかの「イヨナへの悪口」で大意投合してガシッと手を組むシーンは、急に思い立った事で、自分で書いてて思わず笑ってしまいました(笑)
しかし、エリサの口から語られたイヨナの正体は、巨大マフィア組織「ノクターナ・コネクション」のボス秘書という、想像を絶するヤバすぎるもので……。
エリサの圧倒的な財力によって、最高級の紳士淑女へと完璧に変装を遂げたLUNA EDGEの7人。
ついにエレベーターは、天空の要塞『スカイ・カジノ』の119階へと到達します。
次回、氷華の美女、イヨナが初登場となります!
お楽しみに!




