出発の日の朝のはずなのですが…?
「ふぅ……」
さて、と。もう出発の日となった。空の様子はギリギリ晴れか曇りかの、太陽光がきついわけでも暗いわけでも無い。ぽかぽかとしたいい日だ。
出発の時間は朝の五時。俺の今日の起床時間は驚きの三時をマークしている。数日は残せないものの、せめて出発の日のお昼くらいピクニックみたいに美味しいものを食べさせてやろうと早めに起きたのだ。にしたってこの時間はまだ真っ暗だ。冴えない頭を少しでも冷まそうと洗面器の前で冷たい水で顔を洗って出た先程の息の音は誰に聞かれること無くこの部屋の中を少しだけ震わせて回った。
いくら美味しい物と言っても外で食べるのだ。持ち運びやすいものでは無ければならない。無難にサンドイッチとか?ああ、おにぎりとかも割とありかも。でもそれだとバランス悪いしな……おかずだけ容器に入れて持ってくのも後々が怖い。次の街に着くまで容器を洗えないのだから。
だとしたらやっぱりサンドイッチだな。サンドイッチ優秀。多分今まで何人もの人がピクニックに何を持って行くか考えただろうけど、もはやピクニックと言えばサンドイッチみたいな固定概念があるからな。
よし、サンドイッチを作ろう。
サンドイッチを作る、と言ってもそんなに時間のかかるものでは無い。所詮はパンとパンの間に肉やら野菜やら何やらをバランス良く、物によっては偏らせて挟んで容器の中にはいるサイズに切り分けるだけだ。正直20分も要らない。
今の時刻は三時七分。目覚めるのにかなり時間がかかった物だ。まあ三時だから当たり前か。時間も余っているのでいつもより少し手の込んだ朝ご飯にするとしよう。
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俺が一番作るのが好きな料理は味噌汁だ。キャンプの時の火の番のような、頭は空っぽでありながらも熱中しているようなふわふわした感覚がある。判ってくれる人はいるだろうか……?
そんなこんなしていると、三時四五分頃、セイが起きてきた。流石に眠そうで、ふらふらとしている。
「おはよう。早いな」
「貴方のほうが早いじゃ無いですか……。一番だと思ったんですけど、ブリキさんは何時に起きたんですか?」
「聞いて驚け。まさかの三時」
その一言で眠気が覚めたようだ。驚いたように目を見開き、俺に確認をしてくる。
「さ、三時って……!昨日私が見た一番遅い時間が十時だったから最速でもそれ以降ですよね。十一時に寝たとしても四時間しか寝てないじゃないですか!」
「十二時に寝たから三時間だな。流石に辛いけど、これからの移動時間にも寝られるからな。そん時に寝させてもらうよ」
強がっては見る物のやっぱりちょっと眠い。俺が思うに、眠気とは二種類ある。一つ目はお昼寝のような優しい眠気。二つ目はドロドロとした石油の海に落とされるような、どちらかというと意識のシャットアウトに近いような眠気。俺の今の状態は完璧に後者だ。目を閉じたら今にもこの重い体に更におもりが乗っかったように深く深く、眠ることだろう。
しかし今は我慢しなければならない。予定としては四時半にこの家を出発なので多分一五分くらいに二人はゾンビみたいに起きてくるんじゃ無いだろうか。あいつらは子供なのか何なのか判らないが、異様に睡眠時間が長い気がする。毎日十時には寝て(俺とセイは十時まではリビングでお互いのすることをする。それ以降は各々の部屋でやるべき事して終わったらしい寝てる)起きるのは八時とか(俺は朝ご飯の用意とかあるので毎日五時起き。理由はわからないがセイも五時半位に起きる)なのだ。単純計算で十時間。あいつら一応もう十六、七だよな……?
「ヴォ……ゥアファフ……おはよう」
「おはよう。何だよ挨拶の前のうなり声は」
テンション女王のコウもこの時間じゃ流石に大人しい。いつもこんぐらいおしとやかならいいのにな。
ゾンビみたいな声を上げ、全く開いていない目を少しでも覚まそうかと、冷たーいタオルを用意してやる。どの季節といえど、朝の水は冷たい。肌荒れだって結構するのだ。
そんな愚痴はおいといて、
布団の暖かさを体に内包しているコウの裏の首に、そーっと冷たいタオルを置いてやる。
「やむふつれありつふいさーーーーーッ!!」
「ハッハハ!目も覚めたろ!」
何言ってんのか判らないが、悲鳴を上げた。ヘヘっざまー見ろ。俺は三時起きなのにグースカ寝やがって。
時間はそろそろ二〇分を回ろうとしている。さて、セキはまだ起きないんだろうか。
「はぁ……」
俺は無意識に頭を抱え、ため息をついた。
ふとセイを見ると「あ、あいつ終わったな」みたいな顔でしれっと自分の部屋に戻ろうとしている。いや妹なら起こしてやれよ。
「いやですよ。クソ兄、全然起きませんもん。いくら重ねてつけても起きない目覚まし時計に何度周りの人たちが迷惑したことか……。クソ兄はグースカ眠りこけてるって言うのに。なんであんな大音量で起きないんですかね?」
二一分を回る分針を見ながら、兄妹は大変なんだな、なんてのんきなことを考えた。
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