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PROJECT♾️HEART-X─AIでも人間でもない…その涙に宿る心と絆─  作者: 陽月勝也
【第一章: (表)☀️リア・ライラ─ 太陽に踊る波音】 ─太陽と月が交わる時─リア編
12/13

☀️《第11話 月の真実の胎動》

「ルミナっ!!」


リアは叫び、血の海に倒れるルミナのもとへ駆け寄った。

震える手で彼女を抱きかかえ、何度もその名を呼ぶ。


「ルミナ? ルミナ?…ねぇ、目を覚まして…!」


他の5人もルミナを囲んだ。

温かいはずの体温が、リアの手の中で冷たく感じられる。

今すぐ救急車を呼ばなきゃ、でも、ここは危険すぎる。


「くそっ、ルミナがひどい怪我だぜ……」


ユーキが悔しそうに歯を食いしばる。

ヨシマサも無言でルミナの腕を支え、血に染まった姿を見つめていた。


その時、倉庫の奥から轟音が響いた。

何かが猛スピードで走って向かってくる。

黒塗りのベンツ五台がタイヤを軋ませて急停車した。

ドアが一斉に開き、黒服の男たちが降り立った。

その鋭い視線に、一瞬で空気が凍りつく。

最後に車を降りたのは、白髪混じりのオールバック、鋭い眼光を宿した男だった。

その佇まいは、まるで獲物を狩り尽くした後の鷹のようだ。


「まだ増援が…!」


ムツミが不安そうな顔をする。


「黒塗りのベンツ!?また敵か!くそっ!もうどうにでもなれってんだ。やってやるぜー」


ユーキが叫び、身構える。

リアも反射的に息を呑み、心臓が大きく脈打った。


だが…。


ダンディなその姿は、先ほどの兵士たちとは明らかに違っていた。

その立ち姿は兵士というよりも、すべてを裁く審判の風格を持っていた。


挿絵(By みてみん)


「……くそ、間に合わなかったか」


低く、しかし落ち着いた声が闇を裂いた。


「お前ら、誰だ!?」


アサヒが唸り、前に出る。


「オレは三村だ。詳しい話は後だ。命が優先だ」


その言葉に、一瞬だけ空気が緩んだ。

そして低い声で次々と指示が飛ぶ。


「おい! 倉庫全体を調べろ! 奴らの痕跡を全て洗い出せ!」


その声に部下たちが音もなく動き出す。

胸元にちらりと見えたリアの視線が、彼のバッジに吸い寄せられた。

そこには、聞いたことのある紋章があった。


「ヴェスパー……?」


リアは息を呑んだ。


(ヴェスパーグループ…? あの有名なヴェスパーがなぜ?)


この男は敵なのか、それとも……。疑念が胸を締めつける。

だが、不思議だった。

この男からは、先ほどまでの無表情な兵士やマーダーたちのような、冷たい殺気が一切感じられない。


(この人たち、敵じゃない、たぶん…)


直感だけがそう告げていた。

三村は彼女たちを一瞥し、すぐにルミナへと視線を移した。


「なっ!酷い怪我だ…止血を急げ!

ゲイル! 輸送ルートを確保しろ。トニー!お前は救助隊ヘリを要請し、ただちにここへ呼ぶんだ」


三村の部下らしき男たちが、手際よく輸送ルートと救助ヘリを手配する。


わずか数分後、ヘリコプターのプロペラ音が夜空を切り裂いて響き渡った。


部下が担架を取り出し、手際よくルミナを乗せていく。

その動きは軍人のように無駄がない。

黒服の一人が、倒れ伏す兵士たちを見て目を見張った。


「……何人だ? 数十……いや、100を超えてる…」


「まさかお前たちだけで、どうやってこの人数を倒したんだ?どんな武器を使った?」


「武器なんか使ってないわ。ルミナが素手でたった一人で倒したの」


ムツミが答える。

その言葉に、別の男の表情が一瞬だけ凍りついた。


「おいおい、おそらくこれは戦闘兵士だ。闘いにのみ特化されていると言われている戦闘兵だぞ。それを素手でこの人数を相手に、女の子がたった一人で…そんなはずないだろう」


ふと、リアが三村の方を見ると、誰かと電話をしている。


「一歩遅かった。奴らが立ち去った後だったようだ。何かわかったら、すぐに連絡をくれ。それより今は一人の少女が危険な状態だ。これからすぐに病院に向かう。いいか、お前は無理するなよ」


