車の中のはずなのですが…?
魔力というのは便利な物で、いくら燃料として使っても切れる兆しが無い。魔力の所持量が大きい人はそれだけで魔力タンクとして、操縦さえ出来れば魔力車の運転手と言う仕事が出来る。
その魔力車というのもなかなか便利な物で、案外と乗り心地が良い。俺は今回初めて乗ったが、外の景色が次々と変わっていくのを見るのは結構面白かった。何というか、爽やかな気持ちになる。
しかし、車と名が付くからには切って離せない現象がある。
そう、車酔いだ。
俺は平気だったが大寝坊野郎は寝起きにいきなりの乗車からの結構なスピードでの運転にダウン。今は青い顔して寝っ転がってる。ざまぁ見ろ、グーグーとギリギリまで寝やがって。
とは言え俺だって寝っ転がりたい。正直もう眠気の限界だ。
しかし、車の中で男が二人寝たらどうなるか。コウとセイの場所が無くなってしまうのだ。
だから俺は今も眠気に耐え、おもりでもくっついてるのでは無いかと言うほどの瞼を必死に上に上げながら、外を見ているのだ──。
「一個言っていいか?」
何故寝ないのか、と質問したコウは俺の返答を聞き、こう言った。
「お前は俺が、ミスター寝坊はセイが膝枕でもすればいいんじゃね?」
「あそれ良いアイデアんじゃあおやす──「嫌です」
セイはいつもより数段冷めた目で返答してきた。
おいおい、お前が反対したらし俺が眠れないだろうが。お前、俺が何時に起きたか判ってるだろうに。
「そう言わずに寝か──「んじゃあ俺が寝坊の化身の膝枕しようか?」
「いやぁ対象の問題じゃ無いだろ。俺でもセキでも大差な──「いや、ブリキさんなら良いですよ。ほら、ここに頭をどうぞ」
兄妹ってどこもこんな感じなのかね?それにしたって今日俺の発言が遮られる回数が凄く多い気がする。新手のいじめだろうか。
そんなことはどうでも良く、とにかく寝られることが重要だ。セイの膝枕の許可は出た。俺は倒れるように反対の窓側にいるセイの太股に頭を載せた。
「~~っ!!」
声にならない声を上げたセイを、取り敢えず今は置いといて。
俺は深い深い眠りの海に体を預けた。
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まったくこのひとは。倒れそうになりながらもなんだかんだでゆっくりと体を倒していたが、よく考えて欲しい。
太股は人によっては性感帯になり得るほど敏感なところだ。そんなところを髪の毛なんて細くてほどほどに硬い物で、ゆっくりとなでるように下ろされたらどうなるか。
全く、これをおそらく素で、相手のことを考えてやっているからたちが悪い。
これでは何も文句が言えないじゃないか。
くすぐったいと言うべきか、その、少し感じてしまうと言うべきか……。
多分くすぐったいと言わないとブリキさんは罪悪感を感じてしまうんだろうな。
「そういえば、なんでブリキに膝枕するのはおーけーにしたん?」
考え事が終わったのを察したのか、コウさんが私に話しかけてきた。
「ブリキさんは悪い人じゃ無いって判っていますから。それに、兄に膝枕なんて倫理的によろしくないですし。何より私がバカ兄の枕役なんてしたくないですから」
「なぁんだ、消去法か。ラブとかそうゆーのだったらおもしろかったのに」
恋、恋か。それは考えたことが無かった。
「私が恋してるようの見えますか?」
「んー分かんないから聞いてみた感じ?でもほらさ。朝とか
ブリキにあわせて毎日すっげぇ早く起きてるじゃん?あれはどーなの」
「あわせてるって言うか、私達のために早起きしてるのに一人も一緒にいてくれる人がいないってなんだか可哀想じゃ無いですか」
思ったことをそのまま口にした。したつもりだ。しかし直後にコウさんはこう言った。
「んーびっくりするかも知れないけどそれって多分、ブリキと一緒にいたいんだと思うよ?」
ニヤニヤと、まるで子が恋愛事情を赤裸々に語るのを見ている親のような顔をして爆弾を投げ込んできた。
そしてコウさんは続ける。
「俺の友達の言葉の引用なんだけどさ、人は自分がしたいことをするために何でもするんだって」
はぁ、何を言っているのだろうかこの人は。やりたいことが出来なく悶々としている人は腐るほどいるだろうに。そんな人がたくさんいるって言うのにその理論は全く合わない気がした。
それをコウさんは汲み取ったのか、
「まー納得いかないだろうな。俺も最初全然分かんなかった。大丈夫大丈夫。難しい話は俺もわかんねーけど、これだけは理解できるように何度も聞いたから」
と、先程とはまた違った優しい笑顔をこちらに向けた。
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