頑張って働いたはずなのですが……?
↓↓sideセイ↓↓
少なくとも私は、ここまで酷い徒労を初めて体験したような気がします。
いや、いくら今までよろしくない生き方をしていても、誰だって徒労をしたことはあるでしょう。私も今までに何度も徒労をしてきました。
しかし、今回はそれよりも輪を掛けて無駄な努力でした。そもそも、知らない人に話し掛けるという行為が私にとってどれほど大変なことかを知っているでしょうか?
いわゆるコミュ障って奴です。私は知らない人話すのが凄く苦手です。事務的な、ギルドの受付嬢のような人ならまだマシ(王国の受付嬢は、違う意味で無理)何ですけど、フレンドリーな会話というのがどうも苦手です。
何故かと問われれば恐らく私の育ってきた環境やそもそもの性格やら、様々な要因が見えてくるとは思いますが、そんなことはどうでも良いのです。
もう、過去の話、蒸し返したところで出てくるのは苦い思い出だけです。
まあ、なので私は人と話すのが苦手なんですが、その苦手な私が任された仕事が「冒険者の人達に情報を聞いてくる」と言う何とも不適材不適所なことでした。
せめて幸運だったのが、兄と一緒だったことですが──全く、育ちは一緒のはずなのにどうしてこうも性格に違いがあるのか、疑問はつきません。
やっぱり男と女では違うんですかね、色々と。
そんなわけで、不適材不適所の適材適所といいますか、せめてもの悪あがきと言いますか、私はまだマシな方である、ギルド職員から情報を聞くことにしました。
その結果、いきなり建った建物などの情報は何一つ無しです。と言うか、緊急で最近起こったことがそもそも無いそうです。「こんな穏やかな日々も珍しいからねー」と、職員の一人は言ってましたが、こいつの平穏なんてどうでも良いので、さっさと情報が見つかれば良いのに、と思ったのは私の心の中にとどめておきましょう。
そもそも、私が人に話を聞くって言うインポッシブルなことをしているというのに、人を気遣うなんてそんな素晴らしい真似が出来るわけが無いことは自明でしょう。ほんとにこの職員、何を考えているんだか。
兄も全くそのような情報は貰えなかったらしく、まさに労力に見合った徒労だったと言えるでしょう。
そもそも、酒臭くてギルドの中は嫌いです。昼間から酒飲むなと言ってやりたいですよね。話すの苦手なので言いませんけど。
「何も無かったなー」
ギルドを出て少ししたところで、兄が私に話し掛けてきました。
「そうですね。冒険者達が情報を持っていないと言うことは、この可能性は薄そうですね」
「だとしたら辺境にいるはず、だっけ?こっから更に遠出か、流石にちょっと疲れたよな~」
「疲れたよな~って言えるような睡眠時間じゃ無いじゃ無いですか。ブリキさんみたいにとは言いませんが、せめてコウさんぐらいにはなって下さい」
あのコウさんでも時間に遅れてまで寝るようなことはしてませんからね。なんだかんだで真面目なんだろうな、と言う印象です。
「今更無理だろ。お前、俺はこの生活サイクルでこの十数年間生きてきたんだぞ?」
「誇れることじゃありませんからね?」
何故胸を張って堂々とそんなクソ人間みたいなことを言えるのか、甚だ疑問です。ほんとにこいつは私の兄ですか?
「残念だが、こんなのがお前の兄なんだよなぁ~」
「考えてることを見破らないで下さい。嫌われますよ」
まあ、もう嫌っているんですけど。と言うか何で兄は私だけは考えを読めるんですか。他の人だと成功率凄い低いのに、私のときは百パーセントですからね。
流石に身の危険を感じる成功率です。
さて、私達が探してた線は無くなりましたが、ブリキさんは良い情報を得られたでしょうか?
↓↓sideブリキ↓↓
今考えると、会話が苦手なセイに情報を聞きにいって貰うなんて言うのは些か合っていない気がする。
そう考えると、コウとセキでギルドに行かせた方が良かっただろうか。まあ、今の俺の状態を考えるとそれは須く徒労に終わっているのだろうが。
問題は買い物の方だ。コウに買い物を任せるだなんて、朝の俺はどうかしてた。やっぱり朝だから、考えが回らなかったんだなきっと。
判らないけど、そういうことにしておこう。
それより何より、コウが変な物を買っていたりしていないかかが不安だ。あいつはトラブル体質だから、目を離したらどうなるか判らない。そう考えると、何だか嫌な予感がしてくるが、本当に嫌なことって予感も何も無いときに来ている気がするから、多分違うのだろう。
ロリコン盗賊団の誘拐事件然り、いきなりのミリィ登場然り。
後者は人外ーズ(ハクとジント)がそれとなく「やばいのが来る」みたいなことを言っていた気がするが、図書館まで来ると思って無くて、気楽に考えていた。
しかし、どんなことにもイレギュラーはあるようで。例えば今俺の目の前に居る人とかな。
人?人じゃ無いな。黒とエメラルドグリーンのドレスを着飾り、同色の小物も装備している。理想のプロポーションをしていて、胸もデカい。こんな言い方はあれだが、まさにボンキュッボンという奴だろう。すらりと伸びた足はハイヒールを履き、更にその細さを強調している。
貴族然とした雰囲気、それに見たことのある、少し強気な目尻が特徴的な整った顔だ。
王国の図書館で、見たことのある顔だ。
そこまで言えば、もうおわかりだろうか。
「……うっそだろぉ?」
ミリィ・アズレンは図書館にいた。
苦手なことを必死にしても徒労となった赤青兄妹と、自分の趣味を兼ねた仕事を自分に割り振って目的の人物を見つけたブリキです。
良くこういうことありますよね。因みに大抵私は赤青兄妹側です。
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