電話を切った三村は、倒れている兵士をじっと見た後、静かに、しかし冷徹な声で言った。


「……武器の痕跡はない。

素手だけで仕留めたか…百人以上を相手に、なんて子だ」


三村の部下らしき男は三村が言った言葉のとおり驚きを隠せない。


三村は一人、現場を見て鋭い目つきをしている。


(この兵士……やはりあの極秘施設と繋がっているのは間違いない…)


「詳しい話は後だ。命が優先だ。だが…この怪我…出血…助からんかもしれん……急げ、一刻を争うぞ。この子はすぐに処置しなければ…」


そう短く告げると、リアたちに視線を戻した。


「君たちも一緒に来なさい」


リアは迷った。


(信じていいの……? でも……敵じゃない……直感がそう言ってる)


血に濡れたルミナの顔が浮かび、リアの答えは決まった。


「……お願いします!」


タンカに寝かされたルミナを乗せたヘリにリアも乗り、夜空へと飛び立つ。

彼女の言葉に応えるように、黒塗りのベンツのドアが開いた。

バイカー仲間の5人も車に乗り込み、夜の闇を切り裂いて疾走していった。


到着したのは、大通りから外れた目立たない建物だった。

古びた診療所の白い灯が、不気味な静けさの中で光っている。

三村の手配で、ルミナはその場に運び込まれた。


『ピー、ピー、ピー....

シュコー.......、シュコー......』


挿絵(By みてみん)


心電図の規則正しい電子音と人工呼吸器の音だけが重く静かに響きわたる。


呼吸器を付けられ、無数のチューブに繋がれてベッドに横たわるルミナ。

彼女はすぐにオペ室へと運ばれていった。

リアは廊下の椅子に座り、息を詰めて見守る。


「血圧が落ちてる! 普通ならとっくに死んでる…この怪我、この傷……」


医師の男性が、止血と縫合を急いでいる。

しかし、その手がふと止まった。


「……なんだ、これは……この体内に埋め込まれてるプレート、この傷……まるで、拒絶反応がない……それに再生スピードが普通じゃない…

流れてる血液は人間だが、傷が急速に治癒してる。心臓、内臓、細胞すべてが通常の人間より遥かに強くグレードアップしている。

チップが埋め込まれて一体化してあるのか…。神経組織は人間と何かと合わせ持ったハイブリッド形式だ…」


みんな静かに話しを聞いている。

誰も途中で話しを遮る者はいなかった。


傷口が、縫合の糸を追いかけるように、わずかにふさがっていく。

まるで体自身が縫い合わせを急いでいるかのようだった。

その時、医師が険しい顔で振り返った。


「しかし出血がひどすぎる。このままではもたない。

輸血が必要だ!」


数人の看護師が駆け寄り、手早く輸血用の血液パックを準備するが、次の瞬間、医師の顔がさらにこわばった。


「……なんだこの血液型は?…ダメだ。血液型が一致しない。この子は、通常の血液型に当てはまらない…!HLA?いや、少し違う…まれな血液型だ…」


その言葉に、リアの心臓が大きく跳ねた。


「そんな…」


「この血液は…今すぐは無理だ…どうすればいいんだ…」


医師が焦燥した声で呟き、青ざめる。


「……あの…」


リアが震えながら、一歩前に出た。


「私の…私の血なら…使えたりしませんか?…」


医師は怪訝な顔でリアを見るが、一刻の猶予もなかった。


「……しかし…いやこのままでは…とにかく血液検査を!」


すぐにリアの腕から少量の血液が採取された。

数分後、検査結果が出た。


「……まさか……そんなバカな…」


医師が信じられないといった表情でモニターを凝視する。

検査用のコンピューターが、MRIやCTを撮ったルミナのデータを映し出す。



「ルミナって子の血液と、この娘の血液…完全に一致する……!まさか……君はいったい…?」


その言葉に、リアもマキもムツミも息をのんだ。

三村は黙ってその光景を見つめている。


急遽、リアの腕に輸血用の針が刺された。

自分の血が、チューブを通ってルミナの体へと流れ込んでいく。


「そういえば、リアも人間じゃないって言われてたけど…それと何か関係あるの…」


マキが、かつてマーダーがリアに言った言葉を思い出し、不安げに呟いた。


何時間過ぎただろうか。

オペが終わり、医師が出てきた。

全員が医師のもとに駆け寄る。


「手術は終わった。後30分遅かったらもう助からなかっただろう。それと君がいたから助ける事ができた。感謝する。

それにしても君はいったい…?」


医師はリアの顔を見て言った。


「それより、今は麻酔も効いて眠っているがあの再生能力だ…おそらく数時間後には目を覚ますだろう。

ただ…あの青い髪の彼女は一体何者なんだ?

