サイアリアの元騎士。
もうすでにゲルバナティスの兵は関門を突破し村へ侵入していた。ヒティアは走っていく兵に声をかけ状況を聞く。ヒティアは焦ってはいるが、どちらかと言うと冷静な方だ。村人は避難経路から走って逃げているが、大きな村なだけあって村人は千人近くいるように思える。
「どうやら相手の勢力は200弱ってとこ。今からアタシは前線で戦闘になるからトトは避難経路から逃げて。」
「おいおい、でもーーーーーーーー。」
言葉が詰まる。たしかに俺は無力だ。ただ剣を振り回すことしか出来ない。こんな所で死ぬわけにもいかない。だから逃げるのが正解なんだ。
「ヒティア。無事に帰ってきてくれ…」
俺にはそれしか言うことが出来なかった。ヒティアは当たり前でしょ、元騎士を舐めないでよね!!と笑を浮かべて走って行った。
避難経路はどうやら少し遠くに見える街、サイラルへ繋がっているようだ。このサイアリアがここまで大きい村、そして街へと発展しかけているのはサイラルの援助あっての事だそうだ。裏の門から馬車が次々と出ていく。一つの馬車に8人程しか乗れないが、馬車は数え切れないほどある。ヒティアは強い。心配は無用。自分に言い聞かせ、俺の乗った馬車はサイラルへと向かう。
サイラルへはゲルバナティスの兵と会わずに難なく着くことが出来た。なんでもこの道はサイラルとサイアリアの共有地で、いくらゲルバナティスと言えどサイラルの兵力には恐れているようだ。サイラルからサイアリアへは兵も出ているが、すれ違った兵は50程度。サイラルは他の地へも兵を送っているため兵力が不足しているらしい。
数ではゲルバナティスの2倍はいるが、それでどうにかできる相手なのか。考えれば考えるほど心配になる。お金はヒティアが家で結構な大金を渡してくれたから宿や食料に心配することはなさそうだ。時刻はもう13時を過ぎたところか、今にも雨が降り出しそうな空を見上げ、ヒティアの事を考える。時々聞こえてくる爆発音が胸を締め付ける。
この時はまだ、俺は何も知らなかった。本当に、何も。




