12. 爺やの号泣
「ええ、まだマコトとの結婚について実家に報告してないわよ」
僕とスミスの疑問に対するミーナの回答が実にあっさりしたものだった。
僕も驚いたが、それ以上に驚いているのがスミスだった。
「お嬢様!貴女様の身分をお考えくださいませっ!そんな勝手なことが」
スミスの悲鳴のような叫びに対し、ミーナは冷静に応える。
「そうね、その通りよ。でも、だからこそ報告はしなかったの。許してもらえる訳がないしね」
スミスは真っ青だ。
おそらく僕も似たような顔色だっただろう。
てっきりグリックの代官着任願いの手紙を送った際に、結婚のことも報告していると思っていた。
いや、確かに確認はしなかったけど、普通は・・
・・すみません、正直に言います。
ミーナのご両親に挨拶に行くのが怖くて、わざと確認しませんでした。
やっぱり現実逃避は良くないね・・。
「でも大丈夫よ。マコトは私の目を治すほどのスキルを持つ男だから、この地ですぐに実績を上げることができるわ。そうしたらお父様とお母様に結婚を報告して、そのまま認めてもらいます」
そう自信満々に断言するミーナ。
妻にこれほど信頼されているのは凄く嬉しいが、期待値が高すぎないだろうか?
そう思ってスミスを見ると、彼は更なる驚きの表情を浮かべていた。
もっとも先程とは異なり、その顔色は悪くない。
「お嬢様、それは本当ですか?」
「ええ、本当よ。証明するから見てなさい」
ミーナはそういうと窓から見える木を指し、
「狙いは1番下の枝よ、ウィンドウカッター」
と唱える。
するとミーナの指先から衝撃波のようなものが飛び出し、見事に1番下の枝が宙を舞った。
見事なコントロールだった。
「どう、もう皆殺しのミーナはここにはいないわ」
この一言にスミスは号泣する。
「お、お嬢様、このスミス、き、今日ほど嬉しいことはございません」
ミーナは男泣きに泣くスミスの背中をさすりながら
「ありがとう、スミス。貴方にも本当に苦労をかけたわ。でももう大丈夫よ」
そう声をかけた。
なんとも心の温まる光景だった。
そしてようやく落ち着くと、
「マコト様、このスミス、深く御礼申し上げます。
そして今後は全力でお嬢様とマコト様にお仕えすることを誓います」
スミスはそう言って僕に頭を下げた。
こうして最初の頼もしい助っ人がグリック村に着任したのであった。