単刀直入に言うと、あの子はまるで人間ではない。

見た目はもちろん、骨格、細胞、神経、そこだけ見れば人間と全く同じ、そのものだ。

しかし、それ以外の再生スピード、回復力、プレート、チップ、普通の人間ではまずあり得ないことばかりなのだ」


マキが小さく呟く。


「人間じゃない……?」


「やめて!」


リアが遮るように叫んだ。彼女のプラチナブロンドの髪が激しく揺れる。


「ルミナは……ルミナは人間よ! そんなこと……」


その叫びは、リア自身の胸にも突き刺さった。


ルミナのあの強さ、あの動き…どれを取っても人間とは遠くかけ離れていることを、リアは肌で感じていた。

薄々感じていた疑問が、今、確信に変わろうとしていた。


そして胸の奥では、あの時の言葉がこだまする。


(……『お前は人間じゃない。』)


あのマーダーの声が、耳の奥に焼き付いて離れない。


その時、ムツミが口を開いた。


「人間じゃないって…じゃあルミナは何?…」


しばらく沈黙が続いた後、三村がゆっくりと話し始めた。


「おそらく、あの子は運動神経、動体視力、反射神経、瞬発力、そしてパワー、本来なら人間の普段眠っている潜在能力を最大限に引き出した状態でいられる…

もしくはその状態を自在に自身でコントロールできるんだろう。そしてそんな潜在能力を引き出した状態から更に数十倍の力やスピード、跳躍力などを発揮できるんだ。通常の人間を遥かに凌駕していて、人間の能力のリミッターを遥かに超えているんだ。内部にだけ関して言えば人間じゃないと言っても、あながち間違いではないかもしれん。身体の内部を少し改造されて強化されているという事だ。君たちがイメージしやすく言うならば人造人間、またはサイボーグと言えばわかりやすいか…」


一同は一瞬、時間が止まったかのように表情が固まった。

沈黙を破ったのはマキとムツミだった。


「え……ロボットってこと?……」


三村はゆっくりとそれに返答する。


「いや、身体が機械のロボットとは違う。レントゲンやMRIを撮ってもわかるように、あくまでも見た目、中身も人間とまったく同じで変わらない。

ただ、人間の状態から戦闘用に少しだけ改造され、超人の域にたっしているって事だ。とんでもないほどの天才的な技術かなにかで…」


三村は、まるで何かを知っているかのような口ぶりで説明した。


「そ、そんなことありえるんですか?…」


ユーキが不思議そうに聞き返す。


再び沈黙が起きた後、医師が静かに口を開いた。


「……昔、医療関係者の間で妙な噂を聞いたことがある」


医師はルミナと血液データを見つめたまま、低い声で続けた。



「今から約十数年前、ある少女が不治の病で幼くして亡くなった。現代医学では治せないと知ると、AIとして娘をもう一度生かそうと、娘の記憶、感情、人格のすべてをデータ化し、蘇らせるという狂気じみたとんでもない計画を立て、それを実行し、成功させたという話だ。

そして、そのAIに、亡くなる前の娘と寸分違わぬ人間の身体を与えたと…

真偽は定かじゃない、記録が残ってないからな。もしかしたらただの都市伝説かもしれない。だが、このルミナという少女を見ていると、とても作り話として片づける気にはなれない。

このルミナという子はAIではないだろう。検査したところ、普通の人間の女の子だ。しかし、そのAI技術の応用で、肉体を強化する改造で人間の限界を超えた身体を手にした超人…まさにサイボーグと呼ぶべき存在かもしれん。なぜ改造されたのかまではわからんが…

噂では、この世の常識を覆すその技術を完成させた天才研究者が、どこか人知れぬ場所に存在する秘密の極秘研究所にいるらしい。その界隈でマッドサイエンティストと呼ばれる超が付くほどの天才と言われるドクターが…。そしてそれ同等の頭脳と技術を持つと言われている、その天才の女性研究者、名前は…たしかセレナと言ったか…

ルミナは、その『成功例』の1つなのかもしれないな。」



医師はちらりと、扉の向こうに立つ黒服と三村が付けているヴェスパーの胸章を見て、言葉を切った。


そしてそのまましばらく沈黙が続いた。


その話を聞いた後、三村は静かに部屋を出て行った。

やがて彼は廊下の窓に歩み寄り、夜明け前の空を見上げる。

わずかに白み始めた雲を眺めながら、誰にも聞こえぬほどの声で呟いた。


「……エリサお嬢様」



────────────────────



リアはベッドの傍らに膝をつき、ルミナの手を握った。


「人間とか、人間じゃないとか、そんなこと私はどうだっていい。お願い……戻ってきて。ルミナがいないと、私……」


涙が止まらなかった。

その場に座り込んだまま、リアは泣き疲れていつのまにか眠りに堕ちた。

彼女のプラチナブロンドの髪がルミナの枕元に広がる。


医師がリアたちの元に戻ってきた。

ムツミが、部屋を出て行った三村を指差して尋ねた。


「あの…三村さんって、何者なんですか? ただ者じゃない感じがして…」


医師は白衣のポケットに手を入れ、静かに答えた。


「ん? 知り合いではないのか? 三村はな、元FBI捜査官の上官だ。相当な切れ者で、その筋では知らぬ者はいないほどの男だった。軍にも顔が効く物凄い男さ。現在はディープステートとも言われているが、真実はわからん…なんでも謎が多い男だからな。

今はヴェスパー家で、ご令嬢の執事を務めているのは知っているが」


その言葉に、ユーキは「マジかよ…」と驚き、マキとムツミも目を丸くした。

医師はそれ以上は語らず、ただ静かにルミナを見つめていた。




────────────────────



一方、どこかの地下室。

青白いライトに照らされた研究設備が並ぶ。


「……失敗ではない」


そこで男の声が響いていた。

電話を片手に、マーダーが薄笑いを浮かべている。


「むしろ予定通りだ。ルミナはあれではもう助からん。

死んだのだ。邪魔者はいなくなった。くっくっく」


低い声が電話越しに返る。

その声の主は誰なのか、姿は決して映らない。

ただ、不気味な威圧だけが漂っていた。


「実験は最終段階に入る」


マーダーの目が暗闇の奥でぎらついていた。



 ────────────────────


夜が明けかけた頃。

診療所の一室、静けさの中で…。


そして病院では…


「……ん……」


小さな声が響く。

ルミナのまぶたがわずかに震え、ゆっくりと開いていった。

まず視界に入ったのは、見慣れない白い天井だった。


(ここは……どこ?)


体が鉛のように重い。

わずかな記憶の残滓…轟音と強い衝撃が、頭の中で鋭くフラッシュバックする。


顔を横に向ける。

その視界の端に、誰かの手の温もりを感じた。

ベッドの傍ら。

折りたたみ式の簡素な椅子に座り、ルミナの手を両手で握りしめたまま、うたた寝しているリアの姿があった。


挿絵(By みてみん)


その顔には、乾いた涙の跡がいくつも残っている。無防備に眠るその表情は、ステージ上の強気な姿とはかけ離れた、まるで迷子の子供のようだった。

ルミナの胸の奥、普段は動くことのない静かな場所に、微かな熱が灯る。


(私を助けて……一晩中、ここで?)


ルミナは、自分が死の淵をさまよっていたことを思い出した。


そして、今、こうして目覚めることができたのは、隣にいるこの少女の純粋な想いの結果だと感じた。


ルミナは、震える左手をそっと持ち上げ、リアのプラチナブロンドの髪に触れた。

緑のメッシュがライトを浴びてわずかに光る。


「……リア……あなたが、助けてくれたのね…

バカねぇ…ムリしたんでしょ……

でも…ありがとう…リア…」


切なさと、感謝。

人間だった頃の記憶の奥底から蘇るような、複雑な感情がルミナの心を掠める。

静かに、優しく、その頭を撫でた。

その温もりにハッと気づき、リアが飛び起きた。

ぼやけた視界に、自分を見つめるルミナの瞳が映る。


「ルミナっ!」


リアは思考する間もなく、ベッドに身を乗り出した。

ルミナの身体が完全に回復していないことなど構わず、彼女の細い肩に顔をうずめ、強く抱きしめる。


「よかった、よかったよ……ルミナ!目を覚ましてくれて……!死んじゃうんじゃないかって……

ふぇ〜ん…( ; ; )」


声は嗚咽に混ざり、震えていた。

その瞬間、ルミナの心臓が、まるで初めて鼓動を打ったかのように強く脈打った。

ルミナは、反射的にその小さな背中に腕を回し、優しく抱きしめ返した。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。


ようやく目を覚ましたルミナ。


そして、その隣には彼女の帰りを信じ続けたリアの姿がありました。

止まっていた二人の時間が、今、再び動き始めます。

止まっていた運命が動き出す時、二人を待つ未来とは…。



次回、─太陽と月が交わる時─リア編はいよいよ最終話。

☀️《第12話 太陽の女神と月影の天使》


ぜひ最後まで見届けていただけたら嬉しいです。

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